2019 Fiscal Year Annual Research Report
保護基を用いない高原子効率のマイクロフローペプチド鎖伸長法の開発
Project/Area Number |
17H03053
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
布施 新一郎 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特定教授 (00505844)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | マイクロフロー / アミド化 / ペプチド / 無保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、無保護のアミノ酸を連結してペプチドを合成するため、通常のC末端側からN末端側へペプチド鎖を伸長する手法と異なり、N末端側からC末端側へペプチド鎖を伸長する手法を採用している。この方法では、通常の手法と比べて副反応の抑制が困難であることが既に知られているが、2018年度までの研究で、ジペプチドの合成であれば、副反応のエピメリ化をほぼ完全に抑制できることを見出していた。 2019年度はさらに難度の高いトリペプチドの合成に焦点を当てて、研究を推進した結果、収率85%で、なおかつ、副反応を0.5%以下に抑えつつトリペプチドを合成することに成功した。なお、開発した反応条件は当初の予想以上に副反応の抑制に効果があり、アミノ酸の中で最もラセミ化しやすいとされているフェニルグリシン(アラニンの60倍ラセミ化しやすいことが知られている)やシステイン(側鎖硫黄原子の存在によりタンパク質構成アミノ酸の中では最もラセミ化を起こしやすいアミノ酸の一つとされる)を含むペプチドの合成においてさえ、副反応を1%未満に抑えつつ合成できることを明らかにした。さらに、ジペプチドに対して、C末端側、N末端側双方が遊離の状態のジペプチドを反応させてテトラペプチドを得ることにも成功した。 これらの結果は、いずれも本研究でコア技術としている微小流路を反応場とするマイクロフロー合成法の賜であり、二相系の反応液を高速混合することにより実現した結果である。したがって、開発した反応条件を通常のフラスコを用いて実施すると反応成績が低下することを確かめている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の目標としていたトリペプチド合成におけるかつエピメリ化の抑制と高収率の実現を双方達成でき、テトラペプチドの合成も達成できたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
基質の組み合わせによって反応成績がかなり変わることがこれまでの検討で判明した。ペプチドやアミノ酸の組み合わせは膨大であり、これらの基質を変える毎に合成条件の最適化を行う場合、多大な労力と時間を要することになる。この手法をさらに実用的なものとするには、今後基質の組み合わせによってどのような反応条件を設定すれば、最も高い成績が得られるかを事前予測できるようにすることが重要であるとの考えに至った。そこで、最終年度には、これを実現するための第一歩として、基質の組み合わせをまずは固定して、様々な条件下における最低100以上の反応成績を収集し、得られたデータを機械学習により解析し、今後の事前予測を実現するための足がかりとする。具体的にはどのような学習モデルを選択し、どのようなパラメーターを設定することで、高い予測精度が得られるかについて検証する。
|
Research Products
(5 results)