2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Chiral Supramolecular Catalysts in Multiselective Reactions
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17H03054
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
波多野 学 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20362270)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 不斉触媒反応 / キラル超分子 / 酸塩基複合触媒 / 自己組織化 / 分子包接効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
数万の分子量を誇る酵素の多彩な立体かつ基質特異的な機能を分子触媒レベルで発現するには、従来の画一的な単一分子触媒の限界を乗り越える必要がある。本研究では適切な酸点と塩基点を配置した複数の小分子を予め分子設計し、酸・塩基の動的な親和的相互作用を駆動源とするキラル超分子触媒をin situで創製する。酵素の鍵穴と触媒活性点にあたるキラルキャビティーを自在に作り出し、従来の単一分子触媒には不向きな分子包接効果を発現させる。反応効率を極限まで高めつつ、合成困難を可能にするテーラーメイド型のキラル超分子触媒の創製とそれらを用いた高次選択的触媒反応の開発を目指した。特に、シンプルな小分子素子から成るキラル超分子触媒をシステマティックに開発中である。基質選択性や位置および立体選択性を発現するテーラーメイド型超分子触媒による高次選択的触媒反応を開発している。具体的には、(1)ブレンステッド酸・ブレンステッド塩基複合触媒、(2)ブレンステッド酸・ルイス酸複合触媒、(3)ブレンステッド酸・ブレンステッド酸複合触媒、(4)ルイス酸・ルイス酸複合触媒、の4種類にタイプ分けして進めた。これらのうち、H30年度は(2)ブレンステッド酸・ルイス酸複合触媒の開発、(3)ブレンステッド酸・ブレンステッド酸複合触媒、(4)ルイス酸・ルイス酸複合触媒、を重点的に開発した。詳細は、「現在までの進捗状況」欄を参照。項目(2)では、キラルリン酸を用いる反応開発を行ない、光学活性環状ホモアリルアルコールを得るための重要反応であるカルボニル・エン反応を開発した。項目(3)では、キラルビスリン酸を用いるアザ-Friedel-Crafts反応を開発した。項目(4)は、従来の触媒づくり基にした非常に嵩高いキラルキャビティーが構築できる触媒システムであり、今までにないマルチ選択的なDiels-Alder反応へ展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
年度当初に計画した3項目について、下記の通り、概ね計画通り研究を実施できた。 ・ブレンステッド酸・ルイス酸複合触媒の開発: リン酸触媒にルイス酸を作用させれば、H+酸周辺に嵩高い立体効果を与えるとともに共役構造を介してH+酸を活性化できる。本年度は、エン環化反応に適する触媒を探索した。一つは、直接活性化型の超分子リン酸触媒を開発した。もう一方で、3,3’位に配位性のルイス塩基点にルイス酸を配位させた遠隔活性化型の超分子リン酸触媒も開発した。検討の結果、同反応には、前者のタイプが非常に適していることがわかった。置換基効果をもたない環化しづらい基質でも反応促進効果が得られ、高いエナンチオ選択性が発現した。 ・ブレンステッド酸・ブレンステッド酸複合触媒の開発: ビスリン酸触媒を創製した。分子内のブレンステッド酸・ブレンステッド酸複合触媒として機能して、酸性度の増強に基づいて大幅な触媒活性の向上が期待できる。本触媒は、含窒素複素環化合物として重要なインドール及びピロールのアザFC反応に適用した。高エナンチオ選択的な反応開発に成功したとともに、従来の反応システムに見られない生成物の絶対立体配置の逆転現象が観測された。引き続き、触媒構造と反応機構の解明が急務である。 ・ルイス酸・ルイス酸複合触媒の開発: 塩基部位を有するキラルホウ素Lewis酸に嵩高いアキラルホウ素Lewis酸を組み合わせる触媒設計を行う。B(C6F5)3はそのホウ素原子(酸)とキラルホウ素Lewis酸本体の酸素原子(塩基)と間の動的な配位結合で保たれており、キラルな空洞に配座柔軟性を与える。同時に、B(C6F5)3の電子求引性に基づいて、共役結合を介して中心酸部位の触媒活性を増大させる。プロパルギルアルデヒドを扱うと、より複雑な三次元的な立体構造の識別が必要となる。本研究ではマルチ選択的DA反応を開発に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度及びH30年度に引き続き、シンプルな小分子素子から成るキラル超分子触媒をシステマティックに開発する。単一分子触媒では実現が困難な分子包接効果を最大限に活用し、基質選択性や位置および立体選択性を発現するテーラーメイド型超分子触媒による高次選択的触媒反応を開発する。2019年度は最も成果の著しい2項目、すなわち、「ブレンステッド酸・ルイス酸複合触媒の開発」と「ルイス酸・ルイス酸複合触媒の開発」を中心に研究を引き続き遂行する予定である。これらの触媒は、複数の基質をある程度識別できる段階に入っており、それに基づいて反応を識別できる段階に突入している。つまり、複数の基質と複数の触媒存在下で、望む反応を同時並行的かつマルチ選択的に制御することを目指す。これは、まさに酵素が特異とする反応システムであり、本研究のシステマティックな触媒反応制御によって、フラスコ内で人工酵素触媒システムの創成を目指す。一方、「ブレンステッド酸・ブレンステッド酸複合触媒の開発」についても、3つ目に相当するアザFiredel-Crafts反応を開発中であり、最終年度も継続して取り組む。現在佳境を迎えつつあり、触媒構造と反応機構の解明に全力を上げている。
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Research Products
(20 results)