2018 Fiscal Year Annual Research Report
Artificial Enzymes base on Metalated Peptides
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17H03056
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高谷 光 京都大学, 化学研究所, 准教授 (50304035)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 人工酵素 / リグニン / リグニン認識ペプチド / 木質バイオマス / 鉄触媒 / 酸化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,金属錯体が結合したメタル化アミノ酸・ペプチドを用いて,単一の錯体では実現不可能な触媒機能,分子認識能,物質輸送能を有する人工酵素の創出を目的とした研究を行っている。 平成30年度では,木質バイオマスの中で未活用な化学資源である,リグニンの循環資源化のために必須となる,木質夾雑系からリグニン選択的な精密酸化分解を可能とする高次機能触媒の開発を目的として,以下の2点に注力した研究を行った。1)温和な室温,中性条件下でリグニン分解を行える鉄触媒および有機分子触媒の開発,2)木質夾雑系(セルロース,ヘミセルロース,リグニンの混合物)からリグニン選択的な結合能を有する短いペプチドの開発。 その結果,H29年度に見出したスルホニルアミド配位子を有する鉄錯体触媒を用いると,環境調和型溶媒である酢酸エチル中で,過酸化水素を酸化剤として,ソーダリグニン,磨砕抽出リグニン,木粉の高効率酸化分解が進行して,数時間~24時間でほぼ定量的な酸化分解反応が進行して,対応するリグニンオリゴマーおよびバニリン等の芳香族化合物が得られること。また,我々が以前の研究で見いだしたリグニン認識能を有する12残基ペプチド(Sci. Rep. 2016, 8, 21833)を参考に,見出した5残基配列の短いペプチドがソーダリグニンや磨砕抽出リグニンに対して高い結合能(10^-4 M)を示すこと。これらペプチドの認識能が,pHや溶媒環境によって変化し,それがリグニン-ペプチド間の水素結合やπスタッキングに由来することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リグニン精密酸化分解のための人工酵素の開発を目的として,現在までに下記の研究成果を達成した。1)リグニン酸化に高い活性を示す,Ru-結合型アミノ酸・ペプチドの開発,2)リグニン酸化に高い活性を見出す,鉄触媒の開発,3)高いリグニン認識能を示すオリゴペプチドの開発。特に,H30年度に見出した,スルホニルアミド配位子を有する鉄錯体触媒を用いると,各種リグニンだけでなく,木粉からの直接リグニン分解が可能であり,反応溶液からはリグニン分解物であるオリゴリグニン,バニリン等が得られること,反応後沈殿物(残渣)からは簡単な濾過・洗浄だけでアセチルセルロースが得られること(アセチル源は反応溶媒である酢酸エチル)。また,高いリグニン認識能(10^-4 M)を示す5残基のオリゴペプチドを見出した。これらペプチドのリグニン認識機構を解明するために,蛍光異方性,SPR法,ITC法等を用いた結合能の定量評価を行ったとろ,リグニン認識能が酸性,アルカリ性,中性等のpH条件で大きく異なり,これが水素結合これらペプチドの認識能が,pHや溶媒環境によって変化することから,ペプチド中の水素結合性残基とリグニン中のヒドロキシ基との分子間結合が認識能に大きく寄与していることを明らかにした。 以上より,H30年度では,当初目的としていたリグニン分解能を有する触媒およびリグニン認識能を示すペプチドの開発に成功し,研究は概ね計画通りに順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度までに研究成果を受けて,令和元年度には,木質夾雑系からリグニンを選択的に認識して分解を行う人工酵素の実現を目指して,1)~3)の研究を行う。1)平成30年度に発見したリグニン結合型オリゴペプチドについて,リグニン認識能の定量評価をさらに推し進める。特に,木粉の直接変換反応では,セルロース等の夾雑物の混在下でのリグニン選択性が重要な鍵となるため,木質夾雑系(セルロース,ヘミセルロース,リグニン)でのリグニン認識について分子科学的な機序を明らかにする。2)H29およびH30年度に開発した,リグニンの酸化分解に対して高い活性を示す鉄触媒を用いた酸化反応について,上記1)の研究において,もっとも高いリグニン認識能を示す条件下でのリグニン酸化活性について詳細検討を行う。特に,有用物質であるバニリンの選択的産出条件を探索するとともに,酸化剤の種類を含む種々の反応条件検討を行い,バニリン以外の有用物質を生産する条件についても探索する。3)リグニン認識ペプチドとリグニン分解触媒を結合した「リグニン分解人工酵素」を合成し,木粉等の木質夾雑系からの選択的なリグニン分解について検討を行う。申請者らは,これまでにRuおよびPd結合型ノルバリンジペプチド超分子集合体が水中で作用する高効率な触媒として作用し,リグニンの部 分構造分子への高い酸化活性を示すことを報告している(CAJ 2016, CL. 2012)。そこで,これらのメタル化アミノ酸触媒とリグニン認識ペプチドを結合した触媒についても合成を行い,リグニン分解反応について詳細検討を行う
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Research Products
(31 results)
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[Presentation] Oxidative Degradation of Lignin and Its Related Compounds Catalyzed by Metalated Amino Acids Bearing ONO-PincerRuthenium Complexes2018
Author(s)
Takafumi Shanoh, Ryota Yoshida, Tomoya Yokoi, Katsuhiro Isozaki, Hiroshi Nishimura,Satoshi Oshiro, Keiko Kondo, Takashi Watanabe, Masato Katahira, Hikaru Takaya, Masaharu Nakamura
Organizer
The 43rd International Conference on Coordination Chemistry
Int'l Joint Research
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