2017 Fiscal Year Annual Research Report
新しい戦略を組み込んだ精密重合系の創出:次世代機能性材料の創成へ向けた新手法
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17H03068
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青島 貞人 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50183728)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リビングカチオン重合 / 立体特異性重合 / 光開始カチオン重合 / タンデム型重合 / シークエンス制御 / グラフトポリ乳酸 / シリカナノ粒子の配列制御 / 環状アセタール開始剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度計画した項目ごとに実績の概要をまとめる。 (1) 新しい重合開始剤系・タンデム重合系の検討 (i)カチオン重合ではこれまで高度な立体制御が達成されていないので、対アニオンが活性末端のモノマーと相互作用しやすい重合系を設計し、N-ビニルカルバゾールのカチオン重合を検討した。4級アンモニウム塩とトリフルオロメタンスルホン酸からなる開始剤と塩化亜鉛を組み合わせ、さらに添加塩でルイス酸の状態を制御することにより、リビング重合でかつ高立体特異性重合が可能になった。その結果、カチオン重合で過去最高の立体規則性を有するポリマーが得られた。(ii)制御型光開始カチオン重合として、開始剤にジフェニルヨードニウムイオンを用い、イソプロピルビニルエーテルの重合を行い、制御重合の進行を確認した。特に、この系の最適条件や反応機構を詳細に検討した。(iii)カチオン重合と有機反応とのタンデム型重合を開発した。生長末端でのみ選択的にDiels-Alder反応が起こる系として、フルフラールとビニルエーテルとの交互共重合を検討した。その結果、生長末端でのみ逆要請型Diels-Alder反応が起こり、新しいシークエンス配列のポリマーが選択的に得られた。また、異なる反応形態のため合成が困難であったビニルエーテルと環状エステルとの共重合によるグラフトコポリマーの合成も検討した。 (2) 高度にシークエンス制御された刺激応答性ポリマーや無機材料の創成 (i)環状アセタールの選択的開環反応を開始反応に用いたリビングカチオン重合により、水酸基を設計通りの位置に導入した。さらにそのプレポリマーを用い、セグメント間隔や側鎖長が制御されたグラフトポリ乳酸を合成した。(ii)種々の構造・組成のビニルエーテルポリマーをテンプレートに用いてシリカナノ粒子のリング状配列を検討した。また、他の金属ナノ粒子への展開にも挑戦した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度計画していた項目全てに関して、順調に進行した。 さらに、当初の計画以上に進展した項目としては、以下の3点が挙げられる。 ・カチオン重合で過去最高の立体規則性を有するポリマーが、N-ビニルカルバゾールのカチオン重合により得られた。オリジナルな開始剤と塩化亜鉛を組み合わせた点と、添加塩でルイス酸の状態を制御した点が、立体規則性を向上させた大きな要因となった。ACS Macro Lett.に掲載された。 ・カチオン重合と有機反応とのタンデム型重合として、逆要請型Diels-Alder反応系を選択し、生長末端でのみこの反応が進行する条件を見いだした。その結果、従来無かった新しいシークエンス配列のポリマーが選択的に得られた。JACSに掲載された。 ・ビニルエーテルポリマーをテンプレートに用いることにより、従来のシリカナノ微粒子の配列に加え、金ナノ微粒子の配列制御の可能性が見いだされた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 新しい重合開始剤系・タンデム重合系の検討 (i)H29年度に見いだした高度な立体制御と構造・分子量制御が可能なN-ビニルカルバゾールの重合系の知見に基づき、30年度は、ステレオブロックコポリマーの合成、立体規則性ポリマーの物性検討、他のモノマーへの展開などを行う。また、立体規則性ポリマー合成を目指す他の検討として、様々なフェノキシイミン配位子を用いた開始剤系によるカチオン重合も検討する。(ii)新しい設計として、メタルフリーの開始剤によるリビングカチオン重合系を設計する。具体的には、開始剤にジフェニルヨードニウムイオンを用い、ビニルエーテルの制御重合の可能性を検討する。(iii)カチオン重合とラジカル重合のタンデム型重合系を、Ru系触媒を用いて、まずはビニルエーテルのカチオン制御重合の可能性、そしてさらにアクリレート若しくはメタクリレート系モノマーとビニルエーテルとのタンデム重合系を検討する。また、制御重合が困難であったトリメチルシリルビニルエーテルや副反応が多いため高分子の合成が困難なフェニルビニルエーテルの制御カチオン重合も検討する。一方、従来合成が困難であったビニルエーテルと環状モノマーの共重合も引き続き検討する。 (2) 高度にシークエンス制御された刺激応答性ポリマーや無機材料の創成 (i)新しい刺激応答性ポリマーとして、UCST型温度応答するイオン液体側鎖のポリマーと疎水性ビニルエーテルポリマーの高分子量ブロックコポリマーを合成する。重合における副反応抑制方法、得られるブロックコポリマーの低濃度での温度応答物理ゲル化を詳細に検討する。また、フタルアルデヒドとビニルエーテルとの共重合による新しい構造の鎖状ポリマー合成も検討する。(ii)30年度は、新設計ポリマーによるシリカナノ粒子のリング状・鎖状配列、金ナノ微粒子のリング状配列を検討する。
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Research Products
(32 results)