2018 Fiscal Year Annual Research Report
New Glycotechnology Exploiting 1,2-Glycosidic Polymer
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17H03070
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
小山 靖人 富山県立大学, 工学部, 准教授 (10456262)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 糖鎖 / 高分子合成 / 生体分子 / 自己組織化 / 超分子化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では生理活性物質の特性改変と、高機能性材料及び生体適合性材料の創製を目的とし、1,2-グリコシド型ポリマーの導入法の開発と新物質の特性評価を目標として研究を推進した。その他の天然糖鎖との物性の比較を通して、糖の連結位置が機能に及ぼす効果を明らかとするとともに、官能基された糖鎖を直接導入できる本手法の利点を活かした新物質創製を目指している。 本年度は特に、①バルク表面の糖化法の開発、②オリゴ糖配糖分子の合成と水中における自己組織化挙動の解明、③接着剤の開発、及び④構造材料の開発と特性評価に分類して検討を進めた。結果として、①ガラス表面に対し、パーメチル化した1,2-グルコピラナンを共有結合的にグラフト化する手法を確立した。またそのガラス表面が温度に応じて透過度を変化させることを明らかとした。一方で、②様々な重合度の1,2-グルコピラナンが配糖したグリチルレチン酸誘導体を精密合成した。崇城大学の黒岩教授と連携し、水中でのミセル形成について評価を進めた。糖鎖長の短い配糖体からなるミセルは静置時間につれて2次会合体を形成したが、糖鎖長が長い分子では2次会合体はほとんど観測されなかった。配糖分子における糖鎖長はミセルの速度論的な安定化に関与することを示唆している。更に③すでに知られている糖鎖型の接着材料の構造に倣い、1,2-グリコシド型ポリマーによる接着剤の合成について検討した。水素結合や剛直性が接着性に及ぼす効果や、含水率が接着強度に及ぼす効果について評価を進めた。その結果、剪断応力を加えることによって接着強度が顕著に増加するようなユニークな材料骨格を見出した。また剪断応力駆動型の接着について、構造一般性を検討した。④エステルあるいはウレタンを側鎖に有する1,2-グルコピラナンの合成についても検討を開始し、現在フィルム及び繊維の特性を評価している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた各種項目の検討を順調進めたほか、研究計画の時点では全く予想していなかった新材料として、剪断応力で接着力が顕著に強化する糖鎖型接着剤を見出し、その構造因子の解明についての研究を進めることができた。その構造一般性を評価することにやや時間がかかり、連携研究に関する成果の論文投稿が遅れている。なお、今年度中には間違いなく論文を投稿できるものと考えている。これらを総合して、おおむね順調な進展であると判断しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は特に①構造材料の開発と特性評価として、エステルあるいはウレタンを側鎖に有するポリマーを合成し、フィルム及び繊維としての機能を評価する。ポリマーの機械的物性と熱物性を測定し、その他の天然糖鎖からなる各種誘導体と物性を比較し、糖の連結位置が機能に及ぼす効果を明らかとする。また②接着剤の開発についても更に検討を進める。すでに知られている糖鎖型の接着材料の構造に倣い、1,2-グリコシド型ポリマーによる接着剤を合成する。具体的には、水素結合や剛直性が接着性に及ぼす効果を評価するほか、含水率が接着強度に及ぼす効果を評価する。またその他の天然糖鎖からなる類縁体と物性を比較し、糖の連結位置が機能に及ぼす効果を明らかとする。すでに剪断応力を加えることによって接着強度が顕著に増加するようなユニークな材料骨格を見出している。そのため、その応力駆動型接着能の構造因子についても明らかとする。更に③連携研究であるオリゴ糖配糖分子の合成と自己組織化挙動について成果をまとめる。まず1,2-グリコシド型ポリマーのワンポット配糖化技術により、糖鎖数の異なる天然配糖体を調製する。これまでにグリチルリチン誘導体の合成について報告しており、その手法に沿ってケルセチンやシアニジン、及び脂肪酸の配糖体を合成する予定である。合成が完了次第、水中における自己組織化挙動について検討する。自己組織化はpH、静置時間、糖鎖数に強く依存し、異なる形状の組織を形成することが明らかになりつつあり、その検討結果を論文にまとめる。また一方で、DDSや光線力学療法などへの応用についても検討する。 ③の点を迅速に進める目的で、ミセルやDDSに関する研究経験のある研究補助員を雇用する予定である。
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