2018 Fiscal Year Annual Research Report
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17H03085
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
藤本 健造 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90293894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 隆 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (80423078)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | DNA光クロスリンク / ゲノム操作 / ダブルストランドインベージョンDNA |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノムDNAを対象とした化学的・酵素的操作法は遺伝子増幅、メチル化DNA解析、ゲノム編集などに応用されている。研究者はこれまでの研究において光応答性人工核酸である3-シアノビニルカルバゾール(CNVK)とシアノウラシル(CNU)を併用することで自己架橋を抑制し、今まで困難とされていた二本鎖DNAへの光架橋に成功している。しかし、自己架橋抑制の為にCNVKとCNUを併用しているものCNVKとCNU同士で全く光架橋しないわけではなく、プローブDNA同士の自己架橋が副反応として観察された。そこで、平成30年度はまずCNUに変わる新たな光架橋抑制分子の検討を行い、ゲノムDNAの光操作に必要と考えられる副反応(自己架橋)が抑えられたダブルストランドインベージョンDNA構築を行った。アザウラシル、ニトロインドール、塩基部分のないd-スペーサー、C3リンカースペーサーを用いて検討を行った結果、CNVKの架橋位置にC3リンカースペーサーをおいた際にCNUよりも光架橋抑制効果が高いことを見出した。また、副反応として観察されていた自己架橋反応を抑制することでmダブルストランドインベージョンDNA構築が70%という高収率で進行することも見出した。さらに、高次構造を持つ核酸(mRNA)に対し、超高速光架橋能を有するアンチセンス核酸を作用させる事で遺伝子発現を強力に抑制することにも成功した。ゲノムDNA自体はヒストンに巻き付くなど複雑な高次構造を形成していると考えられ、超高速光架橋反応のゲノム操作への有効性を確認することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はゲノムDNAの光操作に向け、シアノウラシル(CNU)に変わる新たな光架橋抑制分子の検討を行い、ゲノムDNAの光操作に必要と考えられる副反応(自己架橋)を抑えたダブルストランドインベージョンDNA構築に成功した。さらに、高次構造を持つ核酸(mRNA)に対し、超高速光架橋能を有するアンチセンス核酸を作用させる事で遺伝子発現を強力に抑制することにも成功しており、同様に高次構造を有するゲノムを対象とした核酸類操作として超高速光架橋反応が有効であることをを確認した。以上のことから計画はおおむね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に開発したCNVKより長波長でのDNAと光架橋可能なピラノカルバゾール(PyC)を含む光反応性塩基を用いて、光誘導DNAダブルストランドインベージョン(Photo-induced DNA Double-strand Invasion: pDDI)を行う。pDDI法による内在性の遺伝子発現制御を実証することを目的に、ガン細胞中で過剰発現しているガン原遺伝子の遺伝子発現制御に挑戦する。遺伝子DNAを標的とするアンチジーン核酸の標的遺伝子として多数の報告がある(Clin. Cancer Res., 2012, 18, 796)を参考に、N-myc遺伝子を標的とするpDDI-dsODN-Sを設計し、DNA自動合成機により合成する。ガン原遺伝子であるN-myc遺伝子を過剰発現しているヒト神経芽細胞腫細胞株(IMR-32)を準備し、リポフェクションによりpDDI-dsODN-Sを細胞内に導入する。適切な時間・波長の光照射の後、CO2インキュベーター内でインキュベーション(1日程度)し、市販のセルカウンティングキット(MTTアッセイ)を用いた生細胞率の測定、RT-qPCRによるN-myc mRNAの定量(内部標準:GAPDH or β-actin)から、N-myc遺伝子発現の光制御により細胞死が誘導されていることを証明する。また、N-myc遺伝子の発現抑制抑制によるアポトーシスの活性化(Mol. Cancer Ther., 2005, 4, 779)が報告されている。本系においてもこれを確認すべく、光照射後の細胞中に現れることが予想されるアポトーシスマーカー(Casp3/7活性の亢進、フォスファチジルイノシトールの細胞膜表面への提示(アネキシンV染色))の検出を試みる。いずれのマーカーも定量・染色キットが市販されていることから、これらを用い、効率的に研究を進める。
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