2017 Fiscal Year Annual Research Report
膜蛋白質高次構造解析のための光励起常磁性タグを利用する新規固体NMR法の開発
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17H03089
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松木 陽 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (70551498)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 過渡的常磁性タグ |
Outline of Annual Research Achievements |
増感法: ゼノンアークランプのパルス制御系の立ち上げを完了、単色レーザー光源では行えない広範な色素探索を可能にした。試料管壁の吸収による可視光減衰を避けるためサファイア試料管の設計、製作を完了、今後光導入テストを経て、増感実験への応用に進む。高出力(10W)ブルーレーザー光源は試料過熱の問題が発覚し、パルス状照射法などの検討も進めた。最適な増感には連続照射が重要で、光量には最適値があることを見出した。 硬いマトリクスほどスピン緩和増進の効果が大きく、より良い増感効果を期待できるため、広範囲なマトリクス探索を行った。約20種の糖、糖アルコールについて、カロリメトリーによるガラス転移点測定、CWとパルスEPR, NMRによるスピン緩和測定からマトリクス硬さの見積もりを行い、電子スピンの縦緩和時間と、マトリクスの硬さに正の相関を見出した。最も硬い二種に候補マトリクスを絞ったので、増感効果の実測へ進む。膜タンパク質を用いる実証実験のため、発現、精製など物取りを終了した。 距離測定法: 次年度の計画に入れた色素タグの合成も進め、アッペル反応からアルキルハライド、スルホンチオエートのカップリングでMTSタグの合成に成功した。更に距離測定法の応用する対象タンパク質(GB1)のシステイン残基への導入法の検討まで進めた。この結果、導入反応中の加水分解によるタグの分解が速く、定量的な結合が進まない問題が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
増感法の実証が少し後ろにズレ気味だが、距離測定法の開発ではタグの有機合成法の検討が進行した。
膜タンパクの実証実験は、準備が順調に進行中。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の要は色素タグの合成で、現状明らかになった問題(上記)を克服することである。
フラビンが光照射によってラジカル的にタグのC-S結合を開裂している可能性がある。またここで、イソアロクサジン環のラジカル発生位置から硫黄原子にかけて六員環が形成しうることも分解反応が速い一員であると考えられる。
幾つかの増炭経路を計画しており、タグの腕を伸ばすことで六員環形成を避ける手法を試す。また、クルチウス転位でカルボン酸からアミノ基の導入を経て、アミド結合の形成を試みる。硫黄を介する結合よりもアミド結合は格段に加水分解に強いはずである。
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