2018 Fiscal Year Annual Research Report
膜蛋白質高次構造解析のための光励起常磁性タグを利用する新規固体NMR法の開発
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17H03089
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松木 陽 大阪大学, 蛋白質研究所, 准教授 (70551498)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 光励起過渡常磁性種 / 動的核分極 / 感度向上 / 固体NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では光励起によって短時間だけ不対電子を発生する化合物(色素)いわゆる過渡的常磁性種を利用する新しいアプローチで、次の二通りの新規固体NMR観測技術を開拓する。すなわち、1.蛋白質表面を色素タグ化した試料で行う新しい「距離測定法」、2.マトリクスに均一に混入した三重項色素緩和剤で実現する「増感法」である。
「距離測定法」では、昨年加水分解で苦しんだMTSベースの色素タグの問題を回避する新しい方策として、マレイミド化フラビンタグの合成を進めた。タグの合成ではリボフラビンのリビチル鎖の酸化開裂による減炭とアセタール化を経て、また末端の酸化でカルボキシル化フラビンを得た。更に最終ステップのマレイミド化に進み、DMT-MMによる活性化を利用したNメチルマレイミド酸塩とのアミド結合形成で、加水分解に安定なマレイミド化フラビンの合成を試みた。この最終アミド化は複数の溶媒、塩基の分量で試行したものの反応が進まないか、進行中に原料ともに分解し、目的物を得なかった。
「増感法」では3重項量子収率が高く、3重項寿命が長い色素群の探索においてピレン系、アセン系、ポルフィリン系多数の候補について基礎テストを完了、難水溶性色素のシクロデキストリンによる包摂作用を利用した溶解度向上テストも行った。この結果として最有力候補を6種にまで絞り込み、これを本測定に供する。脱酸素の方策としては脱酸素酵素を2種用意し、基礎テストを完了、これと色素の組み合わせも今後探索する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「距離測定法」「増感法」共に鍵となるタグの合成、色素群の絞り込みについて着実な成果と新しい知見が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
「距離測定」実験用のフラビンタグの合成では、最終マレイミド化のステップの改善をめざし、次を実行する。1.水、メタノール、DMF、DMSO以外のアプロテックな溶媒を用いて試行する、2.DMTMM以外の縮合剤を試用する、3.アルコール版マレイミドとの結合を試みる。
現状では反応が進行しないというよりもフラビンの分解がより強い律速になっている印象で、如何に温和な条件でフラビンの分解を避けつつマレイミド化を進行させるかが鍵になると考えている。タグの合成は年度の前半で成功させ、さらに標準蛋白質試料へのタグ化へ進む。同時進行で3重共鳴NMRプローブの改造を行い、実際のHCN測定2次元測定で光励起過渡的常磁性体からの分子内距離依存性を証明する。
「増感法」の開発に用いる色素群については、昨年度に6種にまで絞り込んだ最有力候補について本測定に移る。難水溶性色素のシクロデキストリンによる包摂も新しい試みとなる。3重項状態の消対を抑える脱酸素の方策として新たに酵素を利用する手法を試行する。有力な脱酸素酵素2種について実験を開始する。有望なコンストラクトから順次、本テストに進み、従来法を凌ぐ強いPREを得て単位時間感度の大幅向上を実現させる。
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