2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H03111
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉江 尚子 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (20224678)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高分子材料物性 / 動的結合 / 強靭化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、イガイ足糸の相分離構造に着想を得て申請者らが開発した強靭性ブロック共重合体PB1-b-P(N-r-B)-b-PB2(Bは動的結合性モノマー、Nは非動的結合性かつ柔軟なモノマー)の強靭化機構を解明し、従来材料を凌駕する高強度・高信頼性材料のための分子デザイン基本原理を明らかにすることを目的としている。 昨年度の検討で、セグメント長がP(N-b-B)>>PB1、PB2、かつ、PB1とPB2のセグメント長が異なる非対称系、および熱可塑性エラストマーに動的結合を導入したP(M-r-B)-b-P(N-r-B)-b-P(M-r-B)(Mは硬質モノマー)において、強靭化を確認し、強靭化メカニズムについて仮説を立てた。30年度には前者については、試料数を増やすとともに、動的粘弾性挙動や引張試験における弾性率のひずみ依存性などを解析し、両末端のハードセグメントと中央のソフトセグメント中の動的結合部位の役割を分離して考察して、昨年度の強靭化メカニズム仮説の詳細部分を補強した。後者の検討では、ハード相のみ、ソフト相のみ、および両相に動的結合Bを導入したポリマーを用意し、前者と同様の分析に加え、応力-ひずみ曲線の引張速度依存性およびサイクルテストから動的挙動を詳細に考察した。これにより、ハード相/ソフト相の界面に存在する動的結合の役割を明確化できた。 また、動的結合の強さや寿命がもたらす影響について、異なる動的結合間の比較から検討するために、新たな動的結合を導入したポリマーの合成を進めた。その中で、非常に単純な構造でありながら、特異的な挙動を示す動的結合を見出した。この動的結合はきわめてユニークな特性を示すことから、今後、我々独自のブロック共重合体デザインではなく、より一般的なランダム共重合体で解析を進める。加えて、硬質材料への動的結合の導入効果についても検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
動的結合の強度と寿命の影響の解析で計画した2項目について、昨年度、当初計画と順序を入れ替えてP(M-r-B)-b-P(N-r-B)-b-P(M-r-B)型ブロック共重合体を先に実施したため、本年度は、異なる動的結合間の比較を行うこととした。研究実績の概要欄に記載したように、その中で非常にユニークな新規動的結合を見出したため、当初計画から変更して、ランダム共重合体を用いた考察を進めている。これにより、当初計画よりも一般化した高靭性材料のデザイン指針を提案できると考えている。残り1年の研究期間に、当初計画を上回る成果を挙げることができると確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で見出した新規動的結合について、現在、その特徴と機能発現機構を解明を進めている段階である。非対称系とP(M-r-B)-b-P(N-r-B)-b-P(M-r-B)系については成果をとりまとめ、早急に論文として発表したい。加えて、硬質材料への動的結合の導入効果についても検討を進める。
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Research Products
(23 results)