2017 Fiscal Year Annual Research Report
極めて大きなストークスシフトを有するスペクトル変換用・耐熱発光ポリマーの実証研究
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17H03112
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
安藤 慎治 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (00272667)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石毛 亮平 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (20625264)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高分子機能材料 / 光波長変換材料 / 高発光性ポリイミド / 室温燐光 / 励起状態プロトン移動 / ドナー・アクセプター |
Outline of Annual Research Achievements |
計画初年度として,以下に示す検討を行った。 ① 蛍光量子収率(Φ)のさらなる向上のために,発光性PIの励起状態における光物理過程を解明し,それらを精密に制御することが必要とある。そこで,各世代の高発光性ポリイミド(HLPI)のモデル化合物(溶液)と薄膜の発光寿命を,本科学研究費で購入した蛍光寿命測定装置により室温~極低温また大気中/真空下で測定し,発光過程と無輻射遷移の速度定数から光物理過程を解析して,無輻射遷移を引き起こす機構を特定した。 ② 次いで,HLPIの無色透明化を目指し,新規のジアミン構造の導入を試みた。モデル化合物(溶液)は無色透明だが,対応する構造のPIは凝集体由来の黄色を呈し,青色光を吸収する。ジアミンDC6Fは2つの-CF3基による立体効果が有効と期待されることから,凝集の阻害効果とともに耐熱性と機械特性の向上が期待されるが,合成における水素化反応の収率が十分でなく,また精製が困難であったため,ジアミン構造の改良によるHLPIの無色透明化の検討は引き続きH30年度に継続する. ③ 臭素(Br)やヨウ素(I)を置換したカルボニル化合物において大きなStokes Shiftを示す「室温燐光」が観測されている。そこで,Brを置換した新規イミド化合物とポリイミドを合成し,Stokes Shiftの大きな燈色発光を観測した. Stokes Shiftの小さな蛍光も同時に観測され,これは励起三重項を経由した「遅延蛍光」の可能性がある。今年度に導入した蛍光寿命測定装置にりん光計測補助ユニットを装着して光物理過程を解析し,ミリ秒単位の寿命を得たことから,燐光/遅延蛍光の確証を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要(上記)に示したとおり,計画初年度であるH29年度は,所期の目標をほぼ計画通りに達成したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
計画の次年度として以下の検討を行う。 1.HLPIの完全無色透明化を目指し,新規の含フッ素ジアミンの完全精製とそれを用いた高発光性ポリイミド(HLPI)の合成・評価を行う。また,臭素・ヨウ素を導入した燐光/遅延蛍光発光性ポリイミドの検討も継続的に進める。さらにHLPIのStokes Shiftを拡大する「第3の方策」として,ドナー・アクセプター相互作用の導入を検討する。PIのイミド基部分は電子受容性(アクセプター)であるため,π共役構造でつながった部分に強い電子供与性基(ドナー)を導入すると,励起状態において顕著な電荷移動(CT)状態が惹起され,その安定化効果によりStokes Shiftの大きな蛍光発光が生ずると期待される。ここで 強いドナー基として,ピペリジル基,ピロリジル基,ジフェニルアミノ基,ナフチルアミノ基などが想定されるが,初年度の検討と同様,モデル化合物の発光特性から最適な置換基を選択し,HLPIの合成・評価に繋げていく。 2.擬似的な太陽光としてXe光源を用い「太陽光波長変換スペクトル」を簡易に計測できるシステムを構築する。第二世代HLPIに対して,UV-A光をほぼ吸収し,緑色光を20%以上増強させる効果を確認する。次いで,到達目標に最も近い物性を示すHLPI群の構造と製膜法の絞り込みを行い,人工太陽光照射装置を用いて太陽光変換スペクトルを計測するとともに,発光波長と変換効率の制御性,耐熱性・耐光性を計測して,波長変換膜としての実証化検討を進める。
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Research Products
(12 results)