2017 Fiscal Year Annual Research Report
高分子薄膜における垂直配向界面の創成と分子配置基盤技術
Project/Area Number |
17H03113
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
早川 晃鏡 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (60357803)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 垂直配向 / ミクロ相分離ドメイン / ブロック共重合体 / 下地膜 / 表面自由エネルギー / 高分子付加反応 / 表面改質 / ランダム共重合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子ミクロ相分離薄膜におけるナノ構造制御に関する研究の一環として,近年重要な課題となっている垂直配向制御に着目し,未だ解明されていない高分子の一次構造,形態,基板界面,および配向性などとの相関について明らかにし,さらにその垂直配向界面を利用した高度な分子配置技術とサブナノ界面薄膜材料に展開するための基盤研究である. 初年度となる29年度は,本研究者がこれまでに開発したシリコン含有ブロック共重合体(PS-b-PMHxOHS)を用い,シリコン基板上の表面改質膜(下地膜)とミクロ相分離ドメインの垂直配向との相関について明らかにした.下地膜に用いる疎水・親水性ポリマーにはポリスチレン(PS)を疎水性ポリマーとして固定し,ポリ(2-ビニルピリジン),ポリヒドロキシエチルメタクリレート,ポリメタクリル酸メチル,ポリメタクリル酸をそれぞれPSに対する親水性ポリマーとした組成比の異なるランダム共重合体を取り上げて合成し,得られた各ポリマーの接触角測定の結果から表面自由エネルギーの算出を行った.シリコン基板上における下地膜の定着密度とブロック共重合体の垂直配向の相関について原子間力顕微鏡観察により明らかにした.ミクロ相分離ドメインが垂直配向を起こすには基板表面の全面が下地膜によって均質に覆われている必要があることがわかった.下地膜の表面自由エネルギーとドメインの垂直配向に一定の相関があることが傾向から見て取れたが,一方でランダム共重合体成分がドメインの配向により大きく関わっていることが示唆される結果を得た.垂直配向に適したブロック共重合体の分子設計指針を確立するために,PSとポリメタクリル酸グリシジルからなるブロック共重合体(PS-b-PGMA)を合成し,高分子反応による側鎖基の導入法を確立した.これにより,表面自由エネルギーを自在に制御可能なブロック共重合体の創成が可能となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,高分子ミクロ相分離薄膜におけるナノ構造の垂直配向制御について,一次構造,形態,基板界面,および配向性の相関などの未だ解明されていない基礎的な問題を解決し,さらにその垂直配向界面を利用した高度な分子配置技術とサブナノ界面薄膜材料に展開するための研究基盤の確立を目的としている.初年度の取り組みとして,これまでに本研究者が開発したブロック共重合体を用いたミクロ相分離ドメインの垂直配向に再び目を向け,その仕組みに対する理解を深めるための実験を試みた.一方で,垂直配向に適したブロック共重合体の分子設計指針の確立を図るために,新規ブロック共重合体の創成を行った.以下に簡潔に進捗結果を纏める. (1)基板にシリコンを取り上げ,表面改質膜(下地膜)に用いる各種ランダム共重合体を当初の計画通りに合成することに成功した.下地膜の定着密度,また各種得られたランダム共重合体の表面自由エネルギーとドメインの垂直配向との相関について調べ,それらの結果を整理することで関係性を明らかにすることができた.表面自由エネルギーを算出する構成式における極性の配向成分と非極性の分散力成分,およびドメインの垂直配向の関係から,ランダム共重合体の構成成分がドメインの配向により大きく関わっていることが示唆される結果を得た. (2)垂直配向に適したブロック共重合体の分子設計指針を確立するために,PSとポリメタクリル酸グリシジルからなるブロック共重合体(PS-b-PGMA)を合成し,高分子反応による側鎖基の導入法を確立した.合成化学的なアプローチにより,表面自由エネルギーを自在に制御することを可能にするブロック共重合体の創成は他に例がなく,興味深いブロック共重合体の開発に成功した. 以上の結果から,本年度の進捗状況は一部計画以上に進展する内容も含んでおり,おおむね順調であると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度30年度は,前年度までに新規に合成に成功したブロック共重合体(PS-b-PGMA)を用い,側鎖基として多様な官能基の導入を任意の導入率で制御し,得られるブロック共重合体の表面自由エネルギーや官能基の種類とミクロ相分離ドメインの垂直配向の相関を明らかにする.さらに,これまでに本研究者が開発した複数のブロック共重合体を対象に,膜厚がドメインの垂直配向に及ぼす影響を明らかにする.膜厚を10-100nm程度に設定し,電子顕微鏡観察による断面構造解析を実施し,ドメインの垂直配向する様子を時系列で明らかにする. これらの進捗が順調に進めようであれば,31年度に計画しているサブナノ界面薄膜材料の開発も積極的に先行して取り組んでいく予定である.
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Research Products
(9 results)