2018 Fiscal Year Annual Research Report
異種固体界面における高分子半導体の光電荷および分子鎖ダイナミクス
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17H03118
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川口 大輔 九州大学, 工学研究院, 准教授 (70362267)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポーラロン / 励起子 / 高分子半導体 / 有機薄膜太陽電池 / エバネッセント波励起 / 過渡吸収分光測定 / 過渡光電流測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ポリ(3-アルキルチオフェン)(P3AT)分子鎖の凝集状態および熱運動特性に及ぼす側鎖の偶奇効果と光電荷生成挙動へのその影響について検討した。試料として、ポリ(3-ペンチルチオフェン) (P3PT)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン) (P3HepT)、ポリ(3-ノニルチオフェン) (P3NT)およびポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を用いた。広角X線回折パターンを解析した結果、P3HT、P3HepT、P3NTは単斜晶を形成するが、P3PTは斜方晶を形成することが明らかになった。また、P3PTの(020)間隔はP3HTのそれより小さいことから、P3PTの結晶はP3HTと比較してアルキル側鎖の立体反発が小さく、チオフェン環のパッキングが密になっているといえる。 P3PT膜の過渡吸収スペクトルを評価した。他のP3ATでも観測されるポーラロン(P)由来のピークと、他の偶数側鎖を有するP3ATでは観測されない新しい励起子が観測された。偏光特性と寿命の評価から、このピークはエネルギー状態が異なる自由電荷(P’)と帰属した。 分子運動特性と光電荷生成の相関を明らかにするため、動的粘弾性測定による損失弾性率とPおよびP'の時定数(τP、τP')を比較した。P3PTにおいて、側鎖緩和に対応するβ過程、チオフェン環のねじれ運動に対応するα1過程が観測された。τPは低温域で一定で、310 K付近から温度上昇に伴い減少した。この温度はα1緩和温度に一致した。τP'は、低温域においてほぼ一定であったのに対し、220 K付近から温度上昇に伴い増加した。τP'が上昇し始める温度はβ緩和温度と一致した。これは、P3PTにおけるP'の生成とβ緩和に相関があることを示唆している。以上のことから、側鎖の偶奇効果は結晶のパッキングと生成する励起子のダイナミクスに強い影響を与えることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
高分子半導体の凝集状態および分子鎖ダイナミクスが光電荷ダイナミクスに大きな影響を与えることが明らかになりつつある。今後は、これらの材料特性に加えて、界面選択的な分光法およびデバイス特性の評価法の開発を進めて行くことにより、高分子半導体の界面極近傍における光電荷ダイナミクスとその制御因子について検討を行っていく。
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