2017 Fiscal Year Annual Research Report
Enhancement of Solar Water-Splitting Activity for Hydrogen Production
Project/Area Number |
17H03126
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
入江 寛 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (70334349)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光触媒 / 水素 / 水分解 / 赤色光 / 太陽光 |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代のエネルギー資源として注目されている水素を、恒久的に地球上に降り注ぐクリーンな太陽光エネルギーを利用して水(試薬を必要としない純水)を光触媒により完全分解して水素を製造すべく検討を行っている。平成29年度は、我々がすでに見出している全固体型二段階励起光触媒である銀接合型ロジウム酸亜鉛/バナジン酸ビスマス(もしくはアンチモン酸銀)の改良を行い、その水分解向上を検討した。具体的には、 1. 銀に代わる導電層材料である金を利用し、金接合型ロジウム酸亜鉛/バナジン酸ビスマスを作製し、波長740 nmの赤色光にて水の完全分解を達成した。また、金接合では硝酸処理が不要であり、それが一因となり銀接合のときよりも水分解活性が向上した。 2. 硝酸処理に代わる処理方法、すなわちアンモニア処理の検討を銀接合型ロジウム酸亜鉛/アンチモン酸銀の系で行い、硝酸処理によるアンチモン酸銀の銀欠陥生成が抑制され、利用できる光の長波長化および水分解活性が向上した。 3. 接合に関与する金粒径の微小化の検討はバナジン酸ビスマスに光析出法による金担持の方法で行った。その方法で金接合型ロジウム酸亜鉛/バナジン酸ビスマスを作製し、可視光での水の完全分解に成功した。 4. ロジウム酸亜鉛に代わる酸化銅の水の半反応による水素発生活性評価を行った。 波長740 nm の赤色光で純水を完全分解できる光触媒は世界で初めての報告例であり学術的な特色がある。また汎用性のある作製方法であるため様々な材料に適用でき赤色光だけでなく近赤外光までの利用が視野に入ってきていることは独創的である。この研究をさらに発展させた本申請の研究を通じて、太陽光というクリーンな自然エネルギーを用いて水を完全分解し、クリーンエネルギーである水素を、実用化を視野に入れた高い効率で獲得きるようになり、環境・エネルギー問題の解決の一助となることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究実施計画である1. 銀に代わる導電層材料、金の利用、2. 硝酸処理に代わる処理方法、アンモニア処理の検討、3. 接合に関与する銀粒径の微小化の検討、4. ロジウム酸亜鉛に代わる酸化銅、および接合のための銀に代わる銅の利用の検討、の4項目に対し現在の進捗状況を以下に示す。 1. 金を利用し、金、ロジウム酸亜鉛、バナジン酸ビスマス(Bi4V2O11)を2段階で混合、熱処理を行うだけの簡単な方法で金接合型光触媒を作製し、波長740 nmの赤色光にて水の完全分解を達成した。ロジウム酸亜鉛上の金が水素発生の助触媒として機能すること、銀接合でな必要不可欠であった硝酸処理が不要となり硝酸処理による活性低下要因を取り除くことができ、水分解活性が向上した。一方、金ナノロッドとそのアスペクト比制御、ナノ粒子の粒径制御の研究も行い、それら最適化を通じて活性向上を検討する計画であったが、金ナノロッドのアスペクト比制御までに留まった。2. 硝酸処理に代わるアンモニア処理の検討を銀接合型ロジウム酸亜鉛/アンチモン酸銀の系で行った。アンモニア処理では硝酸処理によるアンチモン酸銀の銀欠陥生成がなくなり、利用できる光波長が545 nmから660 nmまで延長し、さらに水分解活性が向上した。3. 当初の計画では接合に関与する銀粒径の微小化の検討であったが、1. 項の検討で金の方が望ましいと考え、金粒径の微小化の検討を行った。金粒径の微小化はバナジン酸ビスマス(BiVO4)に光析出法による金担持の方法で行った。その後、ロジウム酸亜鉛と混合、熱処理する方法で金接合型光触媒を作製し、可視光での水の完全分解に成功した。4. ロジウム酸亜鉛に代わる酸化銅の水の半反応による水素発生活性評価を行ったが、接合のための銀に代わる銅を利用する検討を行っていない。 以上から、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に引き続き、金接合型光触媒の金粒子微細化(ナノ粒子化)を行い、接合効率向上および助触媒としての機能向上を通じて水分解の高活性化を目指す。 また我々が作製、評価している接合型光触媒では、水の完全分解には必要不可欠な助触媒(既往の研究において可視光による水の完全分解の報告はあるが、どれも助触媒を担持している)を使用していない。使用していないにもかかわらず水の完全分解ができているのは興味深いことであり、また助触媒を担持すれば水分解活性は向上するものと考えられる。現在一部開始をしているが、平成30 年度では、銀接合系、金接合系に水素発生助触媒、酸素発生助触媒を選択的にそれぞれ水素発生光触媒であるロジウム酸亜鉛、酸素発生光触媒であるバナジン酸ビスマスに担持する。 例えば、ロジウム酸亜鉛、バナジン酸ビスマスのバンドギャップがそれぞれ1.2 eV、1.7 eV のため、波長800 nm 以上の光を照射するとロジウム酸亜鉛上のみに助触媒が光析出可能である。具体的には、塩化ロジウムなどを正孔補足犠牲剤と共に加え、波長800 nm 以上の光照射によってロジウムが水素発生助触媒としてロジウム酸亜鉛上のみに担持され、水分解活性は向上するものと期待できる。ロジウムだけでなく、同様な方法でルテニウム、ニッケルなど担持可能である。また、ロジウム酸亜鉛、バナジン酸ビスマスそれぞれの還元電位、酸化電位の差を利用することにもよっても光析出法により一方に助触媒を選択担持することが可能である。 また、ロジウム酸亜鉛やバナジン酸ビスマスに代わる水素・酸素発生光触媒材料を探索し合成、もしくは既報から選択し、水素・酸素発生活性の評価を行っていく。その上で、金もしくは銀接合光触媒や金や銀を用いない直接接合型光触媒の創製し、水分解活性の評価を行っていく。
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Research Products
(12 results)