2019 Fiscal Year Annual Research Report
Enhancement of Solar Water-Splitting Activity for Hydrogen Production
Project/Area Number |
17H03126
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
入江 寛 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (70334349)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光触媒 / 水素 / 水分解 / 赤色光 / 太陽光 |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代のエネルギー資源として注目されている水素を、恒久的に地球上に降り注ぐクリーンな太陽光エネルギーを利用して水(試薬を必要としない純水)を光触媒により完全分解して水素を製造すべく検討を行っている。2019年度は、我々がすでに見出している全固体型二段階励起光触媒である銀接合型ロジウム酸亜鉛/バナジン酸ビスマス、もしくは金接合型ロジウム酸亜鉛/バナジン酸ビスマスの改良を行い、その水分解の活性向上を検討した。具体的な内容を以下に記す。 1. 2018年度に検討を行った接合および助触媒として用いる金粒子の微細化の検討を引き続き進め、水分解活性に及ぼす金の含有量依存性を検討した。その結果、金の含有量増加に伴って、水分解活性は向上した。 2. 2018年度に検討を行った銀接合型ロジウム酸亜鉛/バナジン酸ビスマスに対しての水素発生光触媒であるロジウム酸亜鉛上への選択的助触媒担持による活性向上を引き続き検討した。特に助触媒として銀、白金を重点的に検討した。銀、白金とも助触媒担持量には最適値が認められた。 3. 銀接合型ロジウム酸亜鉛/バナジン酸ビスマスに対しての酸素発生光触媒であるバナジン酸ビスマス上への選択的助触媒担持を開始した。まずは助触媒として酸化ルテニウム、酸化コバルトを選択し担持した。大きな水分解活性は認められなかったが、担持量の最適化を行うことにより活性の向上が示唆された。 これらの研究を通じて、太陽光というクリーンな自然エネルギーを用いて水を完全分解し、クリーンエネルギーである水素を、実用化を視野に入れた高い効率で獲得きるようになり、環境・エネルギー問題の解決の一助となることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究実施計画である1. 金ナノ粒子接合型光触媒の水分解活性に対する金含有量依存性評価、2. 水素発生光触媒への助触媒(銀、白金)の選択的担持に関し、水分解活性に対する銀、白金担持量依存性評価、3. 酸素発生光触媒への選択的助触媒担持による活性向上、の3項目に対し現在の進捗状況を以下に示す。 1. 接合および助触媒として用いる金ナノ粒子をイオン液体中への金スパッタ法によって作製した。作製した金ナノ粒子を用いてロジウム酸亜鉛/バナジン酸ビスマスに対し10 wt%までの金を担持した。その結果、この担持範囲では金担持量増加に伴って水分解活性は向上した。 2. 銀接合型ロジウム酸亜鉛/バナジン酸ビスマスに対し、水素発生光触媒であるロジウム酸亜鉛上への選択的助触媒担持による活性向上を検討した。ロジウム酸亜鉛、バナジン酸ビスマスのバンドギャップ差を利用して、光析出法によりロジウム酸亜鉛上のみに白金もしくは銀助触媒を、光析出時間を変化させることにより白金、銀の担持量を制御した。銀、白金とも助触媒担持量には最適値が認められ、銀で3wt%程度、白金では2 wt%程度の担持が最も水分解活性が高く、水分解効率が3倍ほど向上した。 3. 銀接合型ロジウム酸亜鉛/バナジン酸ビスマスに対しての酸素発生光触媒であるバナジン酸ビスマス上への選択的助触媒担持を開始した。まずは助触媒として酸化ルテニウム、酸化コバルトを選択し、我々がすでに見出している2段階の熱処理によって担持した。大きな水分解活性は認められなかったが、走査型顕微鏡観察によってロジウム酸亜鉛に酸化ルテニウム、酸化コバルトが担持されていることが確認できた。担持量の最適化を行うことにより活性の向上が示唆された。 以上、ほぼ計画通りに進捗していることから、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に引き続き、本年度も我々がすでに見出している銀接合型もしくは金接合型光触媒の改良を行うことによって目標値に近づけるように研究を進める。 (1) 金接合型光触媒の金粒子の最適化、水素発生光触媒の活性向上:平成30年度は、導電層にイオン液体中への金スパッタによって自作した金ナノ粒子(粒径約42 nm)を用いた金接合型ロジウム酸亜鉛/バナジン酸ビスマスを作製し、赤色光を利用し純水の完全分解に成功した。一方で市販の金粒子(粒径100~300 nm)を用いた場合と比較して水分解活性は同等であったことから、金の粒径にも最適値があると想定される。そのため、本年度は金粒径の最適化を行う。また、現状では水素発生光触媒は固相反応法により作製している。固相法では結晶性や含有欠陥量が多いことから水素発生活性は高くないため、水熱法などを利用して高結晶性、欠陥フリーのロジウム酸亜鉛を作製する。一方、酸素発生光触媒のバナジン酸ビスマスは単結晶を容易に育成することができるため、高い結晶性を付与することが可能で、さらには育成した単結晶の粉砕工程を制御することにより高結晶性を維持する。 (2) 水素発生光触媒、酸素発生光触媒への選択的助触媒担持による活性向上:令和元年度までは、銀接合型ロジウム酸亜鉛/バナジン酸ビスマスの水素発生光触媒であるロジウム酸亜鉛に、水素発生助触媒として白金、銀、銅を、光析出法を用いて選択的に担持した。担持量の最適化によって約3~4倍向上した。今後は、酸素発生光触媒であるバナジン酸ビスマスにも選択的に酸素発生助触媒(コバルト・リンが有望)を担持し、2種の助触媒をそれぞれ選択的に同時担持することにより更なる活性向上を目指す。 (3) 赤外光応答型直接接合ロジウム酸亜鉛/バナジン酸銀光触媒の水分解活性向上:ロジウム酸亜鉛/バナジン酸銀の割合を変化や作製方法の見直しにより活性向上を目指す。
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Research Products
(7 results)