2018 Fiscal Year Annual Research Report
次世代Li二次電池用Si系負極活物質の創製と電極-イオン液体電解質界面の最適化
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17H03128
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
坂口 裕樹 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00202086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薄井 洋行 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (60423240)
道見 康弘 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (50576717)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リチウムイオン電池 / 負極 / ケイ素 / イオン液体電解液 / コンポジット化 |
Outline of Annual Research Achievements |
Siは現行LIBの黒鉛負極に比べ約10倍もの高い理論容量を有するため極めて魅力的である.しかしながら,Siは硬くて脆いことと充放電反応にともなう大きな体積変化が相まって電極崩壊を招くためサイクル性能に乏しいという問題を抱えている.これに対し,SiへPをドープすることにより,Si相から結晶質Li15Si4相への相転移が適度に抑制され,有機電解液中においてサイクル性能が改善されることを見出してきた.他方,電池のエネルギー密度が高まるとより一層の安全性の確保が重要となる.当グループは難燃性を有するイオン液体電解液を検討し,ある種のイオン液体電解液をSi単独電極に適用することにより,安全性だけでなく負極特性が向上することも報告してきた.そこで本年度は,Si系電極のさらなる性能向上を目的とし,イオン液体電解液中におけるP-doped Si電極のLIB負極特性を調べ,その反応挙動を調査した.充放電試験の結果,Si単独電極は600サイクル程で容量衰退を引き起こしたのに対し,P-doped Si電極は1400サイクル以上にわたり1000 mA h g-1の高容量を維持し特筆すべきサイクル安定性を示した.充放電曲線を解析したところ,P-doped Si電極はSi単独電極と比較してLi-rich相の形成が抑制されていることがわかった.Li-Si合金相中のLi濃度が高いほど体積膨張は大きくなることから,Pドープによりそれが抑制されていると推察される.そこで,Li吸蔵状態のSi活物質層に対して大気非暴露で断面FE-SEM観察を行った.その結果,P-doped Siでは予想通り体積膨張が明らかに抑制されていた.したがって,Pドープにより活物質層の体積変化が抑制され,それにともなう応力発生が低減されたために電極の崩壊が起こりにくくなりP-doped Si電極は優れたサイクル寿命を示したと推察される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,充放電前後におけるSi電極の構造の変化を,断面観察により直接確認することができた.高性能を発揮する負極は,予想通り,膜厚の増大が大幅に軽減されていることを確かめた.これは,本研究で進める負極開発において,極めて基礎的な知見である.従来のSi電極のみならず,無電解めっきや熱処理の条件を変えたNi-P被覆Siにおいても,この知見は適用できるはずである.これに加えて,他のコンポジット化手法に基づく遷移金属ケイ化物-ケイ素コンポジットにおいても,膜厚と負極性能の相関は非常に重要な知見となるため.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,PのドーピングがSi負極の膜厚に与える影響を明らかにすることができた.このメカニズムを充分に解析したうえで,Ni-P層被覆Siや他のシリサイド系コンポジット負極に対し,この知見を適用すれば,より一層の負極性能の向上が期待できる.したがって,今後はこのような内容を実施していきたい. 一方,イオン液体電解液だけではなく,従来の有機溶媒電解液に対し,添加剤を使用した場合についても検討を行っていきたい.
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Research Products
(19 results)