2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H03130
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
田村 堅志 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (80370310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久間 博 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (20400426)
小暮 敏博 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50282728)
佐藤 久子 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (20500359)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | セシウム / 粘土 / 吸着 / 土壌汚染 / 風化黒雲母 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性セシウムによる汚染土壌では、風化黒雲母が他の粘土鉱物よりも放射性セシウムを強く吸着し、脱離を困難にしているといわれている。この問題に対して粘土化学的な立場から吸着セシウムイオンの吸着ミクロ構造を調べ、吸着したセシウムイオンが安定化に至る機構解明を進めている。 我々は風化黒雲母のセシウム吸着サイトとして、ヒドロキシアルミニウムが層間に入って形成されたHydroxy-interlayered vermiculite(HIV)中の“くさび型空間”が有力であると考えている。福島地域の酸性土壌環境では、雲母質鉱物の部分的溶解によってアルミニウムが一旦放出され、その後再吸着して層間でくさび構造(一部ヒドロキシル化)が形成される。このヒドロキシアルミニウム化過程は、イオン交換容量の減少をもたらすが、セシウムの移動性に少なからず影響していていると考えられる。今回、HIV様層間構造をもつヒドロキシアルミニウム変質黒雲母を調製し、マグネシウムイオンによる脱離実験を実施した。並行して133Cs-NMR, 27Al-NMR測定によりその吸着状態の詳細を調べた。アルミニウムヒドロキシル化による構造変化が、セシウムイオンの移動性に大きく影響を及ぼしていることが確認できた。本研究では完全にヒドロキシルアルミニウムイオンで置換されたと風化黒雲母よりも、一部カリウムイオンが残存する不規則混合層(くさび空間)をもつ風化黒雲母の方がセシウムの安定性が高いことが明らかになった。 また、福島産天然風化黒雲母にセシウムを吸着させた試料を調製し、種々の溶液でセシウム溶出実験を実施した結果からは、セシウムは風化黒雲母の表層部くさび空間に選択的に吸着していると推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
風化黒雲母層間にヒドロキシアルミニウムイオンの導入量を変えた試料を調製し、セシウムイオンの吸着、脱離挙動を強磁場NMRを用いた解析によって調べることに着手した。また、風化黒雲母の表面に形成されたくさび空間に選択的にセシウム吸着が進んでいるという洞察から脱離方法の糸口が見えてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
セシウムイオンの吸着サイトを風化黒雲母表面のくさび空間と想定して、酸処理による溶解実験などから吸着サイトをさらに絞っていく予定である。
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