2018 Fiscal Year Annual Research Report
固体酸化物形燃料電池の電極電解質一体焼成プロセスの解明と制御
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17H03149
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
原 祥太郎 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (10401134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鹿園 直毅 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30345087)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 焼結 / マルチスケール / トモグラフィー / 固体酸化物形燃料電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず,薄膜状の緻密でない電極粉末スラリーと,緻密でない電解質基板材料とが一体焼結するプロセスを対象とし,その焼結実験と焼結体の微細構造変化の解明に取り組んだ.使用材料は,昨年度実施した拘束焼結材料と同様とし,電極材料として混合導電性材料のLSCFを,電解質材料として酸化銅を1mol%添加したガドリアドープドセリア (GDC)とした.まず長作動マイクロスコープレンズを用いてペレット状での各使用粉末の収縮速度の時刻暦変化を求め,電極と電解質と収縮速度差を定量化した.つづいて,電極と電解質の収縮速度差のある材料を用いて一体焼結サンプルを作製し,その微視的構造を観察したところ,収縮速度が非常に大きな別材料と一体焼結することによってLSCF膜に面内方向の圧縮応力が加わり,収縮の駆動力が得られ,収縮が単体状態より飛躍的に向上することがわかった.さらに,異なる時間一体焼結させたサンプルのLSCF層のFIB-SEM三次元再構築像を三サンプル取得し,一体焼結体の微細構造パラメータの時間変化を定量化した.その結果,界面に近い数ミクロン領域ほど,より大きな圧縮応力がLSCF内部に発生するため,固相密度や粒径が膜厚方向に一様ではないことが明らかとなった.特に,両材料の収縮速度差に伴って発生する内部応力が,焼結体の微細構造変化に及ぼす影響は,一体焼結の初期過程において顕著となった.これらの知見は,SOFCの空気極設計に不可欠であるといえる.一方,本年度は,昨年度得られた拘束焼結の三次元微細構造をもとに,拘束焼結の構造変化を予測するキネティックモンテカルロ法の簡易モデルの開発を実施した.界面垂直方向に収縮アルゴリズムパラメータに異方性を考慮したモデルを構築し,拘束焼結体の収縮の異方性を再現させ,FIB-SEM構造から得られた実験結果とよい傾向を得た.これらの結果をもとに,次年度以降は一体焼結シミュレーターの改良を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一体焼結現象を明らかにする上で必要不可欠であるFIB-SEMを用いた焼結体の三次元再構築化に本年度は着手し,一体焼結サンプルの製造方法の確立と三次元再構築化に成功した. 特に異方性に関する情報は,SOFCを設計する上で重要な知見であると考えられる.また,拘束焼結の解析モデリングも簡易モデルではあるが,実験と同様の傾向を示すモデルができており,研究はおおむね順調に進展しているといってよい.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,本年度得られた一体焼結の三次元微細構造データをもとに,一体焼結の構造変化を予測するキネティックモンテカルロ法の簡易モデルの開発を実施する.ただし,現状では一体焼結の空気極側の三次元微細構造しか取得できていないため,電解質側に三次元微細構造の取得も同時に試みる.また,テープ成形から得られた一体焼結体のそり形状測定を実施し,キネティックモンテカルロ-有限要素法の連成モデルを開発し,予測モデルの検証を行う.最終的には,これらの知見をもとに,より優れた電極-電解質を製造するための一体焼結プロセスの設計指針を目指す.
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