2018 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of rarefied gas flows induced by liquid evaporation from nanoscale pore arrays and its application to cooling devices
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17H03172
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杵淵 郁也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30456165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉本 勇太 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90772137)
堀 琢磨 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 助教 (50791513)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分子流体力学 / 希薄気体流 / 気液界面 / クヌッセン層 / 高熱流束除熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 液面から蒸発する気体分子の速度分布計測 平成29年度の予備実験から得られた知見をもとに,液面から蒸発する水分子を分子線として抽出し,飛行時間法により速度分布を計測する実験系の構築を進めた.分子線を抽出する方法として,当初計画していたキャピラリーチューブ先端に液滴を保持する方法では,液中に含まれる不純物の堆積により,長期間に渡って清浄な液面を保持することが困難であることが確認された.その対策として,薄板に加工されたピンホールを介して水滴を生成・保持する機構を新たに考案した.この機構では,ピンホール下部に流路を設け,脱気水を循環させることで,不純物の堆積が防止される.小型真空容器内に保持された液滴の挙動を顕微鏡で観察し,液滴を安定して保持できる条件を見出すための実験を行った.その結果,数日程度の期間,水滴を安定して保持できることが確認された. (2) 液面近傍のナノ・マイクロスケール非平衡気体流れの数値解析 前年度に引き続き,液面からの蒸発により生じる非平衡気体流れ(クヌッセン層)を分散低減型モンテカルロ法で解析するための手法の構築を進めるとともに,構築した手法を適用することにより二次元スリット状細孔および三次元細孔表面からの蒸発に伴う流れの解析を実施した.分散低減型モンテカルロ法を用いることで,条件によっては計算コストが1000分の1以下となり,これまで一般的に用いられてきたモンテカルロ直接法では困難な大規模な計算が行えることが確認できた.また,分散低減型モンテカルロ法に多原子分子の回転自由度を考慮した衝突過程を導入する手法を構築し,回転温度の緩和過程が正しく再現できることを確認した.ただし,計算コスト低減のためにはアルゴリズムの改良が必要であることも同時に明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
液面から蒸発する気体分子の速度分布計測系の構築が当初計画よりも遅れている.これは,真空雰囲気においてミクロンサイズの水滴を長期間に渡って保持することの技術的困難に起因する.しかし,平成30年度の検討により,液滴保持の機構について実現の目途が付いたことから,平成31年度中に速度分布計測が行える見込みである. 分散低減型モンテカルロ法を用いた流れの解析に関しては,当初計画以上の成果が挙げられた.細孔サイズが数マイクロメートルから数百マイクロメートルの範囲で変化した際に生じる流れについて,分散低減型モンテカルロ法を用いた数値解析の結果の整理に加えて,理論的な検討も進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 液面から蒸発する気体分子の速度分布計測 平成30年度までに検討を行ってきた真空雰囲気にけるミクロンサイズ水滴の保持機構を用いることで,液面から蒸発する気体分子の速度分布計測系を構築する.ピンホール部の形状を正確に規定して再現性を向上させるため,水滴保持部はシリコン基板に深掘り反応性イオンエッチングにより加工する.構築した装置を用いて,液面から蒸発する水分子の飛行時間分布計測を実施し,速度分布のマクスウェル・ボルツマン分布からのずれの有無の検証や,液面温度と速度分布の関係についての検討を行う. (2) 液面近傍のナノ・マイクロスケール非平衡気体流れの数値解析 分散低減型モンテカルロ法に,多原子分子の回転自由度を考慮した衝突過程を導入する手法についてさらに検討を進める.具体的には,分子間衝突による分布関数の変化を表現するsource-sink processにおいて,回転エネルギー分布の変化を効率的に取り扱うためのアルゴリズムの開発を行う.また,三次元細孔表面からの蒸発に伴う流れの解析を引き続き進めることで,細孔形状と蒸発流れの関係について整理する.
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Research Products
(12 results)