2018 Fiscal Year Annual Research Report
PEM形燃料電池の氷点下起動におけるマルチスケール水輸送・凍結分布制御
Project/Area Number |
17H03178
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田部 豊 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80374578)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近久 武美 北海道大学, 工学研究院, 特任教授 (00155300)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 熱工学 / 燃料電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体高分子形燃料電池の氷点下環境からの起動における電池内のマルチスケール水輸送・凍結機構を明らかにするとともに、耐氷点下起動性ならびに耐久性向上のための触媒層・MPL・ガス拡散層構造および制御手法を提示することを目的とし、検討および実験方法の確立を行った主な成果を以下にまとめる。 1.自動車に搭載されるスタック中央部のセルの断熱環境を模擬するために、集電板の外側に直接ヒータおよび断熱版を設置し、より短時間での昇温過程を模擬できる実験方法を構築した。これを用いて-10℃~-15℃の範囲からの温度上昇過程を模擬した氷点下起動を起こった結果、-14℃では起動に成功する場合としない場合が観測され、MPL/CL界面に滞留する生成水が氷点下起動の成否を決めていることが推察された。 2.親水性カーボンファイバーMPLを導入し、-18℃のより低い温度からの起動が可能なことを確認した。また、親水性カーボンファイバーMPLが、期待通りに界面に滞留した液水を除去、MPL内部への生成水の移動を促進させ、氷点下起動に適した構造であることを示した。 3.低温において、GDLからのより効率的な凝縮水排出を実現するために、GDL表面を親水化処理する手法を提案した。まず格子ボルツマンシミュレーションにより、表面親水化処理はGDL内部の滞留水量を抑制する効果があることを確認した。さらに前年度までに構築した拡大スケールモデル実験からも滞留水量の抑制を確認するとともに、内部の液水の吸出し効果の促進も示唆された。 4.バス用途のカーボンセパレータ中心部を想定した断熱条件を模擬し、生成水の凍結による起動停止なく-30℃から0℃以上に達せさせることに成功した。このために、親水性カーボンファイバーMPLを使用するとともに、初期のドライアウトを防ぐために2ステップの電流負荷方法が有効であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に則した研究実施計画通りに研究を進めることができた。特に、バス用途のカーボンセパレータ中心部を想定した断熱条件を模擬し、生成水の凍結による起動停止なく-30℃から0℃以上に達せさせることに成功した。これにより、次年度からのより高度な氷点下起動方法の検討を予定通りに順調に進められると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
スタック中央部のセル環境を模擬した断熱模擬方法をさらに発展させ、零度以上に達した後の運転も含めた氷点下起動の高度化を目指す予定である。ここで、より低温からの起動を可能とするために、膜の含水状態に応じたより複雑な電流負荷方法や、MPLの親水性と疎水性のハイブリッド構造などの検討も進めていくことを考えている。
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