2018 Fiscal Year Annual Research Report
新型複素モード解析を基盤とする自励系および非線形系の高性能振動解析システムの開発
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17H03191
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
近藤 孝広 九州大学, 工学研究院, 教授 (80136522)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 健一郎 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (80264068)
石川 諭 九州大学, 工学研究院, 准教授 (60612124)
森 博輝 九州大学, 工学研究院, 准教授 (50451737)
盆子原 康博 宮崎大学, 工学部, 准教授 (10294886)
宗和 伸行 九州大学, 工学研究院, 助教 (40304753)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 機械力学・制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
モード解析は,現在の振動解析において不可欠な解析ツールである.特に,質量行列と剛性行列がともに正定性を有する線形比例減衰系に対しては実モード解析による完全なモード分離が可能で,大規模系に対する低次元化法も整備されているなど,周波数応答解析手法としてはほぼ完成の域に達しているといえる.係数行列がこの条件を満たさない場合であっても複素モード解析を適用すると完全なモード分離が可能になるが,得られるモード方程式が1階の複素常微分方程式になることから,従来の複素モード解析には力学的現象のメカニズム解明に不可欠なエネルギー的検討に適さないという弱点がある. このような弱点の克服を目指して,研究代表者は従来の複素モード解析を改良し,非比例減衰系や非対称行列系においても完全にモード分離された2階の実常微分方程式の形式でモード方程式を導出できる実相似変換則を新たに見出した.この変換則によると,線形系に関しては適用対象に関する制約条件がほぼ取り除かれた非常に汎用性の高い強力なモード解析法(新型複素モード解析法と呼ぶ)を新たに開発することが可能になる. 本研究課題では,新型複素モード解析を基盤的ツールとして利活用することによって,従来のモード解析では取り扱いが困難であった多自由度線形自励振動系および大規模非線形系に対する高性能な振動解析システムの開発を推進している.これまで,多自由度線形自励振動系に対しては様々なタイプの不安定化メカニズムや動吸振器の動作原理とその最適設計法をエネルギー的観点から解明するための理論的基盤を整備して来た.また,大規模非線形系に対しては合理的かつ高精度の低次元化法を開発するとともに,実際の機械システムで現れる様々な具体例に適用してその有効性の検証を進めつつある.なお,新たに開発された低次元化法は,自励系を含む大規模線形系全般に対しても非常に有効であることが判明している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)自励振動研究班:昨年度に取り扱った接触回転系で生じる多角形化現象を解明するための時間遅れ系モデルおよびブレーキ鳴きを模した非対称系モデルに加えて,非等方性軸および異方性支持軸受を有する弾性回転軸系などで見られるような非対称係数励振モデルで生じる自励振動現象をも対象として取り扱い,新型複素モード解析法および低次元化法を適用した.また,発生メカニズム解明のために不可欠な特性根,散逸エネルギーおよび励振エネルギーなどの近似値をモード別に高精度で推定する手法を開発し,実モード解析法を適用した場合と比較して飛躍的な精度向上を実現した.さらに,本手法を利用することによって自励振動に対する動吸振器の動作メカニズムの解明と最適設計法の開発を推進した.ただし,時間遅れ系および回転軸系では本手法の前提である励振項が微小という仮定が必ずしも成り立たたず,十分な計算精度が得られないことがある.今後は,その影響を適切に評価することによって解析精度を向上させるための改良が必要である. (2)非線形振動研究班:昨年度に引き続き種々の大規模機械・構造物に対して新型複素モード解析に基づくアルゴリズムを適用し,計算コストと計算精度の向上に努めた.具体例として,ジャイロ効果による非対称性を考慮した回転軸系や整合質量行列を用いて導出された平板などがガタ等の強非線形ばねで局所的に支持された大規模系を対象とし,昨年度の修正により大幅に強化された低次元化法を適用した.その結果,実際問題で現れる多種多様な大規模非線形モデルの周波数応答解析,安定判別および過渡応答解析に対して本手法が高い実用性を有していることを確認した. 一方,本手法の解析精度は,低次元モデル導出の際に消去せずに残すべきごく少数の支配的モードを如何に適切に選定するかに大きく依存する.支配的モードの合理的な抽出法の開発が本手法に残された理論的課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)自励振動研究班:これまでの研究に引き続いて,様々なタイプの自励振動現象に対して新型複素モード解析法を順次適用する.特に,現時点では十分な計算精度が得られていない時間遅れ系および回転軸系において励振項の影響が大きな場合に対して,散逸エネルギーおよび励振エネルギーのモード別推定法の導出過程を徹底的に見直すことによってその改良を図る.また,これらの研究を踏まえて多自由度線形自励振動系に対する統一的かつ体系的な解析手法(エネルギー的見地に基づく発生メカニズムの解明手順)を確立する.最終的には,エネルギーのモード別推定法を利用して外部減衰の付加,構造変更による固有振動数と固有モードの調整,動吸振器の設置などの対策を適切に組み合わせることによって,自励振動の発生を完全に防止するための合理的な対策を立案する手順の確立を目指す. (2)非線形振動研究班:これまでの研究では低次元化を行わない物理モデルの解析結果と低次元モデルの解析結果とを比較することによって,本低次元化法の有効性を検証して来た.その結果,本低次元化法の有効性が十分に確認できたので,今後は物理モデルの計算が不可能な大規模自由度系に対してFEMモデルと本低次元化法とを有機的に結合することによって,非線形振動解析システムの汎用性の拡充に努める.さらに,種々の非線形構造物を対象として低次元モデルの計算精度に及ぼすモードの影響を精査することや,実拘束モードを用いた低次元化法で有効性が確認されている計算精度の事後評価法などを手がかりに,支配的モードの合理的な抽出法の確立を目指す. (3)できればいくつかの基本的なモデルに対応する実験装置を作製して,検証実験を実施する.さらに,本研究課題の将来的な発展に備えて,新型複素モード解析法をエネルギー変換機構の特性や非線形特性を実験的に同定する際の基盤的ツールとして利用する手法の開発に着手する.
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Research Products
(7 results)