2019 Fiscal Year Annual Research Report
Orientation control of piezoelectric thin films and their application to functional micro-devices
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17H03207
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
神野 伊策 神戸大学, 工学研究科, 教授 (70346039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
譚 ゴオン 神戸大学, 工学研究科, 特命助教 (00806060)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 圧電 / 薄膜 / 結晶構造 / マイクロデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、圧電薄膜の圧電性の特徴およびその起源を明らかにすることで、圧電薄膜の圧電定数の向上に向けた指針を明らかにすると共に、その特徴を利用した新しい圧電マイクロデバイスの創出を目的としている。 2019年度はスパッタ法でPZT薄膜およびKNN薄膜を作製し、その圧電性の評価を行うと共に、PZT圧電薄膜を用いた音響デバイス開発に取り組んだ。 RFスパッタ法を用いてPt/Si基板上にMPB組成のPZT圧電薄膜およびK/Naが約50/50のKNN圧電薄膜を成膜し、その巨視的圧電性および圧電効果による結晶構造のひずみの関係を調べた。特に今年度はPZT圧電薄膜はSi基板上に成膜したc軸配向エピタキシャル薄膜の成長に成功し、その圧電性の特徴を放射光XRDにより詳細に調べた。エピタキシャルPZT薄膜の逆格子像を観察した結果、明瞭なスポット構造が確認でき、良好なエピタキシャル成長が確認できた。 一方、非鉛圧電薄膜の圧電定数向上を目的としてKNN圧電薄膜の組成最適化に取り組んだ。今年度は特にK/Na比の最適化を行い、Naの添加量依存性を調べた。KNN薄膜の成膜は3元RFスパッタリング装置を用い、装置内に設置したKNN (K/Na=50/50)焼結体ターゲットに加え粉末状のNa2CO3ターゲットを同時スパッタし、Pt/Ti下部電極付きのSi基板上に約600℃の基板温度で成膜を行った。添加量は各スパッタのパワーを変えることによって調節した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで主に圧電薄膜の圧電性評価およびその圧電特性向上に重点を置いて研究を行ってきた。特に今年度はSi基板上へのPZT圧電薄膜のエピタキシャル成長に成功し、その詳細な圧電性評価を実施している。逆圧電効果による圧電ひずみをSPring-8(ビームライン: BL46XU)の放射光X線(波長:0.1 nm)を用いて観察した。その結果、c-ドメインとa-ドメインに対応するPZT 004およびPZT 400ピークで強度の変化が見られ、ピーク強度比から見積もったc-ドメインの割合(Vc)は、電圧の大きさや向きに従って可逆的に変化していることが確認された。組成依存性および正圧電効果と合わせた評価を行うことにより、PZTエピタキシャル圧電薄膜の圧電効果の詳細が明らかにできる。 作製したKNN薄膜の圧電特性は、カンチレバー法による逆圧電効果の測定により圧電定数e31,fを求めた。今回作製したNa添加KNN薄膜は添加なしのKNN薄膜と比べてパイロクロア相が抑制されていることがわかった。またFig. 3に圧電定数e31,fの電圧依存性を示す。Na添加KNN薄膜はドープなしのKNN薄膜と比べて約2倍に圧電定数が向上した。このことは、ペロブスカイトのAサイトの欠損が補われたことによると考えられる。 圧電薄膜を用いたデバイス開発も平行して実施している。これまで取り組んできたエナジーハーベスターに加え、今年度は特にPZT圧電薄膜を用いたマイクロスピーカーおよび圧電薄膜トランスの設計および試作を行った。両デバイスともFEMで構造設計を行い、決定した構造を元に素子試作を継続している。現在ほぼ素子試作が完了しており、素子特性の評価を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究計画として、以下の項目を予定している。 1.KNN圧電薄膜の組成および膜構造最適化による圧電性向上: エピタキシャル成長を行い、かつ膜組成を変調させた構造を導入する。 2.PZTエピタキシャル薄膜の圧電性評価: 組成依存性を明らかにすると共に正圧電特性の評価系を構築、正圧電効果と逆圧電効果の関係を明らかにする。 3.圧電マイクロデバイスの試作、評価: 音響デバイスとして圧電マイクロスピーカー、また電圧変換素子として圧電薄膜トランスの試作を継続し、その評価を行う。得られた結果を元にFEMによる素子設計を再度実施し、課題会の解決を図る。
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