2017 Fiscal Year Annual Research Report
Pioneering research of magnetic levitation focused on the states and properties of components
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17H03213
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大路 貴久 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (30334709)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 磁気浮上 / 態 / 性状 / 磁気機能性流体 / 車上一次式 |
Outline of Annual Research Achievements |
【構成要素の態】制御電磁石として棒状(I型)電磁石を使用し,2種類の磁気機能性流体(磁性流体,MR流体)を被対象物とした磁気浮上実験を試みた。磁性流体は磁場下でも磁場方向に流動性を維持するが,MR流体は粒径が大きく磁場下でクラスタを形成し半固体となる。まず,磁性流体に対する磁気浮上実験として,一般的な磁気浮上環境(レーザ変位センサ(ZX-LT030),DSP,パワーアンプ,I型電磁石(全長80 mm,コイル外径20 mm,巻数1500回))を構築した。シャーレに入れた磁性流体(MSGP50C)に対し,電磁石下端から十分な距離を取り,磁場を印加することで磁性流体を吸い上げた。能動制御(PID)により磁性流体は円錐状に隆起し頂点が位置決めされた状態で保持された。これは磁性流体特有のスパイク現象とは異なる。MR流体(E-600)に対しても同様の実験環境を用意し磁気浮上実験を行った。MR流体は磁場印加時において制御方向が長軸となる楕円体を形成し吸着した(FASTCAM Mini AX50にて撮影)。この結果,液滴の位置検出方法の再検討が必要となった。 【構成要素の性状】表面性状による磁気浮上装置の挙動への影響を調べるために,任意形状の被対象物に対応可能な車上一次式装置を提案した。この装置には4個の制御電磁石(磁極数8)を搭載されており,各電磁石がヒンジで台座に接続され様々な被対象物に磁極面が向くよう工夫されている。本年は凹凸のある被対象物として鋼製ロープ(直径40 mm,ピッチ240 mm,比透磁率100,1心線6素線)を想定し,進行方向の周期的な凹凸による浮上力脈動への対応について電磁界解析(COMSOL)を実施した。その結果,ギャップ2 mmに設定した状態で,平均浮上力60.3 N(自重の約3倍),浮上力脈動0.4 N(0.6%)に軽減可能な電磁石配置を導き出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,「構成要素の態(液体や半固体)」,「性状(凹凸,表面粗さ等)」に着目した磁気浮上研究を提案しその基盤技術の確立を目的とする。平成29年度の当初予定は,①【構成要素の態】磁気機能性流体浮上用ペン型磁気浮上装置の開発と,液滴浮上実験による非接触浮上状態の確立および,液滴の挙動・変形等の評価,②【構成要素の性状】制御電磁石等を搭載した浮上移動体の設計と製作,磁性平板下での磁気浮上状態の確立,種々の性状を有する磁性平板に対する浮上状態への影響評価,であった。 ①では,制御電磁石および制御周辺環境を整備し,磁性流体の液滴浮上実験を実施した。シャーレ内の磁性流体の円錐状引上げと位置決め制御に成功したものの,液滴状態を得ることが困難であった。ここで一旦,磁性流体から粘度の高いMR流体に変更し,制御開始前から液滴状態を維持し浮上実験を実施した。MR流体は磁場下において粒子のクラスタ形成によって半固体となることから,浮上状態の確立への近道と思われたが,制御時の振動変形が生じ非接触浮上状態が得られなかった。磁性流体でも同様に液滴の形成を試みたが,界面活性剤の影響により液滴が接地面から引き剥がせない問題が生じた。実験時の諸現象はいずれも非常に重要であり,あと一歩の工夫で液滴の非接触浮上が達成可能な状況に来ている。 ②では,種々の被対象物形状に対応可能なフレキシブル性を有する車上一次式磁気浮上装置の構造設計を行った。これは交付期間中の実施項目である平板,円柱,凹凸,表面・内部性状の全てに対応可能である。事前のFEM解析では,極例として円柱状かつ凹凸を有する鋼製ロープを被対象物とすることで,磁気浮上装置の十分な発生力と脈動軽減に対する有効性を保証した。現在は実機製作と制御パラメータの導出段階にあり,実験では解析とは異なり,磁性平板下での浮上状態の確立から順を追って実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
【構成要素の態】各種磁気機能性流体の非接触浮上を早急に実現する。現状の問題として,磁場下での液滴の生成方法,液滴のセンシングと浮上制御時の振動変形がある。前者については,撥液性を有する物質を容器に塗布する等の改善策により,制御開始前後に関係なく液滴状態が維持される工夫をする。後者については,制御系のサンプリング時間(ST),液滴寸法,比重,粘度が関係すると考えられ,これらのパラメータを調整し振動変形が生じないよう工夫をする。また,位置検出方法も見直す必要があり,カメラ画像による液滴の重心検出等,液滴表面の振動変形に依存しない位置信号の利用も検討課題である。これと並行して,磁気機能性流体の非接触浮上搬送試験が実施可能な環境を整備する。具体的には2次元平面駆動システムを構築し,制御電磁石を可動部に設置し,産業システムでの搬送動作(例えばスカラロボットによる高速移動)に近い形で,磁気浮上状態の安定性評価等を行う。 【構成要素の性状】FEM解析により,提案する車上一次式磁気浮上装置が十分な浮上力と脈動軽減条件を有することが保証されている。従って早急に装置を完成させ,制御パラメータ導出,浮上実験を実施し非接触浮上状態を確立する。提案装置は4個の制御電磁石を搭載しており,電磁石1個あたり1個の変位センサを設置し姿勢制御を行う。FEM解析では電磁石の設置位置で浮上力脈動の軽減を示したが,さらに能動的なアプローチとして,被対象物の性状情報検出用センサおよび浮上体速度センサを別途搭載し,性状由来の振動を予測し,移動速度から求まるディレイを考慮して制御する。この実験により性状に起因する浮上体脈動の除去を試みる。なお,被対象物は,均質な磁性平板,性状変化を持つ磁性平板,の順とし,FEM解析で対象とした鋼製ロープは特殊な例であるため,磁性円柱での浮上実験ののちに実施する予定である。
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