2018 Fiscal Year Annual Research Report
Pioneering research of magnetic levitation focused on the states and properties of components
Project/Area Number |
17H03213
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大路 貴久 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (30334709)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 磁気浮上 / 磁気機能性流体 / 態 / 性状 / 車上一次式 |
Outline of Annual Research Achievements |
【構成要素の態】昨年度,構築した磁気浮上システム(変位センサ(ZX-LT030),DSP,パワーアンプ,I型電磁石)を使用し,シャーレに入れた磁性流体の円錐状引上げ位置決めに成功している。円錐形状の磁性流体から液滴1滴を得るために,シャーレ内流体量と吸引位置決め制御の関係性を調査した。シャーレ面積を一定とし液量のみを減少させ,究極的には円錐状磁性流体がそのまま液滴となり引き上がることを期待したが,結果は不可能であった。この原因として,磁性流体の表面張力と粘性,制御時の磁気勾配に基づく液滴の変形,シャーレとの粘着性(ぬれ性)が考えられた。そこで,磁性流体(G-2050, 15 mg)を予め撥油シート上に1滴置き,液滴上部をセンシングしながら制御実験を行った。磁性流体液滴は卵形に変形しながら非接触浮上状態が確立した。現在,高速度カメラによる安定浮上時の液滴の重心及び挙動検出,磁性流体浮上システムのモデル化を実施中である。 【構成要素の性状】表面性状による磁気浮上装置の挙動への影響を調べるための車上一次式装置を製作した。この装置には4個の制御電磁石(磁極数8)とそれに同数の変位センサ(ZX-EV04)が搭載されるが,手順として,2個の制御電磁石によるギャップ制御,ピッチ角制御を実施した。制御電磁石は,磁極面を水平に保ちながら回転ヒンジにより回転できるよう工夫してある。鉄板(厚さ5 mm)に銅板(厚さ0.5 mm)を貼付した天板の下で安定浮上状態を実現した。さらに,4個の磁極が直線状に並ぶ状態から,両電磁石を回転させハの字に設置した場合の浮上実験を実施し,プラント記述を変えなくても回転角15度まで安定性が保たれることを示した。現在,高分解能表面性状センサ(キーエンス,CL-P007)を搭載し,性状と浮上状態との関係を導出するための基礎実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,「構成要素の態(液体や半固体)」,「性状(凹凸,表面粗さ等)」に着目した磁気浮上研究を提案し,その基盤技術の確立を目的とする。平成30年度の当初予定は,①【構成要素の態】磁気機能性流体用磁気浮上装置による磁気機能性流体の非接触浮上の実現,液滴寸法,材料の物理特性と挙動・変形等の関係調査,磁気機能性流体の非接触浮上搬送のための実験環境整備,②【構成要素の性状】制御電磁石等を搭載した車上一次式浮上移動体の製作と磁気浮上状態の確立,被対象物(対向面)の性状情報検出用センサによる性状由来の振動評価と制御による振動除去,であった。 ①では,実績概要のとおり,I型電磁石を使用した磁気浮上システムによる,磁気機能性流体の液滴位置決めに成功している。また,高速度カメラ情報をもとに,液滴形状から寸法や質量を算出し,液滴変形に関する考察とモデル化を実施している。従って,液滴の非接触かつ安定な浮上状態の実現は大きな進展である。一方,磁気機能性流体液滴の浮上搬送試験用の実験環境は整備出来ていない。当初予定していたスカラロボットでの高速水平運動は,リニアステージ(2台)により代替し,将来的に,電磁石間の液滴の渡り実験にも転用できるように現在,環境整備を進めている。 ②では,実績概要のとおり,製作した車上一次式磁気浮上装置による天板下での安定浮上状態が確立した。2個の電磁石を搭載した装置で,電磁石の設置角を種々変更すると,浮上挙動への影響が顕著となる。これを新たな小課題として研究を進める必要が出てきたため予定がやや遅れている。また,性状情報検出用センサが車上に搭載されれば,浮上や移動での振動がそのまま性状センサの出力値に重畳されることになる。性状由来の振動評価・除去にはこのような困難さを含むことから,信号処理方法と手順に注意しながら慎重に調査する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
【構成要素の態】まず,現状の磁気浮上装置において,非接触浮上状態で液滴の変形が存在することから,通常の鉄球磁気浮上のような一質点表現とは異なる液滴のための新たなモデル表現が必要となる。実験およびシミュレーションにより提案したモデル表現の妥当性を評価する。 当初は,シャーレ中の流体溜まりから液滴1滴を引き剥がして磁気浮上状態を確立する予定であった。現状は,液滴を予め1滴準備し,その1滴を非接触浮上させている。産業応用を見据えた場合,磁性流体の連続供給・連続搬送が望ましく,連続供給方法を検討する必要がある。 液滴の浮上搬送には,リニアステージによる磁気浮上システムの水平移動を検討しており,その筐体部分を製作中である。2台の各リニアステージに磁気浮上システムを搭載し,将来的には液滴の渡り試験も実施可能な装置とする予定である。 【構成要素の性状】現時点で2個の制御電磁石を搭載した車上一次式磁気浮上装置が完成しており,4個の制御電磁石と搭載した装置もほぼ完成している。これらの装置の特長は,ヒンジを用いて制御電磁石を自由に動かせる点にある。従って,制御電磁石の磁極面方向を考慮したシステムのモデル化が重要となる。2個搭載タイプでは,制御電磁石の回転角度が浮上挙動に影響を与えることを示したが,回転角度フリーなヒンジを用いれば,吸引対向面側が任意曲率半径を持つレールでも自在に移動できる可能性がある。 対向面性状を性状センサで検出し,浮上制御に反映させる。その際の推進力は,制御電磁石自体に移動磁界を生成・制御しLIMとして動作させる。なお,励磁条件により,2個搭載タイプでは直線(曲線)移動を,4台搭載タイプでは,移動+回転を実現可能である。種々の表面性状を持つ対向面の下で,浮上体の挙動を評価し,性状データと突き合わせることで,不均質性があっても安定性を補償する浮上制御を実施する。
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