2019 Fiscal Year Annual Research Report
Pioneering research of magnetic levitation focused on the states and properties of components
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17H03213
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大路 貴久 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (30334709)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 磁気浮上 / 態 / 磁気機能性流体 / 対向面形状 / 表面性状 / 多関節 |
Outline of Annual Research Achievements |
【構成要素の態】テーパー状の磁性先端を持つ棒状制御電磁石と透過型レーザ変位センサを入出力部とした簡便な磁気浮上システムを使用し,比較的高粘性の磁性流体(G-2050,5,000 mPa.sec)の1滴(15 mg~25 mg)を撥油シートに置いた状態から,始動動作と浮上挙動を高速度カメラで詳細に調べた。その結果,浮上直前の磁性流体自体の伸長が浮上後の収縮によるリンギングを誘発すること,最終的には伸縮変形が増大することなく安定浮上できることを示した。液滴体積の増大に伴い液滴頂点の曲率半径が減少することから,体積を変数とする曲率半径が磁気力式のパラメータに含まれることを示した。一方,液滴の連続供給のための方策として,磁性流体液溜まりからの液滴生成,毛管現象を利用した磁性流体の引上げ,非相溶性液体中(glycerin)からの磁性流体液滴の引上げを遂行した。いずれの実験においても磁性流体の表面張力が原因で液滴のみ分離されることはなかった。浮上液滴の搬送試験では,制御電磁石およびセンサの水平運動に対して液滴が浮上状態を維持しきれない状況であり改善が必要である。 【構成要素の性状】曲率半径rの異なる鉄平板軌道(吸引面)を作成し,車上一次式装置(2-EMタイプ(磁極間距離66 mm,4磁極を等間隔直線配置))の懸垂浮上実験を行った。制御電磁石と車体を繋ぐ半固定ヒンジにより,磁極を軌道に沿わせることでr =175 mm以上での安定浮上が確認された。また,鉄平板(吸引面)に性状不均一箇所を作製し,その影響を除去する浮上移動実験を実施した。駆動には車体に搭載した2台の送風機を使用した。進行方向に設置された性状検出用センサの位置と浮上体の移動速度の情報に基づき,性状不均一部分が制御電磁石に差し掛かる際に反転信号を重畳することで,非接触懸垂浮上状態での移動が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度の当初予定は,①【構成要素の態】磁気機能性流体の諸特性(体積,粘度,表面張力等)を踏まえた吸引形磁気浮上系のモデル化と妥当性検証,および,液滴搬送のための環境構築(アレー化や二次元平面移動等)。②【構成要素の性状】吸引面性状検出用センサを搭載した車上一次式磁気浮上移動体に対する,性状由来の信号の評価,および,性状不均一の影響を受けない非接触浮上・平面移動の確立,であった。 ①では,磁気機能性流体の体積を変数とする曲率半径が磁気力式に影響を与えることを定性的に示した。しかし,物理特性に基づいた評価は未実施であり至急調査する必要がある。一方,産業利用を目指す場合,浮上液滴の二次元搬送やアレー化による多滴同時搬送が考えられ,今年度当初目的に設定したが,所望の液滴自体を自動生成する手法が確立されなければ産業利用が見込めない。そこで,実績概要に記載した液滴の連続供給のための基礎試験(毛管現象による磁性流体引上げ,非相溶性液体からの磁性流体液滴の引上げ)を優先した。進捗状況は歩進となり,現状を踏まえると最終年度でアレー化には至らないが,リニアステージによる浮上移動システムも整備しており,研究ベクトルは正しく進んでいる。 ②では, 2個の電磁石を搭載した装置(2-EMタイプ)で,性状検出用センサも搭載し移動実験を行った。当初の狙い通り,性状由来のセンサ信号に対し,その反転信号を制御入力とすることで,懸垂浮上状態を維持しながら不均一性状部分を通過することが可能となった。吸引面の性状不均一は,センサ信号のみが乱れる設計となっており磁気特性は均一である。今後は磁気特性にも不均一を与え,吸引力変化を伴う表面での移動実験を試みる。4-EMタイプでの二次元平面移動や円筒下での運動への拡張も期待できる。以上より,②については概ね良好に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
【構成要素の態】磁気機能性流体液滴に対する浮上始動・非接触浮上の技術確立を受けて,種々の流体の物理特性に基づいた浮上特性を網羅的に評価する。また,産業応用を見据え,「液滴前」と「浮上後」のシステムを構築し実証実験を行う。具体的には,液溜まりからの液滴の連続供給(例えば,磁気力以外のアクチュエーションによる液滴生成)を実施する。また,浮上後の搬送実験として,制御電磁石およびセンサの入出力部,さらには浮上を確立した液滴の全てを水平移動させる装置を用いて浮上移動状態を評価する。複数の入出力部によるアレー化や液滴の電磁石間渡りを目指しながら,表出する問題を克服し,最終的には磁気機能性流体の連続供給・連続搬送の一連の動作を実現する。 【構成要素の性状】磁気浮上装置は2-EMタイプと4-EMタイプがある。平板,円筒等,様々な吸引面に対し,吸引面ベクトルと磁極面ベクトルが一致するように変形できる設計となっている。またこれらの各場面に対応したモデリングが完了している。そこで,装置各所の半固定ヒンジを自由ヒンジに置換し,形状が変化する吸引面下での浮上移動実験を行う。また,吸引面性状について現時点では,導電性に対する不均一性状下での懸垂浮上移動が実現できており,制御手法も見出している。今年度は,吸引面の磁気特性に不均一を与えた状態での浮上移動実験を試みる。また,これらの性状不均一に対しさらなる懸垂浮上・安定走行を実現させる。 最終年度にあたり,磁気機能性流体に対する磁気浮上技術,吸引面形状・性状に対応可能な車上一次式磁気浮上技術に対し,それぞれ,何ができて何ができないのかの限界点を調査し纏めることで,本申請課題の当初目的を達成する予定である。
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