2017 Fiscal Year Annual Research Report
室温テラヘルツ利得をもつ半導体超格子の構造精巧化と外部共振器制御
Project/Area Number |
17H03232
|
Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
鵜沼 毅也 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (20456693)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉山 泰宏 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (50707312)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 半導体超格子 / テラヘルツ |
Outline of Annual Research Achievements |
近赤外の広い範囲で中心波長を変化させられるフェムト秒パルスレーザーを本補助金によって導入し,フェムト秒パルスをトリガーとして多様な半導体超格子のテラヘルツ応答を評価できる温度可変テラヘルツ放射分光システムを構築した。この分光システムにおいては,研究代表者が従来所有していた分光システムで対象にすることが困難であった構造までGaAs系超格子を網羅し,超格子構造を精巧化しながら低温から室温以上までの範囲でテラヘルツ電磁波に対する増幅作用(利得)をより系統的に調べることが可能になった。
本年度は,直流電圧を印加したGaAs系超格子のテラヘルツ利得を摂氏47度まで観測することに成功し,デバイス動作においてある程度の発熱を想定しても室温付近のテラヘルツ利得特性に大きな影響がないことを明らかにした。さらに,スペクトル線幅が摂氏-193度からの温度上昇に対してどのように増加するかを詳細に測定し,電子の微視的散乱メカニズムに基づく理論計算と比較することで,格子振動(フォノン)による電子散乱の寄与を定量的に調べた。その結果,縦光学フォノンの吸収を伴う電子散乱過程がスペクトル線幅の温度依存性を支配していることが判明し,その物理的理由を直流電圧印加下の電子波動関数の空間分布に基づいて解釈することができた。これは,超格子構造の精巧化を進める上で本質的な知見である。
さらに,半導体超格子の積層方向に直流電圧を印加するための電極構造と両立しながら,超格子層と相互作用することができるような外部共振器を設計・試作した。現在,外部共振器の試作品の基礎評価を進めており, GaAs系超格子と組み合わせる上での最適化を来年度も継続して図ることを予定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GaAs系超格子を網羅する温度可変テラヘルツ放射分光システムを予定通りに立ち上げ,期待通りのパフォーマンスを実現している。室温テラヘルツ利得をもつGaAs系超格子の構造精巧化について新たな知見を得ることができ,その知見の一部はすでに専門誌へ論文として投稿したり国際学会の招待講演で報告したりする水準に至っている。さらに,超格子試料と組み合わせる外部共振器の準備も整いつつある。以上のことから,目的達成に向けて研究が順調に進展していると評価される。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度に得られた微視的計算プログラムおよび物理的理解に基づいて,複素伝導度スペクトルを理論予測しながら超格子の構造精巧化を進める。温度可変テラヘルツ放射分光システムを駆使して,新たな構造の優れたテラヘルツ利得特性を室温近傍で明らかにしていく。さらに,準備を進めてきた外部共振器を超格子試料と組み合わせ,テラヘルツ利得の制御に本格的に着手する。
|