2018 Fiscal Year Annual Research Report
室温テラヘルツ利得をもつ半導体超格子の構造精巧化と外部共振器制御
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17H03232
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
鵜沼 毅也 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (20456693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉山 泰宏 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (50707312)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 半導体超格子 / テラヘルツ |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体超格子の構造精巧化の観点から,積層構造に由来して形成される複数のエネルギーバンド(ミニバンド)が直流電圧の下で強く相互作用する状況を調べ,テラヘルツ電磁波の増幅作用(利得)が孤立ミニバンドにおける電子のブロッホ振動から生じるような通常の状況と比較した。伝導バンドにおける第一ミニバンドと第二ミニバンドの間のエネルギーキャップ(ミニギャップ)が非常に狭い超格子構造をGaAs系材料で設計・作製し,摂氏-193度で積層方向に直流電圧を印加することによって,両ミニバンドを強く相互作用させる実験条件を用意した。昨年度に構築した温度可変テラヘルツ放射分光システムを用いて,フェムト秒光パルスで電子を第一ミニバンドの底付近に作り,印加電圧下で電子がブロッホ振動する際のテラヘルツ放射波形を測定した。その結果,ブロッホ振動の初期位相が通常とは90度だけシフトしていることが判明した。さらに電子状態の数値的シミュレーションにおいて,通常は印加電圧下で空間的に局在(ワニエ・シュタルク局在)する電子の波動関数が,強いミニバンド間相互作用によって空間的に著しく広がる様子を示した。波動関数の空間的広がりに基づいてブロッホ振動の物理的モデルを適切に選択すると,初期位相が90度シフトするという実験結果をよく説明できることが分かった。
上記の内容は,テラヘルツ利得の発生に本質的なブロッホ振動の初期位相が波動関数の局在性によって決まることを意味し,構造精巧化における新たな条件を提示している。その他に,テラヘルツ放射分光における時間原点決定法を因果律に基づいて拡張すること,印加電圧下で電子状態を評価するための光電流スペクトル測定系を構築すること,およびGaAs系超格子試料にフォトリソグラフィーで外部共振器を組み込むこと,を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続いてGaAs系超格子の構造精巧化を進める過程で,テラヘルツ利得の発生条件について新たな物理的知見を得ることができ,成果を専門誌上の原著論文や国際学会の招待講演で報告することができた。さらに,GaAs超格子試料に外部共振器を組み込むことにも成功した。以上のことから,目的達成に向けて研究が順調に進展していると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
テラヘルツ利得の発生条件について得られた新たな知見をGaAs系超格子の試料設計に反映させ,構造精巧化の最終段階に入る。さらに,超格子試料に外部共振器を組み込んだ場合の効果を温度可変テラヘルツ放射分光システムによって検証しながら,室温テラヘルツ利得の制御を進めていく。最終年度は3年間の研究成果を体系的にまとめることにも注力する。
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Research Products
(5 results)