2018 Fiscal Year Annual Research Report
Scientific principle elucidation of bulk spin orbit torque and its application for spin devices
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17H03240
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
粟野 博之 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40571675)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バルクスピン軌道トルク / 電流磁壁駆動 / 磁性細線 / 希土類・遷移金属合金 / スピンホール効果 / ジャロシンスキー守谷相互作用 / 磁壁移動速度 / レーストラックメモリ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度のバルクスピン軌道トルクの研究成果を共同研究先のシンガポール大学と共同でNature Materialsに投稿し、今年度論文が掲載され、バルクスピン軌道トルクへの認知が広がった。そこで、今年度は更にバルクスキン軌道トルク(SOT)磁性細線の電流磁壁駆動に関わる詳細な検討を行い、以下の3点の研究成果を得た。 ①GdFeCo/Pt磁性細線におけるSOTが作用するGdFeCo層の膜厚について検討した。界面効果とは通常膜厚数nmであるが、今回は80nm, 200nm, 500nmの磁性細線を作成し、これらの電流による磁壁駆動現象を詳細に調べた。通常、磁性層が薄い場合には主にSOTが磁壁の動力源となり磁壁は電流方向に移動する。一方、磁性層が厚くなるとスピントランスファートルク(STT)が主な磁壁駆動力となって磁壁は電子方向(電流と逆向き)に移動するので、磁壁の移動方向によってどの駆動力が支配的かを識別できる。しかし、GdFeCo膜厚80nm, 200nm, 500nmの3種類の全ての磁性細線において、磁壁は電流方向に動いた。したがって、希土類遷移金属合金の場合には、現在得られている電流磁壁駆動メカニズムだけでは説明できない。そこで、Pt層をSiN絶縁層に変えてGdFeCo層厚200nm, 500nmの磁性細線を使って同様の実験を行った。Pt層がないのでSOTは考える必要がない。驚いたことにどちらの磁性細線においても磁壁は電流方向に動いた。すなわち、STTで磁壁が電流方向に動く初めての結果を得た。 ②薄いGdFeCo層と薄いPt層からなる積層膜において、このヘテロ界面におけるジャロシンスキー守谷相互作用の影響を磁気光学効果のスペクトル分析で調べた結果、その効果と思われる結果を得ることが出来た。 ③磁性細線に電流を印加するとジュール発熱が生じる。そこで、ナノMDSにより発熱測定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
膜厚が10nmと厚いTbCo層と重金属Pt層からなる磁性細線では、磁壁がスピン軌道トルク(SOT)により電流方向に移動する。常識的に界面効果であるSOTが磁性層に及ぶ範囲はせいぜい1nm程度と考えられていたが、この実験結果は界面効果にしては厚すぎる。そこで、Tb層とCo層の磁気モーメントが互いに逆向きに結合していることを利用して、Pt層からスピンホール効果によって磁性層に流入するスピン偏極電子がTb層で右回りのSTTをCoでは左回りのSTTで回転するため、磁性層奥深くまでスピン偏極電子のスピンは方向を保ったまま侵入出来ると考えた。磁性層がCoだけの磁性細線では上記スピン偏極電子は一方向に回転し続けるのでSTTは作用しなくなる。これをバルクスピントルクのメカニズムとしてNature Materialsに投稿し、今年度論文が掲載された。 また、更にこの詳細な検討を行うために、極めて極端に厚い200nm, 500nmのGdFeCo磁性細線を作成して電流磁壁駆動実験を行った結果、磁壁は電流方向に動いた。大変意外だったのは、重金属Pt層とのヘテロ界面があってもなくても磁壁の移動方向が電流方向だった点である。これだけ厚いと、Nature Materialsに採択された論文のメカニズムだけでは説明ができない。したがって、これは新たな現象であり新たなメカニズム構築が必要となる。特に、電流に対する磁壁駆動に必要な最小電流密度や、磁壁移動速度の電流密度依存性の変化など、Pt層有り無しで全く違いがみられなかった。一つの可能性はフェリ磁性体の場合には特有のSTTによって磁壁が電流方向に動くことである。フェロ磁性体とは異なる点を基に新しい磁壁の電流駆動モデルを考えたい。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、フェリ磁性体を利用した磁性細線において、磁性層厚が厚くても磁壁が電流方向に動く新たなSTTメカニズム構築を行う。このモデル検証に必要な材料や積層構造を変えた実験も同時に進める。一方、パルス電流で磁壁移動する際の磁性細線のジュール熱発熱の影響も明らかにする必要がある。そこで、ナノMDSの高速アンプによってこの熱レスポンスの測定に挑む。ただし、ナノMDSにおける測定系において、測定ヘッドの熱容量やヘッドコンタクト面での熱抵抗など、測定系の検証も重要であり、この検討も行う。また、光が透過できる薄さのGdFeCo層とPt層からなる磁性細線ではPt由来のSOTが効いているはずで、このジャロシンスキー守谷相互作用(DMI)の大きさを確認する必要がある。これまでこの同定に電流印加や磁界印加の方法が試されたが、報告値にはまとまりがない。そこで、光を使った方法が試され始めている。我々は光の電場が電子を光の周波数で振動させることにより発生する磁気光学効果のスペクトル分析からDMIの影響を探ることに挑戦している。最近、磁気光学効果の計算で求めたスペクトルと実測のスペクトルに差があることを見出した。この差異がDMIの影響かどうか明らかにすることに挑戦する。更に、本研究成果の出口としてナノインプリントプラスチック基板にバルクスピン軌道トルクを利用した磁性細線を用いてIoT向けのデバイス試作にも取り組む。バルクスピン軌道トルクは磁性層が厚くても利用できるため、磁気ボリュームを利用したデバイス応用が期待できる。加えて、磁性細線上に磁壁を作成し、この磁壁部分にレーザーを照射し、大きな温度勾配を作ることで大きなスピン流を生み出す実験も行う。これにより良質で強力なスピン流発生源試作にも取り組む。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Long spin coherence length and bulk-like spin-orbit torque in ferrimagnetic multilayers2019
Author(s)
J. Yu, D. Bang, R. Mitshra, R. Ramaswamy, J. H. Oh, H. J. Park, Y. Jeong, P. V. Thach, D. K. Lee, G. Go, S. W. Lee, Y. Wang, S. Shi, X. Qiu, Hi. Awano, K. J. Lee, H. Yangi
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Journal Title
Nature Materials
Volume: 18
Pages: 29-34
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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