2017 Fiscal Year Annual Research Report
MOCVD法による遷移金属ダイカルコゲナイドの成長技術開発とフォトニクス機能探索
Project/Area Number |
17H03241
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
佐久間 芳樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (60354346)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池沢 道男 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30312797)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 遷移金属ダイカルコゲナイド / 層状物質 / MOCVD / 量子閉じ込め / 励起子 |
Outline of Annual Research Achievements |
H29年度は、MOCVD方式に基づくTMDC薄膜成長の基礎技術の確立と適用材料範囲の拡張を目的に以下の研究を進めた。 まず、MOCVD法に適したMoやWなど遷移金属元素の原料プリカーサーを見出すため、イミド・アミド系化合物とオキシクロライド系化合物の2種類の原料に着目し、成長様式や膜質の比較を行った。特に、MoとWのイミド・アミド化合物は室温で液体であり、適度な蒸気圧を持つ。そのため、MOCVD成長への適用しやすさが期待できる。 手始めに、MOCVD装置内で600~700℃に保ったSiO2基板上に、N2やH2キャリアガスとともにWイミド・アミドとH2Sを供給してWS2の成膜を試みた。その結果、顕微ラマンによる評価で、層状に配向したWS2の多層膜を確認した。しかし、原料供給量や成膜時間を制御して、直接遷移型バンド構造が期待される単層WS2を成長しても顕微PLでの発光は観測できなかった。XPSでWS2膜の元素分析を行ったところ、膜内にNやCの混入が認められた。イミド・アミド化合物の分子構造内に含まれるNやCが未分解のまま不純物として取り込まれていることが膜質劣化の原因として考えられる。 一方、Moのオキシクロライド系化合物であるMoO2Cl2とH2Sを使ったMOCVDでもMoS2の層状成長を確認し、単層膜からは極めて良好なPL発光を確認できた。MoO2Cl2分子内にはCやNが含まれておらず、OとSも同族元素で置換されやすいことが高品質のMoS2成長の理由として考えられる。さらに、WOCl4とH2Sを使ってWS2の2次元成長が可能であり、単層膜から極めて強いPL発光を確認した。 以上のように、MoやWのオキシクロライド系原料を使ったMOCVD法の開発に成功し、その技術的な有用性を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MoO2Cl2やWOCl4など遷移金属のオキシクロライド系原料ガスを用いる新たなMOCVD成長法の開発に成功し、高品質のMoS2やWS2の2次元単層膜が形成できることを実証した。本手法は遷移金属ダイカルコゲナイドのヘテロ構造やナノ構造作製に必要となる重要な基盤技術であり、今後の研究展開に大いに貢献するため
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、遷移金属元素のオキシクロライド系原料ガスを使ったMOCVD方式のTMDC薄膜成長技術の開発を進める。具体的には、MoS2の成長技術の高度化を図るため、成長核形成やライプニングなど、膜形成素過程の制御を試みる。また、昨年度に開始した二硫化タングステン(WS2)の成長技術の向上と膜の特性評価を進める。さらに、MoS2を対象に単結晶基板上へのエピタキシャル成長技術の開発も試みる。これらについて、以下に示す複数の視点から研究を進める。 (1) 膜形成素過程の制御:遷移金属元素のオキシクロライド系原料ガスを使ったMOCVD法で、良質なMoS2膜が形成できることがわかってきた。また、成長圧力や温度で形成される単結晶ドメインのサイズが変化することもわかってきたが、まだ0.2μm程度と小さい。ドメインサイズを決定する要因を明らかにしてサイズの増大を図るため、臨界核密度やライプニングなどの成長素過程について調査する。 (2) WS2成長技術の向上:昨年度までにWのオキシクロライド原料であるWOCl4が有用であることを見出したので、成長条件の最適化を図り、膜質の評価を進める。 (3) 単結晶基板上のエピタキシャル成長:サファイア、マイカ、GaNなどの単結晶基板上へのMoS2やWS2のエピタキシャル成長の実現可能性を検討し、技術的問題点を明らかにする。単結晶基板の面方位やオフアングルと双晶発生の相関についても調べる。
|
Research Products
(4 results)