2017 Fiscal Year Annual Research Report
Local magnetization control using spin Hall effect and its application to GMR magnetic sensors
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17H03249
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩田 聡 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (60151742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 剛志 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (50303665)
大島 大輝 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (60736528)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | NiO反強磁性層 / 歪みセンサ / 巨大磁気抵抗効果 / スピンバルブ膜 / 一方向異方性 / 触覚センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,スピンホール効果による磁化方向変調を利用した磁気センサの開発を目標としているが,本年度は,反強磁性のNiO層をサンドウィッチした磁化自由層を有するスピンバルブ膜を作成して,その磁気抵抗効果を評価した。NiO層は,スピンホール効果を引き起こすための交流電流が,GMR膜に分流しないようにするための絶縁層であるが,NiO単層の膜をスパッタ成膜してその電気抵抗を測定したところ,比抵抗が100Ωcmのオーダーであった。Si基板上にスパッタしたSi/Ta/NiFe/MnIr/CoFe/Cu/CoFe/NiO/CoFe/Ta積層膜において,NiO層の層厚を0 nmと20 nmの試料を作製し,試料表面にプローバの針をコンタクトさせて,比抵抗と磁気抵抗変化率を測定したところ,NiO (0nm)が,それぞれ40μΩcm,3.3%,NiO (20nm)が,81μΩcm,3.0%であった。NiO層の挿入による比抵抗の増加が期待されるほど大きくないことと,磁気抵抗変化に大きな違いが見られないことは,NiO層の比抵抗が不十分で,最表面から流した電流が,GMR層にも分流していることを示している。このような分流を防ぐためには,素子サイズを微細化する必要があり,現在,作製プロセスの検討を進めている。 一方,GMR効果を利用した歪みセンサについては,GMR細線の上に絶縁層を形成後,幅100μmのAl導体パターンを形成したデバイスを作製した。Al導体に1kHzの交流電流を流すことで,幅30μmのGMR素子部に0.6 Oe程度の交流磁界を発生させた。この交流磁界によってGMR素子に1kHzの信号が現れることを確認するとともに,素子に歪みを加えたときの交流出力が変化することを明らかにした。歪みに対する出力特性が,素子に印加するバイアス磁界の大きさや方向によって大きく変化することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度には,2つの磁性層で反強磁性のNiO層をサンドウィッチしたCoFe/NiO/CoFeを磁化自由層とするスピンバルブ膜を作製して,電気特性や磁気抵抗特性を測定したが,幅4mm×長さ10mm程度に切り出したサンプルにおける測定では,NiO層の絶縁性,つまり比抵抗が不十分であることが分かった。NiO単層膜のシート抵抗から見積もった比抵抗は,100Ωcm程度で,これは必ずしも低い値とはいえないが,4mm角/厚さ20nmのNiO膜の膜厚方向の抵抗値は,約0.001Ωとなってしまい,層間絶縁ができないことが分かった。一方,反強磁性のNiO層を介した磁気的な結合に関しては,CoFe/NiO/CoFeBサンドウィッチ膜においてNiO層の膜厚を20nmから薄くすることで,2つの磁性層が磁気的に結合し,外部磁界によって同時に反転するようになることを確認した。これは,CoFe/NiO/CoFeBサンドウィッチ膜のうち,膜厚を十分厚くしたCoFeB層を微小な磁界に応答して磁化方向変化する層とし,この磁化方位の変化をNiO層を介してスピンバルブを構成するCoFe層に伝えることが可能であることを示しており,本研究の当初の目論見に合致している。 一方,GMR膜を利用した歪みセンサに関しては,GMR細線の上に酸化Al層を介してAl導体を形成した素子の作製を行なったが,当初,層間絶縁が確保できていない素子しか得られなかった。これは,ArイオンビームによってGMR膜を幅30μmの細線に加工するときにレジストの側壁にスパッタされた金属が付着して,レジスト剥離が部分的に不十分となったためであることが分かった。この不良は,膜面から15度程度の低い角度でのArエッチングを加えることで解決した。
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Strategy for Future Research Activity |
NiO層を介したサンドウィッチ膜の層間絶縁が不十分である点に関しては,素子サイズを微細化することで解決を図る。つまり,GMR素子部の面積を4μm角まで微細化すれば,前述したNiO層の層間抵抗は,1200Ωとなり,4μm角のGMR素子部のシート抵抗10~20Ωに比べて十分大きな値となる。そのため,H30年度には,フォトリソグラフィにより,NiO層を含むスピンバルブ膜を20μm程度の細線に加工するとともに,最上層のFeCo/NiO/FeCo部をさらに4μm角程度の接合部としてエッチング加工する。酸化Al層を絶縁層としてスパッタ成膜後に電極をリフトオフで形成する。この素子を用いて,スピンバルブ構造を有する下部電極間の磁気抵抗特性を評価する。また,上部電極間に電流を流したときに,磁気抵抗変化が現れるかどうかを計測して,下部電極との間が絶縁されていることを確認する。さらにスピンホール効果を発現させるためのTa層をCoFe最上層の上に形成して,微細加工によって上記と同様の素子を作製する。上部電極間に1kHz程度の交流電流を流すと,極性の異なるスピン流が隣接するCoFe層に注入されるので,CoFe層の磁化方向は,膜面内で交流的に変化することになる。この変化がNiO層を介してNiO下部のCoFe層に伝えられるので,一定電流を流したGMR素子に交流電圧が現れると期待される。このようにスピンホール効果によるスピンバルブの磁化自由層の磁化制御が確認されたら,磁気センサとして有効に動作するための素子構造を検討する。
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