2018 Fiscal Year Annual Research Report
Mutual Information Passing between Sensor Information Environment and Physical Wireless Environment for High Density Wireless Sensor Networks
Project/Area Number |
17H03264
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田久 修 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (40453815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 威生 電気通信大学, 先端ワイヤレス・コミュニケーション研究センター, 教授 (10327710)
太田 真衣 福岡大学, 工学部, 助教 (20708523)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | センサネットワーク / コグニティブ無線 |
Outline of Annual Research Achievements |
稠密に配置されたセンサから個別のセンシング結果の集約を可能にするため、無線通信の特徴を表す無線物理空間とセンシングによる環境認識結果であるセンサ情報空間を統合する情報パッシング法に基づく信号分離法の確立を進めている。平成30年度は、初年度に確立した情報パッシング法の基本原理を拡張し、信号分離性能の向上と周波数利用効率の改善効果を引き出した。具体的には次の3つの方法が確立された。 1.センサ情報の特定に優れた特徴量モデルを確立した。具体的には、時間的な傾き量、無線機固有の局発発信機周波数オフセット量のモデル化を進めた。その結果、情報を特定する特徴量の次元数が拡大し、信号分離の高精度化を実現した。また、時間及び空間的な相関関係のあるセンサ情報に対する、二次元特徴分析による信号分離法を確立した。時間的な相関関係を利用して、将来のセンサ情報予測から信号分離精度と情報再生性能を考慮した無線アクセス制御法を確立し、情報収集精度を改善した。また応用として、異種無線システムとの周波数共用を想定した最適リソース割り当て法の確立と多数のセンサとのアクセスチャネル同期を確立するための制御信号の高効率な交換方法を確立した。 2.複数のセンサが存在する環境で観測情報を集約する際に複数のヒュージョンセンタを活用し、同時伝送された信号を逐次干渉除去や分散MIMO技術を用いて一括受信する手法の確立と、センサ情報の空間相関を基にした送信間隔の適応化の検討を実施し、その有効性を計算機シミュレーションで検証した。 3.無線LANと電子レンジの周波数共用環境を想定し,電子レンジの電磁波と無線LAN の信号の特徴量を検出し,その識別を行う手法の確立を行なった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題はセンサ情報と無線通信という独立な空間を相互に連携するパッシング技術を確立し、稠密に存在するセンサから通知された情報の分離分割を実現することを目的としている。平成30年度までに、各空間の特徴解析を進め、センサ情報を特定するための特徴量の種類の拡大を実現している。そして、特徴空間を統合的に取り扱う、情報収集局のアーキテクチャを確立し、情報分離精度の向上だけでなく、無線資源のリソース割り当ての最適化を実現した。後者に関しては、電子情報通信学会スマート無線研究会において優れた成果として評価され、論文賞を受賞している。これらの研究成果は、二つの学術論文誌において誌上発表をしており、同技術の学術的な普及を進めている。また、周波数共用環境でのセンサ情報集約手法の基盤技術として、複数信号混在下での情報集約と、共用性能を改善するための送信間隔の最適化について検討を行っており、当初の目標に従った研究成果を得ていると考える。そして、異種無線システムとして電子レンジとの周波数共用を想定し、実機評価に基づき実用性に即した、信号分離法を確立している。 以上のように、本技術の高度化及び成果発表の両面においても、当初計画を上回る成果を得ているが、残された研究課題もあり、来年度に研究課題として取り組む計画である。具体的には、特徴量の拡大は、特徴量を特定する次元数が拡大するため、計算量が指数関数的に増加する。そのため、計算量を削減するための空間相互の情報交換をするパッシング技術の確立が必要となり、最終年度に向けた研究課題として取り組む。また、情報集約局を複数配置した場合には、集約局間を接続する回線設計が必要であり、ネットワークに過剰な負荷をかけないエッジ処理の検討を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度までに、情報パッシング法の一つの原理は確立したと考えられる。平成31年度では、実用性を明らかにするため実環境シミュレーションを取り入れた評価をする。進捗状況で述べたように、計算量を削減するパッシング技術の確立とセンサネットワークから情報集約局間を結ぶネットワークまでを考慮したセンサ情報トラヒックの削減について、集中的に検討を進める。平成30年では、時間的な相関関係を利用した情報識別法を確立しているが、相間関係は集約局が予測可能な情報であるため、情報通知が不要となる側面がある。一方、相間情報が削減された場合には、情報を分離するための特徴傾向を捉える追尾が困難になる。相間のある情報の通知量に対して、追尾性能と削減効果との間のトレードオフに対して、所要品質の観点で最適化を実現する設計を進める。 また、無線環境及びセンサ環境のそれぞれの時空間相間関係を考慮するため、実機評価あるいは空間を模擬するシミュレーターでの評価を実施する。より現実に近い状況において、提案法の有効性を明らかにし、技術改良を進める。無線センサネットワークの確立に必要な事前情報の交換についても継続的に研究を進める。これにより、無線センサネットワークの情報収集に加えて、ネットワークを確立するための事前情報交換であるシグナリングを考慮したうえで、周波数利用効率の高効率化を実現する。 最終的に情報パッシング法の技術基盤を確立し、その成果は、国際会議や学術論文誌での発表などで積極的に普及促進を進める計画である。
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