2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of magnetic force microscopy available for in-situ pulse magnetic field application and the analysis of microscopic magnetization process and magnetic reversal for permanent magnets
Project/Area Number |
17H03272
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
齊藤 準 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (00270843)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 磁気力顕微鏡 / パルス磁場 / 永久磁石 / 磁化過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
革新的次世代高性能磁石の指針構築には、局所的な磁化過程や磁化反転の計測を行い、磁化反転箇所の解析から保磁力機構を解明することが極めて重要になる。本研究では試料にパルス磁場を印加して、その磁化状態を能動的に変化させて局所的な磁化過程や磁化反転を計測・解析できる新たな磁気力顕微鏡を構築し、局所的に計測した磁化曲線から磁石の安定性の性能指標である保磁力およびその理論的上限値である異方性磁場を微視的に評価する手法を確立することを目的とする。本研究では、永久磁石を構成する個々の磁性結晶粒1個において磁気特性の評価が可能な、先端永久磁石材料の研究開発に有用となる革新的な磁化状態評価手法を具現化し、結晶構造、金属組織の不均一性と微視的磁気特性の相関の解明に資する手法を提供することを目指している。 ここでは、試料の磁化曲線計測には使用する磁性探針のパルス磁場印加特性を把握し、測定感度および測定再現性に優れる磁性探針を開発することが重要になる。このため種々の磁性探針を検討・試作し、昨年度に開発した磁性探針の磁化曲線をパルス磁場印加中でin situ計測できる手法を用いて、その磁気特性を評価した結果、ハード磁気特性に優れたL10型FePt規則合金をSi探針に被覆したFePtハード磁性探針が測定感度ならびに測定精度の観点から適することがわかった。また、パルス磁場印加時に発生することがあった不具合である探針位置の変動については、探針の加振周波数を共振周波数付近で調整することにより抑制することができた。 一方、本課題に用いるパルス磁場印加機構が付加された磁気力顕微鏡に、研究代表者らが先に開発した高い空間分解能を有する交番磁気力顕微鏡による磁区観察を実施できるようにする改造(4CH外部入力信号処理基板の導入)については、当初の計画から1年遅れとなったが問題なく完了させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
パルス磁場印加磁気力顕微鏡を用いた観察試料の局所磁化曲線計測には、使用する磁性探針の磁気特性を把握し適切なものを選択する必要がある。このため使用する磁性探針の磁化曲線を磁気力顕微鏡中でin situ計測する手法を開発した。一方、観察試料の局所磁化曲線は、磁気力顕微鏡を用いて事前に磁区構造を観察した後に測定箇所を選んで計測するが、本課題に用いるパルス磁場印加機構が付加された磁気力顕微鏡は旧型であるため、研究代表者らが先に開発した高い空間分解能を有する交番磁気力顕微鏡による磁区観察を行うことができない。そこで初年度に電子基板(4CH外部入力信号処理基板)を導入し機能向上を実施する予定であったが、発注予定企業では電子基板に用いる電子部品の欠番により同等品の選定・プリント基板の変更・動作確認に時間を有することが判明したため、当初の計画を1年遅らせて磁気力顕微鏡の整備を完了させた。これにより観察試料を用いた局所磁化曲線計測の計測条件の検討・最適化が当初の計画から遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
パルス磁場印加磁気力顕微鏡を用いた局所磁化曲線計測の要素技術となる、磁性探針の選定・最適化、パルス磁場印加時の探針位置変動の抑制について、ほぼ確立することができた。また、高い空間分解能を有する交番磁気力顕微鏡による磁区観察を可能とする装置改造を完了させることができた。 今後は、高い空間分解能を有する交番磁気力顕微鏡による磁区観察を併用して、パルス磁場印加による局所磁化曲線の計測に関して、測定試料として、結晶粒径が1ミクロン程度の異方性フェライト磁石や、自作した結晶粒径が0.1ミクロン程度のFePt磁石厚膜等を用いて、局所磁化曲線の計測を試みる。計測した局所磁化曲線の磁化飽和過程から異方性磁場の評価を、磁化反転過程から保磁力の評価を行う。 また、結晶粒径が1~5ミクロン程度の種々の希土類磁石を測定試料として、最初に研磨面において磁石を構成する個々の結晶粒内で結晶粒界からの距離を変化させて局所的な磁化曲線を測定して、異方性磁場や保磁力を求め、微視的な観点から磁化過程や磁化反転挙動を調べる。次に破断面において同様の測定を行い、研磨面と破断面の磁化反転挙動の違いを明らかにする。以上の結果から、粒界相を介して隣接する磁性結晶粒間の磁気的相互作用や、磁気特性の分布が磁化反転に及ぼす影響を解明し、永久磁石の研究開発に資する評価ツールとなり得ることを実証する。さらに金属組織との相関を明らかにし、磁気物性およびその空間不均一性が保磁力に及ぼす影響を明らかにすることにより、保磁力機構を解明することを目指す。
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