2018 Fiscal Year Annual Research Report
大自由度力学系のデータ駆動型縮約モデリング手法の確立とバイタルサインへの適用
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17H03279
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中尾 裕也 東京工業大学, 工学院, 准教授 (40344048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 亮太 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 助教 (70549237)
秦 重史 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (70735927)
紅林 亘 滋賀大学, データサイエンス教育研究センター, 助教 (70761211)
河村 洋史 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 数理科学・先端技術研究分野, 主任研究員 (90455494)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 力学系 / 非線形振動 / 同期現象 / 縮約 / データ同化 / 生体リズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画では生体リズム等を念頭に大自由度非線形力学系の縮約理論を発展させ、また観測データから系を記述する少数個の主要変数を抽出して縮約数理モデルを同定するデータ駆動型縮約モデリング手法の確立を目指している。平成30年度は本計画の2年次であり、主に以下の内容について研究を実施した。(i)ネットワーク結合力学系の集団振動に対する縮約理論の発展。実世界には電力系統や神経回路網のように全系の同期した集団振動が重要な機能的役割を果たす例がある。その種の系の数理モデルとして高次元の常微分方程式系として表される複数の素子がネットワークを介して相互作用する系の集団振動を低次元の位相方程式に縮約するための理論を定式化した。この理論では各素子のダイナミクスやネットワーク結合は任意であり、個々の素子に与えられた摂動に対する集団振動の位相応答を一般的に定量化できる。これにより、例えばネットワークのどの素子に入力を与えれば系の集団振動を効率的に制御できるかを定量的に示すことができる。この理論を用いてふたつのネットワーク間の相互同期を詳細に解析した。(ii)Koopman作用素論に基づく解析に基づき、反応拡散系の非線形リズムに対する位相振幅方程式を導出した。これにより、従来の位相の応答に加え、過渡的な振幅の応答の解析が可能となり、例えば不安定なパターンのフィードバック制御に応用できることを示した。(iii)生体には様々なリズム現象があり、音信号の入力に対して振動的応答を示す蝸牛の聴覚細胞もその一例である。聴覚細胞系の結合振動子モデルを用いて、ふたつの周波数の異なるサイン波的な音信号が入力されたときの応答の二音抑圧の解析を行い、周波数の相対的な大小に応じて異なる抑圧特性が生じることを示し、その結果が実際の聴覚実験の結果と定性的に一致していることを示した。以上の内容については学会や学術誌にて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大自由度力学系のリズム現象の縮約理論の発展という観点からネットワーク結合力学系の集団振動に対する位相縮約理論を確立できた。この結果は集団振動の同期の制御などに応用可能である。また、Koopman作用素論の観点からの反応拡散系のリズム現象に対して従来の位相縮約理論を自然に拡張する形で位相振幅縮約理論を定式化できた。その他、蝸牛の聴覚細胞の数理モデルの解析や流体振動の応答解析なども行えた。これらの結果の一部は学会や学術誌において公表できた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの大自由度力学系の縮約理論をさらに発展させつつ、データからの縮約モデルの同定手法に関する研究に取り組んでゆく。特に、拡張された動的モード分解手法のような時系列データからKoopman固有関数あるいは位相/振幅関数を直接推定する手法と、その反応拡散系や流体系などの大自由度力学系のリズム現象に対する適用可能性について、研究を進めていく。
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Research Products
(10 results)