2017 Fiscal Year Annual Research Report
Applicability of machine learning to tsunami source estimation for exploring devastated area
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17H03316
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
高橋 智幸 関西大学, 社会安全学部, 教授 (40261599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 与志弘 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (80514124)
河野 和宏 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (60581238)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多数津波シナリオ / 津波数値モデル / 建物被害 / Convolutional LSTM |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)多数津波シナリオを用いてマグニチュード,大すべり域・超大すべり域および破壊開始点に関する不確かさを考慮した波源断層モデルを設定した.また,津波伝播および浸水シミュレーションを実施するために必要となる津波数値モデルの構築と地形モデルの準備を行った.津波数値モデルの支配方程式としては長波理論を採用し,計算スキームとしてはStaggered格子を用いたLeap-frog差分法を適用した.以上の波源断層モデルと数値モデルを用いて,機械学習に用いる教師・検証データセットの出力データを作成した.ただし,各マグニチュードで2種類ずつ機械学習結果の検証事例として選定し,データセットから除外してある. (2)激甚被災地の探索を行うには精緻な市街地氾濫シミュレーションを実施する必要がある.東日本大震災で激甚被害が発生した女川町を事例に,非線形長波理論に基づく平面二次元解析とRANSに基づくVOF法を用いた三次元解析を実施し,RC建物の被害の再現性について両手法を比較した.その結果,杭基礎が存在する建物の場合には地震や津波に伴う地盤の応答が適切に評価されなければならないこと,堅牢な建物が多く存在するエリアの建物被害を精度良く再現するためにはRANSに基づくVOF法を用いた三次元解析を用いることが望ましいことを示した. (3)津波などの災害に関連する膨大な画像・映像を深層学習で取り扱うことができる環境を構築し,マルチメディアに深層学習を応用した研究として,改ざん映像の検出システムを開発した.開発したシステムの特徴は,映像の時空間情報を十分に活かせるよう,Convolutional LSTMを利用した点である.その結果,空間情報を考慮するCNNによるRotaらの手法や時系列情報を考慮するRNNによる苅田らの手法と比較したところ,提案手法がより改ざんの検出精度が高いことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画のうち,教師・検証データセット(出力データ)の作成以外については,すべて予定通りに実施できた.教師・検証データセット(出力データ)の作成については,多数の小断層を用いて津波波源を構成させる予定であったが,(1)津波波源の規模は特性化波源モデルを巨視的断層パラメータに依存すること,(2)津波波源内の水位分布は大すべり域・超大すべり域および背景領域で表現できること,(3)多数の小断層の地殻変動は計算負荷が高いことを踏まえて,巨視的・微視的断層パラメータで構成される特性化波源モデルを用いることに変更した.この変更によっても,当初の予定通りに,津波波源の規模や水位分布の不確かさを考慮した教師・検証データセット(出力データ)は作成できている.また,研究を進めて行く上で,当初の研究計画にはなかった非線形長波理論に基づく平面二次元解析とRANSに基づくVOF法を用いた三次元解析の比較や災害の画像・映像の改ざんを深層学習による検出についても検討できた.以上より,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)前年度に想定した訓練事例および検証事例の波源断層モデルから,機械学習に用いる教師・検証データセットの入力データを作成する.まず,Mansinha and Smylie(1972)の地殻変動理論に基づき,各波源断層モデルから津波初期波形を計算する.その際,断層の破壊伝播速度を考慮し,津波初期波形は時間的に変化させる.次に,これらを外力条件として,前年度に準備した津波伝播シミュレーションを実施して,各観測機器で測定されると予想される模擬観測データを求める.観測機器および測定データとしては,防災科学技術研究所が運用するDONET,国土交通省が運用するGPS波浪計および気象庁などが運用する検潮所を模擬した水位の時間変化,また国土交通省や海上保安庁などが運用する海洋レーダを模擬した流速の時空間分布を対象とする.これらの模擬観測データを機械学習における特徴ベクトルとした入力データを求める. (2)(1)で求めた津波初期波形を外力条件として,前年度に準備した津波浸水シミュレーションを実施し,各市町村での最大浸水範囲と最大浸水深分布を求める.その際,陸域の粗度は小谷ら(1998)を用いて設定する.また,川幅が10m以上の河川については遡上も考慮する.なお,以後の統計処理に備えて,計算結果はGISソフトウェアに出力する. (3)最初に人口センサスおよび建物分布データから,津波暴露人口・建物を算定する.次に,(2)で求めた最大浸水深分布に津波被害関数(既往災害から求められている浸水深と死亡率や建物倒壊率の関係式,例えば首藤(1992)や越村・郷右近(2012))および建物種別を適用して,死者数および全壊・半壊建物数を算定する.これらの人的・物的被害を比較することにより,激甚被災地の探索が行え,救助・救援の優先順位をつけることが可能となる.
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