2018 Fiscal Year Annual Research Report
Global warming regime shift of coastal fine sediment dynamics due to climate change
Project/Area Number |
17H03317
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
八木 宏 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 教授 (80201820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉松 宏一 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 西海区水産研究所, 研究員 (10710923)
田村 仁 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 研究官 (80419895)
小笠原 英子 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 准教授 (00531782)
坂見 知子 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, センター長 (70372034)
宇田川 徹 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産工学研究所, 主任研究員 (00443391)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 気候変動 / 沿岸底層環境 / 細粒土砂動態 / 有機物循環 / 海底音響センシング |
Outline of Annual Research Achievements |
懸濁質・細粒土砂動態の実態解析では,MODISのデータに基づき,海水中の粒子状物質の情報を反映した後方散乱係数,吸収係数について,2011~2016年の約5年間分の平均像を求めることで,日本沿岸における空間構造とその季節変化を検討した.その結果,後方散乱係数は北海道周辺海域で高く,同海域の水中粒子状物質が多い可能性を示した.さらに,太平洋岸海域にEOF解析を適用し,後方散乱係数の時空間変動の特徴を明らかにした. シームレスな沿岸細粒土砂動態モデルの構築については,ベースとなるFVCOM-SWANを仙台湾から房総海域に適用し,モデルの基本性能の把握および検証を試みた.開境界の空間解像度は既往の外洋モデル(JCOPE等)と合わせた1/12°(およそ10km)とし,利根川河口や仙台湾を含む同海域沿岸域をおよそ100mの解像度とする非構造系格子で表現し,沿岸物理モデルの高精度化を図った. 底質環境変化検出手法のうち高度底質情報抽出については,鹿島灘と外房沖で採取した海底表層堆積物の分析を進めた.細菌群衆解析からは堆積物中のアンモニア酸化細菌組成は鹿島灘30mと外房10mが大きく異なっており,クロロフィル含有量,中央粒径値,強熱減量,水温が有意な環境因子として抽出された.鹿島灘北部に多く出現した2配列は仙台湾のものと共通であり,北方系の種類と考えられた.一方,外房南部は群集の多様性が高く特徴的な配列が多く検出された.堆積物中の易分解性タンパク質含有量は海域間・水深間で違いがみられ,その分布パターンは有機物含有量・クロロフィル含有量とは異なることがわかった.海底音響センシングについては,有明海の堆積物を用いて周波数500kHzにおける音波の透過特性を調査し,撹拌すると浮遊しやすい75μm以下の堆積物に水を添加して音速と減衰率の変化を調査したところいずれも音速に対して相関関係を確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現気候下における日本沿岸の懸濁質・細粒土砂動態の実態把握については,初年度は水色指標(LCI)を用いた沿岸水の評価であったが,それを海水中の粒子状物質の情報を反映した固有の光学特性(後方散乱係数,吸収係数)に発展させることで,より直接的に懸濁物動態の把握が可能となった.さらに後方散乱係数と吸収係数の関係から海中物質の性質の違いまで推定することができた. シームレスな細粒土砂動態モデルの構築は,ベースとしているFVCOM-SWANを対象海域に適用した時のモデルの基本性能の把握した上で,外海域から浅海域・河口域をシームレスに繋ぐ計算格子系を対象海域の特徴を反映して作成することで沿岸物理モデルの高精度化を図ることができた. 高度底質情報抽出は,初年度に手法が確立された細菌群集解析,易分解性タンパク質分析を鹿島灘・外房沖で採取した海底表層堆積物について進め,観測地点ごとの細菌群集組成,易分解性タンパク質含有量の特徴を明らかにした上で,クロロフィルa量など環境因子との関係解析まで検討が進んだ.また,海底音響センシングは,初年度,人工粒子を対象に行った検討を有明海の現地泥に発展させ,浮遊した75μm以下の堆積物については音速との間に相関関係を確認できた.
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Strategy for Future Research Activity |
1.MODISにより算出した沿岸水の光学特性(後方散乱係数,吸収係数)に対して,①公共用水域調査等による広域検証,②調査船による光学特性の直接計測を行い,信頼性の高い日本沿岸の懸濁物質動態時空間構造の推定を目指す. 2.常磐~房総海域を対象とし,年スケールの沿岸細粒土砂動態プロセスを表現する長期計算モデルと,特定の気象擾乱を対象とする同プロセスを表現可能な高解像度モデルを駆動し,モデルの基本性能の把握および検証,他モデルとの比較を行う.得られた計算結果に基づき,気象擾乱のパターン(低気圧の移動経路等)に対する沿岸細粒土砂の基本的な応答の特徴(基本モード:卓越輸送方向,集積・流出域等)を把握する. 3.鹿島灘北部と外房南部との両海域の海底堆積物に含まれる易分解性タンパク質量と他の有機物指標値(全有機物含有量・クロロフィル a含有量等)との定量を進め,これらの関係および経年変化を調べ,環境指標値としての安定性・有効性の検討を行う. 細菌群集解析では,鹿島灘北部と外房南部に特徴的に出現するアンモニア酸化細菌の種類(遺伝子塩基配列情報)の経年変化を調べ底質環境との関係を解析し,環境指標としての有用性を検証する. 4.平成30年度に実施した500 kHzでの懸濁液体の音波伝搬特性を参考に,違う周波数を用いて浮泥を伝搬する音波の特性を確認する.これらを合わせて,港湾部における堆積層上部に生じる浮泥層の音響的な検出手法について検討する.
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