2018 Fiscal Year Annual Research Report
公共用水域の糞便汚染源の可視化を実現する宿主特異的ウイルス遺伝子マーカー群の探索
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17H03332
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
原本 英司 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (00401141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北島 正章 北海道大学, 工学研究院, 助教 (30777967)
端 昭彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (70726306)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ウイルス / ファージ / 微生物起源解析 / 公共用水域 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,本研究で確立を目指す宿主特異的ウイルス遺伝子マーカー群の候補として,体表面吸着大腸菌ファージ(体表面ファージ),F特異DNA大腸菌ファージ(F-DNAファージ)およびCrAssphageの3種類を対象とした研究を実施した。 体表面ファージとF-DNAファージに対しては,単離したプラックを定量PCR法に供する際の作業効率化を目的とし,PhiX174ファージとM13ファージを用い,DNA加熱抽出の有無によるCt値(蛍光強度が閾値を超えるPCRサイクル数)の差異を比較することで,加熱抽出は省略可能であることを確認した。その手法を用い,山梨県内で採取した下水と豚舎排水における両ファージの存在実態を調査した。体表面ファージについては,プラック法でのファージの検出および定量PCR法によるマイクロウイルス科の選択的検出では糞便汚染源解析を行うことはできず,定性PCR法とダイレクトシーケンシングを用いてPhiX174マイクロウイルス属の遺伝子群を同定することが有効であることが分かった。F-DNAファージについては,豚舎排水からはプラックが検出されず,十分な検討はできなかったものの,下水試料から単離したプラックが複数の遺伝子群に分類され,高い遺伝的多様性を有していることが分かった。 CrAssphageは,ヒト特異的遺伝子マーカーとして評価した場合には,100%の感度と80%を超える特異度を示したが,豚舎排水3試料すべてから検出されたことを踏まえると,ヒト糞便汚染の解析に用いることは困難であり,ヒト・動物の種類を区別せずに広く糞便汚染を検知するためのマーカーとして利用できる可能性が示唆された。他に検討したウイルスのうち,ヒトアデノウイルスはヒト糞便汚染の解析に利用できると判断されたことから,CrAssphageとヒトアデノウイルスを併用する手法が有効となることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たなウイルス遺伝子マーカーとして,体表面吸着大腸菌ファージ,F特異DNA大腸菌ファージおよびCrAssphageに着目して研究を実施し,これらの有効性を多面的に評価することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
ウイルス遺伝子マーカーとしての体表面吸着大腸菌ファージ,F特異DNA大腸菌ファージおよびCrAssphageの有効性をさらに検証するため,ヒトとブタ以外の糞便汚染源試料も採取して研究を実施する。研究成果を取りまとめて論文執筆を進める。
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