2018 Fiscal Year Annual Research Report
New unknown phenomena of anaerobic wastewater treatment : understanding and control of anaerobic bulking by multiple species of microorganisms
Project/Area Number |
17H03333
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
山田 剛史 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90533422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 剛士 松江工業高等専門学校, 環境・建設工学科, 講師 (30759832)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | EGSB / 嫌気性バルキング / クロロフレキシ門細菌 / メタノサエタ属アーキア / 糸状性微生物 / スピアマン順位相関係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の実施したExpanded granular sludge bed (EGSB) リアクター (以下、EGSB-A) の嫌気性バルキングとは別に、食品製造廃水を処理する中温Expanded granular sludge bed (EGSB) リアクター (以下、EGSB-B) において、新たな嫌気性バルキングが確認された。16S rRNA遺伝子アンプリコン解析を行った結果、嫌気性バルキング汚泥において存在比が有意に増加した微生物種は、ユリアーキオータ門 (2種)、クロロフレキシ門 (2種) およびプロテオバクテリア門 (3種) に属する微生物であった。上述の微生物種の16S rRNAに特異的なDNAプローブをそれぞれ設計した後、hybridization chain reaction-fluorescence in situ hybridization (HCR-FISH) 法を適用した結果、メタノサエタ属アーキア (1種) およびクロロフレキシ門細菌 (2種) が糸状性の形態を示した。スピアマンの順位相関係数を用いた相関関係を評価した結果、上述の3種の糸状性微生物同士に強い正の相関が得られただけでなく、他の微生物 (4種) との間にも強い正の相関が得られた。これらの統計解析結果は、当該嫌気性バルキングは、運転状況や廃水性状の変化によって、糸状性微生物の他、4種の微生物の異常増殖によって複合的に発生したことを示唆していた。 本年度、EGSB-Aリアクターの設置企業の問題から汚泥のサンプリングが困難となり、昨年度に引き続いた解析を進めることが難しい状況となった。そのため、EGSB-Bリアクターで発生した新たなバルキング現象を対象として研究を進めるように計画を変更した。その結果、EGSB-Bとは異なる複数種の微生物群が嫌気性バルキングに関与することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
EGSB-Aリアクターの設置企業の問題から、昨年度に引き続いた解析を進めることが難しい状況となった。昨年度得られたノウハウをもとに、EGSB-Aリアクターのバルキングに関わる微生物群を比較的迅速に明らかに成功することした。EGSB-Bリアクターのバルキング汚泥と同様に、EGSB-AリアクターのバルキングもFluorescence in situ hybridization法 (FISH法)での検出は困難であったため、HCR-FISH法によって糸状性の形態を示すバルキング原因菌より蛍光を得ることに成功した。現在、この検出ツールを用いて、健全なグラニュール汚泥におけるバルキング原因菌の空間分布を評価している最中である。暫定的な結果ではあるものの、クロロフレキシ門細菌は汚泥表面に存在することが明らかにされつつある。クロロフレキシ門細菌の分離・培養ができれば、直接的なドラフトゲノムの作成やDifferential coverage binning法が容易となる。現在、グルコースおよび酵母抽出液を用いた集積培養を行っているところである。 本年度、昨年度から研究を実施していたEGSB-Aリアクターのサンプリングが困難となり研究計画どおりに進められない問題が発生した。そのため、急遽別のEGSBリアクター (EGSB-B) の嫌気性バルキングの研究サンプルの調達に成功した。当初、網羅的なゲノム解析を検討していたが、当初計画した内容に培養法を加えることによって、研究計画の遅れを取り戻す検討を図った。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度において、再度整備したDNAプローブとFISH法によって、健全な汚泥におけるバルキング原因菌の空間分布が評価できると思われる。ただ、FISH法での空間分布評価が思わしくない場合は、HCR-FISH法に変更して対応する事を計画している。ただし、HCR-FISH法は、汚泥切片内微生物の蛍光観察に利用された実績はないため、実験時に発生した諸問題は、HCR-FISH法の開発者である共同研究者の山口とともに改善に向けて取り組む予定である。Stable isotope probing法の実施も計画していたが、空間分布の調査から推定される基質利用性の情報をもとに、クロロフレキシ門細菌の分離を試みる。 現在、嫌気性消化リアクターから分離した微生物種を研究事例として、本研究に必要なドラフトゲノム構築に必要なバイオインフォマティクス環境の整備を完了した。今後、クロロフレキシ門細菌の分離ができなかった時のことも考慮して、MDA法でのゲノム構築よりもむしろ、Differential coverage binning法によるドラフトゲノム構築に研究計画の骨格に据えるため、こちらの環境の整備も早急に行う予定である。そのため、研究協力者の産業技術総合研究所 成廣主任研究員との打ち合わせも密にしておく。
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