2018 Fiscal Year Annual Research Report
高機能・高性能FRCCの合理的な材料設計手法と包括的な評価手法の提案
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17H03337
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西脇 智哉 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60400529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 真澄 北見工業大学, 工学部, 准教授 (00388141)
五十嵐 豪 東北大学, 工学研究科, 助教 (10733107)
菊田 貴恒 日本工業大学, 建築学部, 准教授 (20599055)
崔 希燮 北見工業大学, 工学部, 助教 (70710028)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 繊維補強セメント系複合材料 / データベース / 性能指標 / 単繊維引抜試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度には、高機能・高性能FRCCの合理的な材料設計手法の提案に当たり、前年度までの検討により得た実験手法に基づいて、データ収集を主たる目的として検討を行った。 [1] 繊維補強メカニズムの確認と横断的なデータベースの構築に関しては、前年度までに装置改良などの予備検討を重ねてきた単繊維引抜試験について、細径繊維も含めた各種繊維に対して実施した。このことにより、繊維種類に加え、埋め込み長さや埋め込みマトリックスの強度、引き抜き角度などをパラメータに加え、単繊維引抜試験の結果を強度と変位の関係などとして整理した。その結果、細径合成繊維において埋め込み角度が90度の場合、繊維とモルタルとの界面付着特性が引抜き挙動に強い影響を与えることが明らかとなった。また、界面付着特性とマトリクス強度には、繊維の親水性を有する繊維ではマトリクス強度の変化に伴い引抜き挙動も変化したが、親水性を有しない繊維ではマトリクス強度の影響が限定的であることを明らかにした。 [2] 相乗効果の期待されるFRCC材料設計事例、および、[3] FRCC総合評価指標の構築に関して、その具体的な検討事例として、従来は相性がよくないとされてきた細径合成繊維と粗骨材の併用について検討を行い、その総合評価指標の提案を行った。その結果、通常の粗骨材を用いたコンクリートに細径PP繊維を体積割合で1%まで混入した場合であっても、適切なマトリックスの選択により良好なフレッシュ性状が得られ、曲げひび割れを導入後にも一定の自己修復効果が得られるなど機能付与についても期待できることが確認された。その一方で、過剰な巻き込み空気の影響による強度低下が確認された。これらの異なる性能を指標化して、総合評価を行うための枠組みを提案した。また、CNFを混入したモルタルについても基礎的な検討を行い、同様の総合評価についても検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度に予定していた検討項目について、[1] 繊維補強メカニズムの確認と横断的なデータベースの構築に関しては、平成29年度に導入した専用の引抜試験装置を用いて、繊維種類および埋め込み長さや埋め込みマトリックスの強度、引き抜き角度などを各種パラメータとした実験を数多く実施できており、概ね順調な進捗と考えている。特に、これまで引抜き挙動に関するデータが不足していた、繊維直径が10マイクロメートル~100マイクロメートル以下の細径合成繊維について引抜き挙動のデータを取得可能となったことは大きな進展と考えている。 また、微細繊維については、これまでに検討を行ってきた鉱物繊維に加え、CNFについてもマトリックスとしての評価に着手しており、引き続き基礎的なデータの集積を行う。 [2] 相乗効果の期待されるFRCC材料事例と、[3] FRCC総合評価指標の構築については、研究実績の概要にも記載の通り、平成29年度のUHP-FRCCにおける事例に加えて、細径PP繊維と粗骨材を用いる通常のコンクリートなど、従来は併用されない組み合わせについても検討を行った。要素ごと性能指標と、これらを繋げた総合評価について、具体的なFRCC材料に対して適用しつつあり、より総合的な評価方法として検討を続けている。現状では、相乗効果の有無など取り組むべき課題も残されているが、力学指標に限定すればこの指標化についても提案があり、最終年度である平成31年度で整理・体系化を試みて、総合的な性能評価指標の提案を行いたい。これらの状況を総合的に判断して、おおむね順調な進展であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
[1] 繊維補強メカニズムの確認と横断的なデータベースの構築については、これまでの検討を継続し、各種繊維材料についてのデータベースの更なる拡充を図る。これまで整備した単繊維引抜試験装置などを中心に、力学特性・付着性状などの更なるデータの蓄積を目指す。横断的に比較可能な形で整理することを目指し、サイズ・形状・材質・組成・コストなど様々項目を網羅的に含むデータベースのフォーマットについて引き続き検討を行う。昨年度には取り組めなかった、ジュートなどの植物性補強繊維なども入手の目途が立ち、これらも対象に加えて基礎的な実験を継続する。 [2] 相乗効果の期待されるFRCC材料設計事例の模索と整理に関して、昨年度に引き続き、これまでは用いられることがなかったような補強繊維・コンクリートマトリックスの組み合わせも含めて、相互補完や相乗効果が得られると期待される組み合わせを上述のデータベースから取り上げて、高機能化や高性能化につながる可能性を模索する。各種繊維の特徴が、相乗効果として得られる場合の条件を整理することで、体系的な材料設計手法の提案につなげる。 [3] FRCC総合評価指標の構築に関しては、既往の検討例を含めてここまで得られたFRCC材料について、レーダーチャートなどによる具体的な総合評価指標の検証を行う。既に得られたFRCC材料の中での比較や、より改善すべき点などを整理し、更に充実させるべきデータベース項目や、より合理的な性能設計手法へとフィードバックを行う。複数種類の繊維を組み合わせるに当たって、合理的な繊維の選択を行うために、より高性能化を目指す場合、使用繊維量の削減やコストダウンを志向する場合、施工性に力点を置く場合など目標を明確化することで、連動して変化する評価パラメータを総合的に評価可能な指標となるように整備する。
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Research Products
(7 results)