2018 Fiscal Year Annual Research Report
Alloy Design of High-Entropy Alloys Based on Screening Hypothesis and Statistical Decision Principle and Fabrications of New Alloys
Project/Area Number |
17H03375
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
竹内 章 東北大学, 工学研究科, 特任教授 (40250815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
網谷 健児 東北大学, 金属材料研究所, 特任准教授 (30463798)
湯葢 邦夫 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (00302208)
和田 武 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10431602)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高エントロピー合金 / 臨界パーコレーション / 面心立方構造 / 体心立方構造 / 合金設計 / 分子動力学シミュレーション / 母相 / 鎖状連結原子 |
Outline of Annual Research Achievements |
高エントロピー合金(HEA)の特異な原子配置の特徴を解明するために、分子動力学(MD)シミュレーションを実施し、多色パーコレーション解析を実施した。その結果、bcc構造のWNbMoTaおよびfcc構造のAuCuNiPdPtが臨界パーコレーション状態にあることを金属・合金学で初めて実証した。MDシミュレーションの結果、臨界サイトパーコレーション濃度では系全体にわたり、全種類の構成元素がパーコレートしていることを確認した。このような臨界パーコレートしたHEAには明瞭な母相は存在せず、パーコレートした原子集団、換言すれば、折れ曲がった鎖状連結原子が母相に相当することを実証した。また、小数値で与えられる臨界サイトパーコレーション濃度の逆数は、N元系完全等原子分率合金で臨界パーコレーションに必要な原子数となる。Nが増加すると、周期律表の同族元素等から類似した化学的な性質をもつ元素が必然的に含有されるため、個々の元素のパーコレーションは断絶される。しかしながら、以下の2種類の取り扱い、すなわち、類似元素を同一とみなす同色化、もしくは、パーコレートの繋がりを第一近接原子間から第二近接まで拡張する、多色あるいは多元化によりパーコレーション状態は維持されると解釈できる。HEAの定義として、結晶構造に起因する臨界サイトパーコレーション濃度の導入により、HEAの合金組成の最適化の際の構成元素の濃度制御が可能であり、今後の合金設計の精度向上、物性の理解および新規HEAの開発が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は新規高エントロピー合金(HEA)の実証に試行錯誤が続いたため年度内に新規HEAの発表には至らなかったが、年度終盤に研究成果を論文として投稿しており、現在、査読状況にある。したがって、今後を含め研究の進捗に問題はない。新規HEAの実証に時間を要している間、以前から関心を抱いていたHEAの特異な原子配置の特徴を多色パーコレーション理論で解明する研究を有効的に進めることができた。パーコレーション解析で得られた知見の中で、特に、臨界サイトパーコレーション濃度により、bcc構造の4元系完全等原子分率合金およびfcc構造の5元系完全等原子分率合金が臨界パーコレーション状態にあることを金属・合金学で初めて実証できたことは、今後、HEAの合金組成の最適化の際の構成元素の濃度制御因子として合金設計の精度向上に大きく貢献できるため、現在までの進捗状況は、おおむね順調と自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、(1)合金設計、(2)予測・実証および(3)構造解析を主軸として研究を推進する。 (1)合金設計は、代表者の竹内が担当する。2019年度は、hcp構造の高エントロピー合金(HEA)について研究成果を発表する予定である。なお、hcp構造のHEAとしては、3d遷移金属から構成されるCrMnFeCoNi合金に対して超高圧を印加した場合および4dおよび5d遷移金属から構成される合金を化学反応により合成した場合に生成することが報告されている。この研究との差異を明確にするため、本研究では、通常のアーク溶解法を利用して、かつ、常圧で生成される合金系および合金組成を計算機予測による最適化を通じて、hcp構造のHEAを新規に見出す。 (2)実験的実証(合金探査)は、分担者の和田および網谷が担当する。和田は、上述の計算機予測に対応して、試料作製は最も汎用的なアーク溶解法によりボタン状試料を効率的に作製してHEAの生成の可否を見極める。また、X線回折(XRD)法により得られた試料の構造を解明するとともに、熱処理によりサンプルの均一化を図る。網谷は、得られた試料の光学顕微鏡観察、走査電子顕微鏡観察および元素分析を担当して、分担者の和田と連携して実験を進める。 一方、(3)構造解析を担当する分担者の湯葢は、試料の電子顕微鏡観察を行うとともに、結晶構造解析を行い、合金設計担当の竹内および実験的検証担当の和田および網谷と連携して、効率的に研究を遂行する。 2020年度および2021年度は、新規HEAの作製を行いつつ、作製したHEAの熱力学的解析を行う。さらに、高機能特性を具備したHEAの合金設計、ならびに、HEAの基礎的学理の究明を行う。研究期間の5年間の成果をまとめた論文のトップ1%論文登録を目指す。
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