2020 Fiscal Year Annual Research Report
Alloy Design of High-Entropy Alloys Based on Screening Hypothesis and Statistical Decision Principle and Fabrications of New Alloys
Project/Area Number |
17H03375
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
竹内 章 東北大学, 工学研究科, 特任教授 (40250815)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
網谷 健児 東北大学, 金属材料研究所, 特任准教授 (30463798)
湯葢 邦夫 九州大学, 工学研究院, 学術研究員 (00302208)
和田 武 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10431602)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 高エントロピー合金 / 混合エントロピー / 過剰エントロピー / 相互作用パラメータ / 面心立方構造 / 体心立方構造 / 稠密六方構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
5種類以上の構成元素を含み、かつ、体心立方(bcc)、面心立方(fcc)もしくは稠密六方(hcp)構造のいずれかの構造の単相合金として生成される条件を満たす完全等原子分率(Exact Equiatomic)の高エントロピー合金(HEA)、すなわち、EE-HEAを準正則溶体近似で解析した。ギブズエネルギー(G)、エンタルピー(H)、エントロピー(S)、絶対温度(T)および圧力(P)の熱力学的な関係式を利用して、bcc構造のMoNbTaVW合金、fcc構造のCoCrFeMnNiおよびイットリウムを含有もしくは非含有のhcp構造の重希土類金属基合金を解析した。混合エントロピー(Smix)は、過剰エントロピー(Sexcess)と理想エントロピー(Sideal)、すなわち、配置のエントロピー(Sconfig)の二項の和として取り扱った。計算は、統合型熱力学ソフトウェアのThermo-Calc2020a版を用い、HEA専用のデータベースであるTCHEA4および固溶体データベースのSSOL5を用いた。その結果、bcc構造のMoNbTaVWおよびNbTaTiVW高エントロピー合金は、相互作用パラメータのT依存性項が正であるために、Sidealを気体定数(R)で規格化した値、すなわち、Smix/Rで比較した場合、理想値であるln 5に対して、87%まで低下することが明らかになった。 一方、fcc構造のCoCrFeMnNi高エントロピー合金は、理想値よりも9%高い値を取る。その他、hcp構造のEE-HEAは、実際には、無熱溶液の挙動を示すことが明らかになった。本研究結果は、構成元素数をNとした場合のEE-HEAのエントロピーの式として一般的によく用いられているSmix/R= ln Nの関係式が必ずしも成立しないことを示しており、HEAの本質を解明する上で、非常に重要な研究成果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年7月および11月に日本金属学会欧文誌のMaterials Transactionsに発表した2編の論文が、双方とも、2020年度の論文賞を受賞するなど、これまでの研究成果は高く評価されている。今年度は、高エントロピー合金(HEA)の根源に迫る理論的なアプローチとして、実際のHEAのエントロピー値を精緻に算出した。その結果、一般的によく用いられている高エントロピー合金の理想的な関係式が必ずしも成立しないことを示し、HEAの本質に迫る研究を展開することに成功している。したがって、現在までの進捗状況は、おおむね順調と自己評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度の本年度は、前年度に引き続き、(1)合金設計、(2)実験的実証および(3)構造解析の研究を実践するとともに、研究の総括を行う。(1)合金設計は、代表者の竹内が担当する。研究対象の高エントロピー合金(HEA)の相としては、昨年度までの研究実績に基づきhcp構造を中心として、かつ、遷移金属を構成元素とする新規HEA合金を計算機支援により探査する。合金予測に際しては、付加条件として平均価電子濃度にも着目する。さらに、合金設計の更なる精度向上を目指して、正則溶体近似の相互作用パラメータについて、bcc、fccおよびhcp構造の簡易データベースの作成を進める。分担者の網谷は、計算機支援として熱力学的解析を担当する。具体的には、現有ソフトウェアの統合型熱力学システム(Thermo-Calc 2021a)を利用するとともに、HEA専用のデータベースで2020年1月にリリースされ一昨年度購入した最新版(TCHEA4)を活用してHEAの予測および合金組成の最適化を行う。(2)実験的実証(合金探査)は、分担者の和田が担当する。計算機予測で提示された候補合金に対して、通常のアーク溶解法もしくは高周波溶解法を利用してサンプルを作製し、必要に応じて熱処理を施す。和田は、上述の計算機予測に対応して、最も汎用的な試料作製法で あるアーク溶解法によりボタン状試料を効率的に作製してHEAの生成の可否を見極める。また、X線回折(XRD)法により得られた試料の構造を解 明するとともに、熱処理によりサンプルの均一化を図る。一方、(3)分担者の湯葢は、試料の透過電子顕微鏡観察を行うとともに、結晶構造解析を行い、合金設計担当の竹内および実 験的検証担当の和田および網谷と連携して、効率的に研究を遂行する。最後に、本研究課題の総括を行う。
|