2018 Fiscal Year Annual Research Report
界面スピン-軌道結合制御と反強磁性スピンメカニクスの学理構築
Project/Area Number |
17H03377
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
谷山 智康 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (10302960)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 磁性 / スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、特異な反強磁性-強磁性磁気相転移を示すFeRh規則合金の磁性におけるスピン-軌道相互作用の変調効果と格子変調効果に関する学理の構築を目的としている。本目的を達成するために本年度は以下の研究項目を実施した。 (1)4d, 5d 元素極薄膜被覆したFeRh 薄膜の作製と磁気・電気特性評価 前年度に実施したMBE法によるFeRhエピタキシャル薄膜の作製に加え、本年度はさらに4d, 5d元素としてPd, Ir, Ptを選定し、その極薄膜をFeRhエピタキシャル薄膜と接合する手法を開発し、接合薄膜の磁気・電気特性を評価した。より具体的には、現有のMBE装置を改良することで、シャドウーマスク法によりFeRhエピタキシャル薄膜の半面に室温で大気暴露することなく4d, 5d元素極薄膜を被覆し、被覆の前後で磁気特性等が変調される様子を調査した。その結果、いずれの被覆薄膜においても4d, 5d元素極薄膜の被覆前と比較して反強磁性-強磁性磁気相転移温度が上昇することを見出した。 (2)FeRh薄膜における磁気ダンピング特性の評価 FeRh薄膜はFeとRhの混合組成比に依存して基底状態が強磁性から反強磁性へと変化する。本研究では、基底状態が強磁性となる組成領域において、FeとRhの組成比とFeRh薄膜の磁気ダンピング特性との相関について調査した。その結果、Rh組成が0%から増加するに従って磁気ダンピングが増大し、FeRhのbcc相とB2相との相境界で磁気ダンピング定数が極大を示すことことを見出した。一方で、約20%の領域において磁気ダンピング定数が極小値を示すことが明らかとなった。さらに、磁気ダンピング定数とFeRhのフェルミエネルギーでの状態密度との間に密接な相関があることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の4d, 5d元素極薄膜を被覆したFeRh薄膜およびFeRh/強誘電体ヘテロ構造の高品質形成手法が確立しており、また当初想定していなかった強磁性FeRh薄膜において極めて小さなスピン緩和が見出されているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究において確立された4d, 5d元素極薄膜を被覆したFeRh薄膜およびFeRh/強誘電体ヘテロ構造において、4d, 5d元素極薄膜の被覆に伴う磁性の変調効果とその起源を明らかにする。さらに今回見出された強磁性FeRh薄膜の特異なスピンダイナミクが、FeRh/強誘電体ヘテロ構造において強誘電分極といかなる相関を有するかを明らかにする。これにより、表面、界面の変調効果がFeRh薄膜の磁性に与える影響を解明する。
|