2017 Fiscal Year Annual Research Report
ゼーベックテンソルの非対角成分を活用した新型発電デバイスの創製
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17H03383
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮崎 讓 東北大学, 工学研究科, 教授 (40261606)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電子・電気材料 / 熱電変換 / 非対角熱電デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
熱流と直交する方向に起電力が生じる「非対角熱電効果」を利用すれば、従来型熱電発電モジュールの短所を克服する実用発電デバイスの実現が期待できる。初年度は、第一原理計算による候補物質の抽出を行い、電子構造およびシミュレーションに基づく素子材料設計と予備的な実証実験を行った。金属材料として銅を選択し、熱電材料としてシリコンドープ鉄基ホイスラー合金を選択した。これらの材料に対して、室温近傍におけるゼーベック係数、導電率および熱伝導率の温度変化を測定した。得られた物性値を用いて有限要素法による温度・電位の計算シミュレーションを行った。この際、多層膜中における金属層厚の分率と、多層膜の傾斜角の2つをパラメータとして、最高の出力因子が得られる多層膜デバイスの形状を評価した。この計算結果を基に、放電プラズマ焼結法により実際に多層膜を作製した。計算シミュレーションによれば、金属層厚の分率が大きく、かつ傾斜が30°程度の多層膜において、最も高い出力が得られるはずである。しかし、金属層厚の分率が大きい場合は、実際に作製した多層膜中で熱電材料中に金属層が拡散して短絡経路を形成し、その部分を優先的に電流が流れるために、シミュレーションの値の1割程度の出力因子しか実測されないことが判明した。一方で、多層膜内の温度分布を赤外線カメラで実測したところ、ほぼシミュレーションどおりの温度分布が実現しており、試作した多層膜において、確かに非対角熱電効果が実現していることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
素子形状の計算シミュレーションから、素子材料の合成および評価において概ね順調に推移してきたが、素子加工において重要な役割を果たしていたファインカッター(素子切断装置)に不測の故障が生じ、当該装置の修理に約2か月間を要したため、年度内に終了すべき一部の実験を翌年度に行わざるを得なくなり、繰越申請をした。
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Strategy for Future Research Activity |
熱電材料の層中に金属粒子が拡散しないよう、原料を更に微粉末にするとともに、焼結条件の検討を行う。また、原料を一度予備焼結して、薄片状試料を合成し、それらを焼結して多層膜化することを試みる。 これらとは別に、金属材料や熱電材料が取り得る種々の熱電特性の組み合わせにより、出力特性がどのように変化するのを計算シミュレーションによって詳細に調べることも必要である。
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Research Products
(3 results)