2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H03384
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川添 良幸 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (30091672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ベロスルドフ ロディオン 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10396517)
尾上 順 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50241245)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ペンタグラフェン / ナノ炭素構造体 / 第一原理シミュレーション計算 / 全電子混合基底法TOMBO / 五員環構造 / 原子欠陥 / 置換 / 実験的創製 |
Outline of Annual Research Achievements |
本基盤研究の数値計算用に使う我々独自開発第一原理シミュレーションプログラムTOMBOのチューニングを継続して行い、多くの計算時間を要する大行列対角化部分にBlock Davidson法を導入し、大規模計算に関して大幅な処理効率改善を実現出来た。その成果を活用して、Liイオンをフラーレンに衝突させて内包させる過程に対する第一原理分子動力学計算を多数実施することが可能となり、様々な速度・角度での衝突過程をシミュレートして最適条件を確定し、雑誌論文2として研究成果を発表出来た。これはナノ炭素系に対する我々の20年来の研究成果の集大成の一つであり、実験家へ確証を持ってLi@C60の大量合成を可能とする実験条件を提案することが出来た。今後、ペンタグラフェンに対する各種探索シミュレーションに活用する。 広くグラフェン系の対象物の物性計算を実施し、トポロジカル絶縁体の性質を有する新規物質を予測した。これらの知識をペンタグラフェン系へ適用した数値計算を実行し、特異な物性を有する構造を探索中である。また、各種欠陥を有するペンタグラフェンを対象とした構造安定性と各種物性計算を実施した。最初はペンタグラフェン中の1炭素原子を取り除いた構造を最適化し、その安定性が保たれることを確認、各種物性計算を実施して論文としてまとめた。 ペンタグラフェン創製実験に関しては、フラーレンを2次元に整列させた初期条件から開始し、電子線及びレーザー光を照射して、再構築した構造体の形状を観察した。また、ダイヤモンドやグラファイトの生成しない条件下で竹炭を高温・高圧に曝し、出来上がった構造体の原子構造を解析した。 これらは以下に示す学会等で講演し、当該分野の研究者や一般市民への周知を図った。研究成果は論文にまとめ、以下に示す様に学術雑誌に公表しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
欠陥によるペンタグラフェンの物性変化の検討を実施している。欠陥は実際の結晶成長過程において避けられないものであり、その意味でもこの検討は重要である。先ず、ペンタグラフェンのC1欠陥に関して密度汎関数理論によるシミュレーション計算を実施した。この欠陥の形成エネルギーは、同様の欠陥を有する通常の6員環グラフェンの場合に比べ極めて小さいことが分かった。この欠陥によって新たに4つのエネルギー準位が発現し、そのうち2つは占有、2つは非占有状態になるため、容易に電荷移動が可能である。電荷を有する欠陥は深いドナーとアクセプター準位なので、酸性に関して両性となる。この1原子欠陥は4μBの磁気モーメントを持つ。全体系としては反強磁性状態が強磁性状態に比べて原子当たり約2mV 安定になる。この小さいエネルギー差により常温での状態遷移が可能であり、応用としてスピントロニクス材料に適していることが判明した。本C1欠陥に関する研究は完了して論文を作成し、投稿準備中である。 ペンタグラフェンの実験的合成は極めて困難なことは研究開始以前から認識していたが、一年が経過した現在、さらに様々な改善を試みる必要のあることが判明した。特に、高温・高圧でさらにグラファイトやダイヤモンドが出来ない条件でのペンタグラフェン(3次元の結合体=T16結晶)創製は成功した様に思われるが、電子顕微鏡で空間的な構造を明確に示せるだけの大きさまでは達成していない。また、3次元結晶から単層としてのペンタグラフェンを引き剥がす方法も検討しなければならない。2次元フラーレン薄膜への電子線及びレーザー照射によるペンタグラフェン創製に関しても、未だに明らかな5員環結合体は見つかっておらず、実験的に大面積化の方策を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)TOMBOのさらなら高速化を図る。また、現在まで主としてチューニングして来たスーパーコンピュータSR16Kが世代交代し、他の計算機への移行が必要となっている。本研究成果の広報の意味で、TOMBOのチュートリアルを各種会議等の機会に開催する。既に、平成30年9月にベトナム国ハノイ市で開催予定のアジア計算材料学コンソーシアムACCMSの国際会議でのTOMBOチュートリアルが決定している。 (2)復数個の炭素原子欠陥を含むペンタグラフェンの構造安定性と各種物性を算定する。1原子欠陥の場合に既に磁性等で興味ある成果が得られているので、より一層複雑な構造に対するシミュレーション計算を実行し、有用物性を有する新物質を探る。 (3)ペンタグラフェンへの各種原子付加物質の可能性を検討する。ペンタグラフェンはsp2とsp3構造が交互に連結した構造をしているため、通常のグラフェンと比べて付加原子位置を離すことが可能である。この特性により、実際の実験的新構造体創製における物性制御が容易になる。 (4)ペンタグラフェン中のポーラロンを算定する。ペンタグラフェンの基本原子構造は5員環の擬似2次元連結であるが、4個の5員環で1つの擬似2次元6角形構造を形成し、それが2方向に連結した幾何学構造になっている。この特殊な構造体中に発生するポーラロンは興味ある物性に関係する可能性がある。 (5)水素貯蔵・輸送に関係する高伝導性と触媒作用を有する擬似2次元薄膜構造体としてペンタグラフェンを適用する。密度汎関数理論によるシミュレーション計算で2次元遷移金属硼化物/炭化物(penta-TMB及びpenta-TMC)を水素製造過程への電子触媒に適用する。既に、これらの材料が金属であることを確認し、特にWB及びHfCが強磁性体であることを確認しているが、今後、より広範な物質・物性探索を実施する。
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[Journal Article] Extensive first-principles molecular dynamics study on Li encapsulation into C-60 and its experimental confirmation2018
Author(s)
Ohno, K; Manjanath, A ; Kawazoe, Y ; Hatakeyama, R; Misaizu, F; Kwon, E; Fukumura, H ; Ogasawara, H ; Yamada, Y; Zhang, C ; Sumi, N ; Kamigaki, ; Kawachi, K ; Yokoo, K ; Ono, S; Kasama, Y
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Journal Title
NANOSCALE
Volume: 10
Pages: 1825-1836
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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