2018 Fiscal Year Annual Research Report
Screening of Novel LED Nitride Phosphors using Vapor Phase Single Crystal Growth Method
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17H03386
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
戸田 健司 新潟大学, 自然科学系, 研究教授 (20293201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 峰夫 新潟大学, 自然科学系, フェロー (30149984)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 窒化物 / 単結晶 / 気相成長 / 希土類 / 構造解析 / 蛍光体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、独自に開発した気相ー固相ハイブリッド法により新規組成の(酸)窒化物を育成することにより新規な蛍光体の開発に取り組んだ。得られた蛍光体については、単結晶による精密な構造解析を行った。また、実用化を目的として粉末試料の合成法の最適化にも取り組んだ。気相による単結晶育成法では、揮発した原料ガスを、シードとしての不揮発性の原料粉末と反応させて結晶成長させる。そのため、窒化物原料の高温での揮発を圧力および温度をパラメータとして厳密にコントロールする必要がある。圧力および温度を正確に制御できる装置として本経費にて導入した真空加圧炉(島津メクテム株式会社VESTA PVLgr10/10)を用いて、気相ー固相ハイブリッド法により新規窒化物蛍光体の育成を試みた。 現在までに、七種類の蛍光体単結晶の育成に成功し、物性評価を進めている。特に興味深い材料は、緑色の狭帯域発光を示すSr-Al-Si-N:Eu系蛍光体である。本試料については、粉末合成にも成功し、青色光励起の下で523 nmの強い緑色発光を示すことを確認した。また、赤色蛍光体Sr2AlSi4ON7:Eu蛍光体は、アルミニウムイオンと酸化物イオンが特異的に一部のサイトを置換することを単結晶構造解析により初めて明らかにした。また、構造解析に基づき、(Sr0.9Eu0.1)2AlSi4ON7が類似した骨格構造を持つ(Sr0.9Eu0.1)2Si5N8よりもすぐれた耐久性を持つことを説明できた。その他の新組成蛍光体としては、La-Si-O-N系緑色蛍光体、Li-Ca-Al-Si-O-N系黄色蛍光体、Ba-Al-Si-N系緑色蛍光体、Ca-La-Si-N系黄色蛍光体の単結晶育成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
七種類の窒化物蛍光体の単結晶育成に成功し、物性評価を進めている。計画はおおむね順調に進展している。 真空加圧炉(島津メクテム株式会社VESTA PVLgr10/10)は小スケールの合成に適した装置であるが、本研究での稼働率が著しく高いため、温度計等のユーティリティの頻繁な交換や整備が必要であり、今後の課題である。 窒化物原料の高温での揮発についての基礎的データについては蓄積されてきたが、複合窒化物や複数の原料成分共存でのデータについても検討を進めており成果が得られている。単結晶育成のルツボに関しては、CVD法により作製される汚染の少ないPBNルツボを利用してきた。小スケールの合成でも汚染が少ないため、実験の効率化を実現できたが、消耗が激しいため更新の費用が発生している。 実験的に検討すべき課題は残るものの、新規蛍光体の結晶育成という目的は着実に進行しており、現状として概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
単結晶育成については順調に進行しており、今後も同様に推進していく。成分に関しては従来型蛍光体で用いられていたSiやAlだけでなく、PやB等との組み合わせも検討し、新規組成の蛍光体の探索を継続する。物性評価には、単結晶だけでなく、多量の粉末試料も必要であり、粉末合成のための焼成炉の整備を進めていく。 また、蛍光体については、発光特性のマテリアルズインフォマティクス予測による設計も行う。、第一原理計算法による系統的な発光・吸収理論スペクトルの計算および実験報告例のない物質を含めた大規模計算スペクトルデータベースの作成は挑戦的な取り組みであるが、膨大な数に及ぶ候補物質を取り扱うことは困難である。より簡潔な予測モデルの構築が実験科学的には重要である。既存データベースを元に、スペクトルデータの回帰モデルの現在までの検討で、発光波長および発光半値幅の予測に重要なパラメータを見出すことに成功している。予測モデルの説明変数としては、母体結晶の構成元素・組成・構造等から容易に計算できるものを用いた。これにより、任意の蛍光体の母体結晶に対する発光スペクトルを迅速に計算できるようになり、大量の候補物質の探索が可能となった。今後、赤色などの長波長発光すると予想される結晶構造の候補を抽出し、それらの蛍光体単結晶育成を行うことで、新規蛍光体の開発と理論検証も試みる。 得られた結果は早期に知的財産および論文として公開することで、国内外の研究者との連携推進を図る。
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