2017 Fiscal Year Annual Research Report
金属粒界相制御によるZT=2を超える高性能コンポジット熱電変換材料の開発への挑戦
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17H03398
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 慶 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70360625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 讓 東北大学, 工学研究科, 教授 (40261606)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 熱電変換 / コンポジット / 金属相 / Mg2Si |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では安価で毒性が低く軽量なMg2Siの熱電変換効率を飛躍的に向上するために、部分置換・不純物添加・ナノ構造の導入といった従来の方法ではなく、金属粒界相制御を取り上げる。今年度は、Mg、Al、Niを粒界相とするコンポジットの出力因子(PF)の増減に、母相と金属相の界面接触状態が関係しているか調査した。コンポジットのモデル構造として、Mg/Mg2Si、Al/Mg2Si、Ni/Mg2Si積層試料を作製し、ケルビンプローブフォース顕微鏡で金属/Mg2Si界面の障壁高さを実測した。 Mg2Si/Mg積層試料では、電位はMg2Si相よりMg相の方が約400 meV高いことがわかった。つまり、Mg/Mg2Si界面はオーミック接合であると結論できる。一方、Al/Mg2Si積層試料では、電位はMg2Si相よりAl相の方が約120 meV低いことがわかった。これは、Al/Mg2Si界面がショットキー接合であることを示している。また、Ni/Mg2Si積層試料では、Mg2Si相よりもNi相の方が約170 meV低いことから、Ni/Mg2Si界面もショットキー接合であると結論できる。 実際に、Mg粒界相の導入によって電気伝導率の増加が報告されており、Mg/Mg2Si界面がオーミック接触であることと矛盾しない。Ni/Mg2Siコンポジット材料ではPFが減少しており、ショットキー接合のNi/Mg2Si界面で電気伝導キャリアが散乱されていることが示唆される。一方、Al/Mg2Siコンポジット材料ではPFが増加すると報告されている。これは、Al/Mg2Si界面のショットキー障壁がNi/Mg2Si界面よりも低いため、室温以上の高温ではキャリア散乱が抑制されているものと考えられる。以上から、PFの増大は界面がショットキー接触でも起きるが、障壁高さに上限があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目的は、(1)Mg2Siの出力因子(PF)を増大するための金属相の選択指針の構築と(2)Al/Mg2Siコンポジット材料のPFの最大化である。(1)については、研究実績で述べたように半導体のMg2Siとオーミック接触を形成するか、ショットキー障壁であっても障壁高さが閾値以下となるような金属を選べば、金属粒界相の導入によりPFを増大できることを明らかにしており、コンポジット熱電材料開発のための重要な指針を構築することができている。一方、(2)はAl/(Mg,Al)2Siコンポジット材料を作製すれば、Al/Mg2Siコンポジット材料よりもPFが高くなると考えて、固相反応法を用いて(Mg,Al)2Siの合成を試みた。従来の報告通り、Alの固溶限は小さいことを確認しており、固相反応法では難しいことが明らかになってきた。(Mg,Al)2SiおよびAl/(Mg,Al)2Siコンポジット材料の合成には至らなかったが、ボールミルでの合成など高エネルギーを投入して合成することが必要であることが明らかになった。ボールミルでの合成は翌年度に使用する方法であり、翌年度の実施事項と合わせてPFの最大化を進めることができることから、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の目的は、Al/(Mg,Al)2Siの出力因子(PF)を最大にすると同時に、粒界相の組織制御を行って熱伝導率を低減することである。熱伝導率はレーザーフラッシュ法で測定する。粒界相のサイズを小さくすると母相-粒界相界面が増えてフォノン散乱が増大し、粒界相が金属でも熱伝導率は低下すると期待される。界面で電子キャリアも散乱されるが、一般にフォノンの平均自由行程は電子より長いことから、粒界相のサイズをフォノンの平均自由行程より小さく、電子のそれより大きくすれば、電気伝導率の減少(PFの低下)を抑えつつ、フォノンを散乱できると考えられる。具体的な方策は、(1)共晶組織の微細化(マイクロサイズ以下)と(2)ナノサイズ粒界相の析出現象の利用である。 (1) Mg-Siの状態図は共晶型で、Mg/Mg2Si(Si/Mg2Si)コンポジットを溶融合成すると、Mg2SiとMg(Si)の共晶組織が現れる。Mg2Si-Alの状態図も共晶型である。溶融後の冷却速度が大きいほど共晶組織は微細(マイクロサイズ以下)になることが知られている。そこで、縦型の管状電気炉を組み立てて溶融急冷法を実施する。Mg、Si、Al粉末を石英管に真空封入し、電気炉で溶融後に管内を落下させ、管外で水や液体窒素で急冷する。 (2) (1)で熱伝導率が低減しなかった場合、Mg、Si、Al粉末をボールミルで粉砕混合し、状態図にはない非化学量論組成のMg2+xSiや、Alの過飽和固溶体(Mg,Alx)2Siの粉末を合成する。非平衡状態のこれらの粉末を放電プラズマ焼結して、平衡状態のAl/Mg2Siコンポジットを作製する。非平衡状態と平衡状態の大きな自由エネルギー差を利用して、過剰に加えたAlをナノサイズで析出させる。
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Research Products
(7 results)