2018 Fiscal Year Annual Research Report
肝硬変治療の為の多機能性有機-無機ハイブリッドナノ粒子の開発
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17H03403
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林 幸壱朗 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (80580886)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 有機-無機ハイブリッド / ナノ医療 / DDS |
Outline of Annual Research Achievements |
二種類のシリコンアルコキシドを用いたゾル-ゲル反応により、one-potで中空構造の有機-無機ハイブリッドナノ粒子の合成法を確立した。この有機-無機ハイブリッド中空ナノ粒子は主にジスルフィドとシロキサンから構成され、ナノ粒子表面にはチオール基が存在していた。このチオール基を用いて表面修飾をし、さらに、ナノ粒子内部に蛍光色素を封入し、肝繊維化に関与するクッパー細胞および肝星細胞とともに培養することにより、これらの両方の細胞内に取り込まれることを共焦点レーザー顕微鏡観察により明らかにした。このナノ粒子の合成の際に、あらかじめ抗酸化物質を添加しておくことで、抗酸化物質を有機-無機ハイブリッド中空ナノ粒子内部に封入することができた。また、この有機-無機ハイブリッド中空ナノ粒子は刺激に応答して化学構造が一部分解し、内包する抗酸化物質を放出することが明らかになった。さらに、この有機-無機ハイブリッド中空ナノ粒子は抗酸化物質を担持していなくても、この有機-無機ハイブリッド中空ナノ粒子の化学構造に起因する活性酸素除去機能を有していた。これらの有機-無機ハイブリッド中空ナノ粒子の特徴(クッパー細胞および肝星細胞ターゲティング能および抗酸化作用)を活かして、クッパー細胞が生成するヒドロキシラジカルを除去することが可能であることを明らかにした。さらに、この有機-無機ハイブリッド中空ナノ粒子は細胞毒性を示さないことをWST-1アッセイにより評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、培養した星細胞を用いて、中空ナノ粒子が星細胞内に侵入するかの確認、細胞内で内包物を放出するかの確認、中空ナノ粒子の細胞毒性評価、を目的としていた。本研究で合成した有機-無機ハイブリッド中空ナノ粒子は表面修飾により、肝繊維化に関与するクッパー細胞および肝星細胞をともにターゲティングできた。この有機-無機ハイブリッド中空ナノ粒子は刺激に応答して化学構造が一部分解し、内包する抗酸化物質を放出した。この有機-無機ハイブリッド中空ナノ粒子は細胞毒性を示さなかった。以上より、当初目的としていた研究内容は全て達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は概ね順調に遂行している。2019年度は、当初計画していた通り、肝繊維症マウスを用いてin vivo評価を行う。評価内容は、有機-無機ハイブリッド中空ナノ粒子が、生体内においてもクッパー細胞および肝星細胞をともにターゲティングできるかを蛍光イメージングおよび免疫組織染色により確かめる。また、生化学検査と病理組織学的解析により、有機-無機ハイブリッド中空ナノ粒子を用いた治療法の有効性を評価する。また、治療効果が認められる投与スケジュールなどを検討する。
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