2017 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of mechanism of peculiar high strength and ductility of metastable beta-type titanium alloy with high oxygen content for structural biomaterials
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17H03419
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
新家 光雄 名城大学, 理工学部, 特任教授 (50126942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤堀 俊和 名城大学, 理工学部, 准教授 (00324492)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生体用金属材料 / ユビキタス元素 / 相変態 / 力学的特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度では、TNTZ(Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr)が引張り変形下における高強度・高延性を示す高酸素濃度範囲および高濃度酸素含有TNTZの引張り変形下におけるマクロ変形挙動を調査・検討することを目的とし、酸素濃度を大幅に変化させたTNTZ供試材の製造、供試材の熱処理および組織観察、引張り試験、引張り試験片表面での変形挙動の観察、引張り試験片破面の観察ならびに引張り試験後の試験片のEBSB解析を行うことを計画した。その結果、供試材の引張り変形挙動に関しては、上記一連の実験を行うことができ、高濃度酸素含有TNTZの強度および延性の改善のマクロな変形機構の解明を行うことができた。また、当初計画には入っていなかったが、高濃度酸素含有TNTZが優れた疲労寿命を示すことも明確とすることが出来た。 すなわち、広範囲に酸素濃度を変化させたTNTZに関しての上記一連の検討を行った結果次のことが判明し、これらは新たな知見と言える。 (1)低濃度酸素、中濃度酸素および高濃度酸素含有TNTZで観察される主変形帯は、それぞれ変形誘起マルテンサイト、単一すべり帯および多重すべり帯である。(2)低濃度酸素含有TNTZでは、マルテンサイトが変形誘起されることにより、延性は、高いが、強度が低い。(3)中濃度酸素含有TNTZでは、単一すべりが主で粒界破壊傾向となり、強度は、低酸素濃度TNTZの場合に比べ上昇するが、延性が極めて低下する。(4)高濃度酸素含有TNTZでは、複数のすべり系が活動する多重すべり変形となることで加工硬化が著しくなり、強度および延性が改善される。(5)上記(2)、(3)および(4)の傾向と一致して、低濃度、中濃度および高濃度酸素含有TNTZの破壊形態は、それぞれ破面粗さが比較的大きい延性破壊、脆性破壊および破面粗さが比較的低い延性破壊を示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で示したが、平成29年度で行う研究項目をほぼ達成し、次の新たな知見を得た。 (1)低濃度酸素、中濃度酸素および高濃度酸素含有TNTZで観察される主変形帯は、それぞれ変形誘起マルテンサイト、単一すべり帯および多重すべり帯である。(2)低濃度酸素含有TNTZでは、マルテンサイトが変形誘起されることにより延性は、高いが、強度が低い。(3)中濃度酸素含有TNTZでは、単一すべりが主で粒界破壊傾向となり、強度は低酸素濃度TNTZの場合に比べ上昇するが、延性が極めて低下する。(4)高濃度酸素含有TNTZでは、複数のすべり系が活動する多重すべり変形となることで加工硬化が著しくなり、強度および延性が改善される。(5)上記(2)、(3)および(4)の傾向と一致して、低濃度、中濃度および高濃度酸素含有TNTZの破壊形態は、それぞれ破面粗さが比較的大きい延性破壊、脆性破壊および破面粗さが比較的低い延性破壊を示す。(6)酸素濃度が高いほど疲労寿命が伸びるとともに、繰り返し変形により誘起されるマルテンサイトが微細化する。 なお、上記(6)は、研究実績の概要では述べなかったが、TNTZの疲労寿命が酸素濃度の増加に伴い上昇することを示すと同時に、繰り返し変形によりマルテンサイトが誘起され、かつ酸素濃度が増大するとともにその間隔が減少することも新たな知見である。 以上より、本研究は、おおむね順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
低濃度酸素含有および高強度・高延性で降伏現象を示す高濃度酸素含有TNTZの引張り応力・歪曲線形態、0.2%耐力、引張り強度および延性(伸び)に及ぼす歪速度および温度の影響につき調査・検討する。具体的には、次の項目を進める。 (I)歪速度変化条件における室温での引張り試験:(1)前年度の調査・検討結果より、代表的な低濃度酸素含有TNTZおよび高強度・高延性で降伏現象を示す高濃度酸素含有TNTZにつき引張り試験片を作成し、2.2 x 10-4~2.2 x 10-2の範囲の種々の歪速度で室温にて引張り試験を行う。(2) 代表的な低濃度酸素含有TNTZおよび高強度・高延性で降伏現象を示す高濃度酸素含有TNTZの上記各引張り試験での応力・歪曲線形態につき調査・検討する。(3) 代表的な低濃度酸素含有TNTZおよび高強度・高延性で降伏現象を示す高濃度酸素含有TNTZの上記各引張り試験での応力・歪曲線より0.2%耐力、引張り強さおよび伸びを評価し、酸素濃度との関係を解析する。 (II)温度変化条件における引張り試験:(1)前年度の調査・検討結果より、代表的な低濃度酸素含有TNTZおよび高強度・高延性で降伏現象を示す高酸素含有TNTZにつき引張り試験片を作成し、77~393Kの範囲の種々の温度で上記各歪速度にて引張り試験を行う。(2) 代表的な低濃度酸素含有TNTZおよび高強度・高延性で降伏現象を示す高濃度酸素含有TNTZの上記各引張り試験での応力・歪曲線形態につき調査・検討する。(3) 代表的な低濃度酸素含有TNTZおよび高強度・高延性で降伏現象を示す高濃度酸素含有TNTZの上記各引張り試験での応力・歪曲線より0.2%耐力、引張り強さおよび伸びを評価し、酸素濃度との関係を解析する。
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