2018 Fiscal Year Annual Research Report
電子構造・フォノン分散の精密制御に基づく環境調和型熱電材料の創製
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17H03421
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
高際 良樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 主任研究員 (90549594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 輝之 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (40314421)
後藤 真宏 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 主席研究員 (00343872)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 熱電変換材料 / バンド計算 / フォノン計算 / キャリアドーピング / コンビナトリアル手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に見出したフェルミ準位近傍に狭バンドギャップを形成するτ1相に重点を置き、熱電特性の向上に向けた材料組成の最適化を試みた。アルミニウムとシリコンの組成調整のみで、p型とn型の作り分けも可能であることから、実用化に有利な材料系である。精密組成調整により、室温から200℃までの温度域での出力特性の向上に成功した。 コンビナトリアルバルク合成に関しては、大温度勾配、低速度条件下における一方向凝固を実施し、初期組成を変化させることにより、化学組成の異なるτ1相の単相試料を作製することに成功した。また、同相が包晶反応により生成すると結論づけた。さらに、平衡試料の長時間アニールおよびマルチプル拡散対法を併用し、同相の Fe リッチ側の組成範囲・平衡関係を確認した。熱電特性としては、一方向凝固法により作製した組成傾斜試料を使用して、熱拡散率ならびに電気伝導率の組成範囲を効率的に決定した。 コンビナトリアル薄膜合成に関しては、これまでに、Al-Fe-Si薄膜の組成制御技術の確立、薄膜熱電特性評価の充実化、ならびに、これを用いた当該薄膜材料特性の評価・解析を実施した。マグネトロンスパッタ成膜において、強磁性体であるFeを大量かつ組成制御して薄膜を作製するのは難しい。我々は、独自に設計した新型のマグネトロンスパッタカソードを作製し、これらの課題をクリアした。フレキシブル化のためには、高分子フィルムなどへのデバイス作製が有効であるが、これには、高温アニールプロセスが使用できない。そこで、常温成膜した薄膜材料を出発として中温域昇温時における熱電性能の評価を実施し、650~800K領域に性能が向上する変化点が存在することが明らかとなった。また、その変化点は組成の違いにより移動することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の最終目標に合致する材料系としてAl-Fe-Si系新規材料を見出し、p型およびn型それぞれにおいて最適な組成を見出しつつある。また、高い特性を得るための最適な合成プロセスの確立にも成功した。計画通りτ1相の単相試料の作製にも成功し、化学組成の異なる単相試料の作り分けも順調に進んでいる。存在組成範囲の決定はまだ完了していないものの着実に進展しており、マルチプル拡散対法の利用により加速的進捗が期待される。熱電特性は、バルク組成傾斜試料を利用したハイスループット法による測定も開始しており、多方面からのキャラクタリゼーションが完成する見込みが立った。 マグネトロンスパッタ成膜においては、強磁性体であるFeを大量かつ組成制御して薄膜を作製するのは難しい。我々は、独自に設計した新型のマグネトロンスパッタカソードを作製し、これらの課題をクリアした。これにより、様々な化学組成を有するAl-Fe-Si系薄膜の合成が可能になり、組成・組織の最適化が一層進むと考えられる。 以上の研究成果から判断して、全体としては「おおむね順調に進展している。」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては、以下の課題に注力して研究を遂行し、研究プロジェクトのまとめを行う。 (1)Al-Fe-Si系3元系化合物の性能向上:昨年度までに得た知見を活かし、引き続き、電子構造およびフォノン分散の制御により、電気伝導率・ゼーベック係数・熱伝導率の最適化を行う。併せて、プロセスの最適化を行い、既存のアーク溶解法以外に、高周波溶解法、ガスアトマイズ法、直接焼結法などを試み、材料特性のプロセス依存性を調査する。 (2)組成傾斜バルク試料合成と評価:一方向凝固法により作製したAl-Fe-Si組成傾斜バルク材料を用いて、引き続き熱電特性のマッピング測定を進め、詳細な組成依存性を明らかにすることにより、組成最適化を完了する。また、単相化バルク試料を作製し熱電特性の測定を行い、マッピング測定で得た最適値を確認する。 (3)コンビナトリアル薄膜合成と評価:Al-Fe-Si系熱電材料のさらなる性能向上を目的として、昨年度までに新型のマグネトロンスパッタカソードを独自に開発し、それをNINSが有するコンビナトリアルスパッタコーティングシステムに導入することにより、安定してAl-Fe-Si系薄膜熱電材料の組成を変化させることに成功した。最終年度は、この材料創製基盤を活用し、組成・結晶構造・配向性の異なる当該薄膜材料をコンビナトリアル的に合成し、さらには、それらの熱電特性を評価することにより、高い熱電性能が期待される組成・結晶構造・配向性に関する知見を獲得し、この高性能熱電薄膜サンプルの創製が再現性良く行なえる成膜技術の確立を目指す。
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Research Products
(13 results)