2019 Fiscal Year Annual Research Report
Fabrication of oxide-nitride gradient structure to enhance energy conversion efficiency of photoelectrode
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17H03427
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
西川 雅美 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (20622393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 哲男 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 副研究センター長 (80357524)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エキシマレーザー / プラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、レーザ照射下の結晶化プロセスを考察するうえで重要なレーザ照射による薄膜および基板の伝熱シミュレーションを確立した。COMSOLを用いて、有限要素法により、熱伝導方程式を3次元で展開して、レーザ照射下における薄膜および基板の温度を算出できるようにした。Si基板を用いた場合とガラス基板を用いた場合では、基板の熱伝導率の差によって、同じフルエンスでレーザ照射した場合でも、大きく温度が異なった。窒素プラズマ中でKrFレーザをSi基板に照射した場合、Si基板に窒素がドープはされるものの、その量には限界があり、ドープされ難い傾向がみられた。これは、Siの熱伝導率が高いことによって、レーザ照射によってSi基板の温度が十分に上がらないことが一因として認められた。一方、ガラス基板上に塗布した有機金属(タンタル、チタン)前駆体膜にレーザ照射した場合、十分に温度が上がるため、Si基板と比べて、前駆体膜中に窒素がドープされやすいことがわかった。また、有機金属溶液を基板に塗布した後の仮焼成温度を下げることで、前駆体膜中に残留する有機成分を増やすと、窒素がドープされやすい傾向があることを見出した。そのため、窒素がドープされる過程において、前駆体膜にレーザが照射することで、金属に配位していた有機成分が分解し、金属と窒素間で結合を形成しやすくなることが、窒素ドープを促進された一因であることが推測された。つまり、窒素ドープには、レーザ照射下における薄膜の温度と前駆体膜の化学状態に大きく影響を受けることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現段階において、窒素プラズマ中でKrFレーザを照射する「窒素プラズマアシストレーザ照射法」では、窒化物までの形成が困難であることから、レーザ照射下の前駆体膜および基板の温度をより高精度に計算し、窒化・窒素ドープ課程を計算する必要があった。そのため、COMSOLを用いて熱伝導方程式を有限要素法によって3次元で計算する手法を確立した。その結果、レーザ照射下の前駆体膜および基板温度の時間依存性と膜厚方向の温度分布を精度高く計算することが可能となった。また、窒素プラズマアシストレーザ照射を、Si基板とガラス基板上に成膜した有機金属(タンタルおよびチタン)前駆体膜に施した場合の窒素のドープ量について、基板・薄膜温度との相関が見られた。Si基板では、熱伝導率が大きいため、基板温度が十分に高くならず、窒素がドープされにくいと考えた。一方、有機金属前駆体膜においては、これまで、反応性イオンエッチングモードの窒素プラズマ装置を利用していたため、窒素プラズマ内でのレーザ照射による窒化プロセス中において、エッチング反応と窒化の競合プロセスが生じることが問題となっていたが、窒素ガスの流量を制御することでエッチング反応を抑制することが可能となった。そして、得られた薄膜の窒素ドープ量は、窒素プラズマレーザ照射する前に残留していた有機成分によって影響されることが推測された。これは、紫外のレーザによって、金属と配位していた有機成分との結合が切断され、窒素を取り込みやすくなったためと考えている。以上より、窒素ドープを促進する因子が徐々に明らかになり、今後の方針を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に実施した基板・薄膜の温度シミュレーションでは、繰り返しレーザ照射による蓄熱の影響が示唆された。そのため、レーザ照射の初期と後期では、蓄熱により、レーザー照射下の基板・薄膜の温度が異なる可能性がある。その場合、窒素ドープ過程が単に照射時間に比例せず、またアブレーション等の影響を受けるため、考察が複雑になる。そこで、本年度では、蓄熱の影響を慎重に考慮するため、レーザ照射下の基板・薄膜の温度測定を実施する。そして、窒素ドープ過程をより詳細に議論していく。また、窒素の拡散深度を定量的に評価し、窒素ドープ、窒素拡散の学理を構築する。 また、窒素ドープ量の増加を目的に、これまで通り、レーザ照射条件、前駆体の有機成分の残留量、窒素プラズマ発生条件等を系統的に調査していく。これと同時に、窒素ドープ量の大幅な増加、そして、窒化物への形成を目指して、窒素元素を前駆体膜への導入を試みる。具体的には、あらかじめ、窒素源を源躯体膜に導入することで、窒素源がレーザ照射後の薄膜に導入されるか検討を行う。 以上の検討によって得られた光電極について性能評価を実施する。そして、酸化物と窒化物の傾斜構造もしくは、窒素の濃度分布に傾斜を設けることで、光エネルギーが水を還元して得られる水素エネルギーへと変換されるエネルギー変換効率に向上に有効であるかを判断する。また、これまでは、窒素ドープ量を主に評価してきたが、光電極の性能には、表面構造等も大きく影響するため、得られた試料の多角的な評価を実施していく。
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Research Products
(3 results)