2017 Fiscal Year Annual Research Report
光ダイレクトリソグラフィーによるフレキシブル透明導電性基板材料の開発
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17H03432
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
赤松 謙祐 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (60322202)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 透明導電性回路基板 / ダイレクトめっき / ポリイミド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、光リソグラフィーとダイレクトメタライズ法を融合し、柔軟性を有する高分子フィルム上に透明導電膜を化学的に作製する基盤技術の開発を行うものである。具体的にはフィルム内部に導入した金属イオンの光還元過程において、サブミクロンスケールの配線領域に局所的に析出する反応メカニズムを明らかにするとともに、レジストを使用せず超低密度パターンを直接形成させることが可能な低環境負荷、省エネルギー性に優れたフルアディティブ型の新規手法を確立することを目的としている。 初年度においては、課題として光還元処理条件変化による膜内物質分布の定量的解析を行い、樹脂表面近傍で起こる光還元反応およびイオン交換反応を解析し、導電性皮膜を得るための実験条件を確立した。また本課題では温度と還元速度の相関についても定量的に検討し、光照射時のフィルム表面近傍の環境パラメータを系統的に変化させることで薄膜析出における主因子パラメータの抽出に成功した。以上の結果により、光化学ダイレクトメタライズ法における反応プロセスの定量的理解を進めることができ、初年度目標を達成するとともに、次年度以降の計画を前倒しして進めた。 2年目以降に進める予定であった課題は、光ダイレクトパターニング法によるフィルム上への超低密度パターンの形成であり、特注光マスクを用いた紫外線照射によるパターン形成にも成功した。さらに、無電解銅めっきによる増膜により、透明導電性を有するパターン形成にも成功しており、当初計画を大幅に上回る進展を見せている。平成30年度以降に、実用化可能なレベルの性能を有する回路作製条件を確立し、次世代の「透明導電フィルム」の実現に向けた化学的アプローチを提案し基礎研究としての成果を上げるとともに、フレキシブルタッチパネルや電子ペーパー等への応用へと展開する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、光リソグラフィーとダイレクトメタライズ法を融合し、柔軟性を有する高分子フィルム上に透明導電膜を化学的に作製する基盤技術を開発することを目的としている。平成29年度は、光還元処理条件変化による膜内物質分布の定量的解析を中心に行い、イオンドープ量、還元速度(紫外線強度、温度)などの条件を変化させ、ミクロトームを用いて超薄切片を作製し、断面構造を電子顕微鏡により観察することにより薄膜のナノ構造を直接観察した。その結果、紫外線照射に伴い膜内の銀イオンがポリイミドフィルム表面近傍において還元し銀ナノ粒子が形成するともに、それらのナノ粒子が連結したグラニュラー層が成長することが明らかとなった。さらに、形成した銀皮膜量および深さ方向の物質分布の定量化により、銀イオンの還元速度を算出し、紫外線照射強度との相関を明らかにするとともに、導電性被膜が形成する実験条件を見いだすことに成功した。 初年度目標がある程度達成されたため、次年度以降の計画であった皮膜のパターニングについて検討を進めた。特注光マスクを用いてパターニングを行ったところ、スクウェアパターン状に銀皮膜を析出させることに成功した。また、パターン解像度の異なる光マスクを用いた場合にも同様に望みのパターンを形成できることが明らかとなった。銀パターンを形成した段階でのフィルムの透過率の減少は数%程度であり、透明導電膜フィルムの下地基板としてのポテンシャルを有していることがわかった。 さらに、無電解銅めっきによる増膜を試みたところ、透過率減少は10%であり、シート抵抗値も透明導電膜としての要求値を満たしていることがわかった。今後密着強度等の物性データが蓄積され、界面構造を最適化すれば、フレキシブル導電性基板として応用可能であることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
予想以上に研究が進展したことにより、平成30年度は当初計画を前倒しし、パターン解像度の最適化と、パターンの透過率と導電性の相関の明確化について検討を進める。すでに無電解銅めっきを利用した増膜により、シート抵抗値の十分小さい透明パターンの作製成功していることから、平成30年度はまずこの銅めっき増膜によるパターン物性(透過率、シート抵抗)を被膜構造の相関を明らかにする。フィルムの透過率は金属薄膜の厚みに依存しないため配線の微細化に伴う伝導性の低下は厚膜化により低減することが可能である。したがって本課題では、フィルムの物性制御因子として(1)ライン幅、(2)ライン膜厚、(3)金属表面被覆率、の3つに着目し、これらパラメータとフィルムの透過率およびシート抵抗との相関を明らかにする。 また、本課題では配線の微細化とともに問題となる密着強度についても検討する。予備実験において、光還元によって得られた銀/ポリイミド界面接合層はテープ剥離試験をクリアしており、高密着強度達成の可能性が示唆されている。本項目では上記の構造パラメータと物性相関の定量的証明、モデル構造の設計・構築ならびに検証を中心とした実験的検討を進め、目標達成を試みる。最終的に、タッチパネルとして実用化が可能な透過率95%以上、シート抵抗100Ω/□(厚さ100nmのITO薄膜に相当)以下の達成を目指す。 また、予備実験により本手法を異なる種類の金属パターン形成に応用したところ、2種以上の金属を異なる部位に析出させることに成功した。これは本手法がダマシン構造回路パターンの形成に応用できることを示唆しており、半導体や抵抗体を実装した透明回路を直接形成する手法の開発にもトライする予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] Electrodeposition Though Polyelectrolyte Layers: Control of Interfacial Reaction, Deposition Rate, and Morphology of Deposited Thin Films2017
Author(s)
K. Akamatsu, Fujiwara, Y. Takashima, T. Tsuruoka, Y. Sato, H. Iisaka, J. Murai, M. Hiraoka, and H. Yanagimoto
Organizer
232nd electrochemical Society Meeting
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