2018 Fiscal Year Annual Research Report
有機相における錯体の凝集化現象の解明及び新規白金族抽出溶媒の開発
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17H03438
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
成田 弘一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究グループ長 (60357689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
元川 竜平 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (50414579)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 溶媒抽出 / パラジウム / 界面張力 / 抽出速度 / DHS / 中性子反射率 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)パラジウム抽出率の抽出速度依存性に対する希釈剤効果及び有機相の性質 ジヘキシルスルフィド(DHS) /n-オクタン/1-オクタノール系において、n-オクタン/1-オクタノール比率を変化させた際の、塩酸溶液からの二価パラジウム抽出速度データの取得を進め、実験誤差の低減を行った。抽出平衡時の二価パラジウム抽出容量のn-オクタン/1-オクタノール比率依存性を調べたところ、パラジウムとDHSのモル比は、その比率に関わらず全て1:2であった。DHS /n-オクタン/1-オクタノールと1 M塩酸溶液間の界面張力測定を、n-オクタン/1-オクタノール比率及びDHS濃度を変化させて行ったところ、界面張力は、n-オクタン/1-オクタノールの変化に大きく依存するが、DHS濃度による影響はほとんど観測されなかった。 (2)抽出錯体構造解析 塩酸溶液(1 M)とDHS/n-オクタン/1-オクタノール混合溶液がつくる液―液界面の状態を構造化学的に調べた。実験には、大強度陽子加速器施設(J-PARC)に設置された中性子反射率計(BL16)を用いた。n-オクタン/1-オクタノールの体積比が100/0、90/10、0/100に調整された試料について測定を行ったところ、1-オクタノールに比べてDHSは界面活性能が小さいために界面を完全に覆い尽くしていないことが明らかになった。これは一般的な界面活性剤とは異なる性質である。DHSを用いてパラジウムを抽出する場合、その抽出速度には界面におけるDHSの局所濃度や凝集状態が強く関わっていることが予想されるため、今後さらに詳細な分析をする必要がある。また、界面近傍における水分子の局所濃度もパラジウムイオンの抽出挙動に影響を与えることが予想されるため、X線反射率計を用いた場合に得ることができる構造情報についてシミュレーション計算を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非平衡の抽出系に関し、平成29年度に引き続き多くのデータを取得することで信頼性の高い結果となった。また、抽出速度を支配する要因の一つである、有機相―水相間の界面活性に関する知見も得られた。さらに、中性子反射率測定の実験もスタートさせたことから、これらをベースにして、最終年度にまとめを行うことが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
抽出速度及び界面張力に関しては、基本データをほぼ取得しており、今後は再現性の確認等を中心に進める予定である。また、これまでの結果より、中性子反射率測定がメカニズム解明の鍵になることが示唆されていることから、最終年度は、この測定による構造解析試験を進めることで、パラジウム抽出速度に関する特異な希釈剤効果の要因特定を目指す計画である。
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Research Products
(3 results)